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借り物競争は突然に ②

遅くなりました。m(_ _)m


無残に荒らされたコースを実行委員達が半泣きになりながら整備しています。地面を抉る弾丸お手玉に玉転がしもとい、たまこがしでは溶岩と化し大地を焼くなど実行委員達は魔力の枯渇寸前で息も絶え絶えです。後で甘いものでも差し入れましょう。

さて気を取り直し再開です、が。



「……借り物競争はその名の通り借りる筈だが…」


「勿論。だが貸すかどうかは本人次第ですからな。がっはっは」


……そうですか、嫌なら断われるんですか………ってそれでは競技にならないでしょうが!!




「ネル、一緒に来てくれ!」


「わたしですか?いいですよ〜」


「ちょっと待て。てめぇなに堂々と目の前で人の番いに手を出していやがるんだぁ!?あぁ」


「はぁ?借り物競争なんだから仕方が無いだろうが。『班目のもの』なんだ。尾が班目模様のネルしかいないんだから、さっさとこっちに来てくれ」


「待ちな!番いを借りるなんて許さん。俺を倒してからにするんだな!」


「はっ。返り討ちにしてやる!」


「あらあら〜。キャッ、わたしってば愛されていますわ〜。旦那様頑張って下さいね」



等といった事態がそこかしこで発生しております。

途中でヤられてリタイアか、愛の戦いを勝利し何とかゴールに着いた勇者はヨロヨロボロボロ。あれ?今まで気付きませんでしたが竜種ってバイオレンスな一族ですか?

借り物競争って殴り合いのスポーツ?これはもうすぐ出場するリオ君とハチの死亡フラグ?

私の心配を他所にリオ君が次だと明るい声を出すと、状況を正確に理解しているハチの毛がブワッと逆立ちました。



「もうすぐ出番です。主様、行ってきますね。ハチ一緒に頑張りましょう」


「…う、うむ」


どうしましょう。ほのぼの平和な借り物競争が何故か危険がいっぱいデスゲームになっています。

ここはやはり保護者としては止めるべきでしょう。でもリオ君がこんなに嬉しそうなのを止めるのも。いやここは心を鬼にしてでも。

うー。悶々と悩んでいる私の足をタシタシと前足で叩いたハチが死地に赴くかの如く決意を込めた眼差しで任せろ、と言っています。

ああ、何て澄んだ瞳なんでしょうか。ハチ、貴方は既に覚悟をしているんですね。

ををを。何度ゴシゴシ目を擦って見ても、任侠映画張りに暗闇の中でハチにだけスポットライトがあたり桜吹雪が舞う幻影が見えます。ピンッと尾っぽを立て後ろを振り返らず進む姿が男前です。

思わずハンカチをフリフリしながら見送りました。






「よろしくお願いします!」


コースに着くとぺこりと礼儀正しく挨拶をする天使りおくんの笑顔に、後ろ手で何やらゴソゴソ、顔を引きつらせ目線をそらす選手達。……出だしから妨害する気満々でしたね?何らかの魔法を消去したり道具を埋めているようなので敢えて言及しませんが。

微妙な空気のを感じてはいるのか、首を傾げている姿にそのままで成長して欲しいと切に願いました。

さぁ、奏者一斉にスタートです。足の引っ掛け合いも攻撃魔法の撃ち合いも妨害行為が一切無い一番平和なスタートです。……あれ?認識がだんだんおかしくなっていますが、これが普通でしたっけ?

深みに嵌まりそうな問題をブンブンと頭を振り、今は観戦に集中です。リオ君とハチの勇姿を目に焼き付けなければ。

視線の先には首輪の鈴をチリンチリン鳴らしながら、追いつかれたら死ぬ、とばかりに必死の形相でぐんぐんスピードを上げ駆け抜けるハチ。恐怖心からか、そのスピードはグングンスピードを増し土煙りを起こしつつ一番に辿り着くと紙を口で咥えてリオ君にバトンタッチ。

渡されたリオ君は直ぐに四つ折りにされた用紙を開きキョロキョロと辺りを探し始めると、こちらを見てぱっと表情を輝かせました。はて?

そうしてダッシュで来るといきなりプリシラさんの手を掴み、大声でお願いしてきました。


「プリシラさん!一緒に来てくれますか? 」


私ですか?と首を傾げたプリシラさんに用紙を見せながら再度お願いするリオ君に何が書かれていたのか、にっこり笑いそのまま手を引かれ立ち上がればそこへ雄々しく立ちはだかるダーリンさん。


「ハ、ハニーは渡さないぞ!」


「……駄目、ですか?」


「ギャオス!ギャオス!」


「うっ。、、い、いやでも、僕のハニーだしね。番いだしね。僕旦那様だしね。見栄もあるしね……ってハニー?どうして向こうに歩いてるの」


リオ君とハチのうるうる攻撃に怯みつつも番いとしてのプライドもあるのか必死の抵抗を試みていたダーリンさんでしたが、止めはやはりこの方でした。



「私はリオ様とハチ様と一緒に行きますわ。第一先程のレースでダーリンは借りられたのですから私も借りられますわ」


「ハニ〜!?でもあ、あれはメスに見えるオスをって言われて僕を無理矢理……て、抵抗もしたんだよ?あっさり連れて行かれたけど。

あ、僕自分で止めを刺した?ゔゔ僕だって、僕だっていつかはムキムキになるんだ〜ゔゔ」


あ、本気マジ泣き始めました。

先程から止めを刺すハニーさんです。美少女ユニットにしか見えないご夫婦ですが、何故一緒になったんでしょう?きっと他人には分からない絆があるんでしょうね。

そうこうしている内にプリシラさんは右手にリオ君、左手にハチを抱え余裕の一位!

開示されたお題は、『美味しそうな色』

成る程。プリシラさんの淡いピンクの鱗は、以前クリスマスパーティーでリオ君が渡してくれたプレゼントの飴の色を彷彿とさせます。





「主様、僕達一番ですよ!」


「ギャオスギャオス!!」


「アンタ達、凄いじゃない。頑張ったわね」


「ああ、一位おめでとう。

さて、喉が渇いているだろう」


得意気な笑みで走ってきたリオ君とハチを抱きしめ堪能。(役得)

飲み物を頼んでいる間に女子供には優しいセシリードさんが、大きなタオルでリオ君とハチを抱き上げ汗をワシャワシャと拭いてあげています。繊細な外見と反比例しやることは豪快ですが、髪がバサバサになりながら笑い合っている姿は親子の様で正に眼福。ありがとうございます。

カメラ、カメラ、カメラ。何故ここにカメラが無いのですか。

次に砕いた氷と花蜜と檸檬を搾ったものに冷たい清水で割った飲み物を渡すと、喉が渇いていたのを思い出したのか凄い勢いでゴクゴクペロペロと飲み干し、満足気にぷはぁっ、まで一緒です。(笑)

ミッションインポッシブルを達成したハチを更にモフモフしながら労うとお腹を見せる姿がとてもカワユスです。

他人の目があるのでフルフルと悶えそうになるのはぐっと我慢ですよ。


「ハチも頑張ったな。

任務達成の報酬として、今度この花蜜を使った林檎と胡桃のタルトを作ってやろう」


「ギャオン〜〜〜ス♫ギャオン〜〜ス♫」


ピンク色のオーラを漂わせ蕩けるような顔のハチ。うん、言葉が分からなくとも通じ合う事が出来るのですね。




リオ君に飲み物のお代わりを渡していると、何やら騒々しい声が。

どうやら向こうにいる榛色のドラゴンさんがアシュレイさんに抗議をしているようです。



「おい!こんな奴いるわけないだろうが!再試合を要求する」


「ああ?無理難題は書いてない筈だぞ。なになに……『眩しい程に美しくおしとやかで気高く気品があり、慈愛に溢れ艶やかで煌めく美しい鱗と深い叡智を秘めた瞳を持つ者』」


「一体全体何処におしとやかで気品があるメスがいるんだ?」


ーーーギンッッ!!



何気無くであろう呟いた言葉に、会場内にいたお年寄りから幼竜までメスの竜全ての瞳に殺意が垣間見えました。右奥に陣取っているエメラルドドラゴンのお姉様達の後ろにドロドロと黒いものが見えますし、あら?あちらのオニキスドラゴンの子供は素早いジャブを繰り出しやる気満々ですね。……ご愁傷様です、貴方の未来はタコ殴りで決定です。

凄まじい殺気は近くにいたアシュレイさんにも余波が及んだのか、少し震える手を目の前で今にも倒れそうな榛色さんの肩に置き、


「今のはお前が悪い」


と一言だけ青い顔色で諭しましたが正に後悔先に立たず、です。




「あ、それ僕の用紙だった筈のものだ。何で入ってるの?まぁ、それよりちょっとキミさぁ、それって我が主の事に決まってるでしょ?目悪いの?あ、頭か」


「あ、あー!?そうだ、そうだった!!わ、我が王、そ、その、……がふっ」



元凶は貴方ですか、ルトさん。

ルトさんの指摘を受け一時復活した榛色さんが真っ赤な顔で言葉を続けようとしたところを突然後ろから他の選手達にタックルされダイブ。……生きてますか?



「い、い、一緒に来て頂けませんか?よ、よよ用紙にしっかり『我が主様!!』、って書いてあります!」


「あ、それはあたしのだね」


「俺のは『未来永劫お使えする主様』です」


「俺のだな。ルトも、そんなくどい言い回しではなく素直に書けば問題無かったのではないか?」


「あ、あのですね『立てば黒薔薇、座れば漆黒のチューリップ、歩く姿は黒ユリの花』黒から連想されるものは、そ、その王だけです!俺、いや私と一緒に行って下さい!」


…………。


「何故私の用紙だった筈のものが紛れ込んでいるのですか!」


ほぅ?アゼルさんでしたか。ほぅほぅ、散々我が主様だの至高の君だの人を持ち上げておいて落としますか。ふーん。お花に込められた意味は恨みつらみと私を忘れて、ですか。お望み通り記憶から消去してあげましょう。



「ぐぁあっっ!?わ、我が主様…っ?な何故にお怒り、ッッあぐ」


「まー、新技ね。豪快で素敵」


「わ、大きなタンコブです」



ふ、我ながら綺麗に決まりました。DDTディーディーティー

アゼルさんの頭部を片脇に挟んで、重力に任せるまま後方に倒れこみ、その勢いを殺さずそのまま頭部を地面にごっつんこ。望み通り記憶喪失にでもなって下さい。

ーーむ、まだ生きていますか。

止めを刺そうかと迷っていると、傍にいたプリシラさんが頬に手を添えながら心底哀れんだ声を出しました。



「我が君様の御髪のお色を花に例えた感性は認めますが、本当に残念なお方。

因みにレイラ。貴女花言葉はご存知?」


「へ?は、花、言葉かい?花に言葉??」


「聞いた私が愚かでしたわ。

そうですわね、色や特徴に合わせて象徴的な意味を持たせたものですわ。

例えば真っ赤な薔薇は情熱、愛情とかですわね」


……あ、そう言えば花言葉って内容知らない人が多いんですよね。まして人間ではなく竜種……あれ?アゼルさんがハイスペック過ぎてすっかり失念していましたが、もしかして知らなかったり、します?だってあのモテモテアゼルさんですよ、花の一つや二つぐらい………え〜と、うん。アゼルさんが女性に花を贈っている姿が想像出来ません。………はは、もしそうだったらごめんなさいアゼルさん。

まだ生きているアゼルさんが涙まじりに切々と訴えてきます。



「私は我が主様の気品高く可愛らしく清楚な感じを表現してみたのですがぁぁっっ。がふっ」


「あら?申し訳ございません、地面にお倒れになっていたので気づきませんでしたわ。

ところでアゼル様。先程の花言葉ですが黒薔薇は恨み憎しみ、黒チューリップは私を忘れて、黒ユリは呪い、ですわ。

まぁ、よくもこのような不吉な言葉のオンパレードで私、逆にあなた様を感心しましたのよ」


「……………………けふ…」


人の不幸は蜜の味。悪女の様な黒い笑みを隠しきれないプリシラさんの言葉を聞いた瞬間、真っ青になり吐血したアゼルさんの姿に本当に知らなかったのだとちょっぴり反省です。本当にごめんなさい。






因みに四つ巴の争いから偶然?を装い自分の用紙をすり替えようとする選手達が乱入し、全員目出度くタイムアウト。


……弱肉強食の世界です。





お、奥様いつの間にやら総合評価が2000超えになっていましたのよ!

∑(゜Д゜)

皆様のおかげです。

次回はお祝いと感謝小説を投稿致します。

ありがとうございました。



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