たまこがしは突然に
ゴールデンウィーク、間に合いました。
ひー。>_<
印字ミスなんて思ったこともありました………はぁ。
くわぁっ、と大きく開いた口から出た高温のブレスが放たれ、巨大な岩を熱しジワジワと赤くなっていきます。
女神ヨーコさんの所為か聞き間違いか多いに悩むところですが、今行われている競技たまころがし、ではなく、たまこがし。漢字に直すと玉焦し。
一文字抜けただけで全く違う競技に成り果てており、言葉は正しく伝えないととんでもない事になる、と言う見本のようです。
レイラさんとプリシラさんコンビ率いる赤組と対するはルビードラゴン中心に編成された白組です。何故ルビードラゴン中心かというと、彼らの特徴の一つにその気性からか火の魔法が得意な方達が多いことが挙げられるのです。
しかし守護竜のレイラさんと最終選考まで残ったプリシラさんコンビでは分が悪過ぎるようでスピードの違いが目に見えて分かります。
「熱気も凄いわね〜、まあ張り切っているレイラが出ている時点で相手チームの負けは確定ね」
「凄いですねー、あんなに大きな岩がどんどん真っ赤になってきてますよ。
わー、赤い泥んこになっちゃいました」
「ギ、ギャオス!?」
ひー、あれ泥んこじゃなくて溶岩です!消防車プリーズ!
ドロドロと溶岩はゆっくりと周りの草を燃やしながら移動しているのを会場整備の方達が慌ててコールドブレスで冷やし固め事態は終息しましたが。
そしてここで問題が。
勝利に湧く赤組に白組からストップが。
この競技はたまこがし。つまり岩を焦がすのであって溶岩になった時点で負けではないのかと。……玉転がしだったらこんな問題は出なかったのに。
揉めた末、最後は最長老様の判定に委ねる事に。
「最長老様、ジャッジを」
ギンッ!と凍るような緊張を孕んだ視線を知ってか知らずか、最長老様はヨロヨロと壇上前に進みゆっくり辺りを見回して。
「……あ〜、、ヨメはぁ、どこかのぅ…」
…………。
「あ〜、最長老様はお疲れの様だ。お連れしろ……おいお前、終わるまで絶ってぇ外に出すんじゃねぇぞ」
アシュレイさんのドスの効いた声がコアイ。選手達の冷たい眼差しが…ブルブル。
「申し訳ございません。我が君、判定をお願いしてもいいですか?」
何と!?
アシュレイさんが決め、、ってルビードラゴンの族長だからどちらに軍配を上げても文句が出ますか。
その点私に文句を言う人はいませんからね〜、ビバ権力です。
しかし私の答えは決まっています。
「一瞬でも焦がしたのだから赤組だな」
そう宣言した瞬間、赤組から大きな歓声が上がりました。
別に何方でも構わなかったのですが、ここで同点にしておかないとレイラさんルトさん率いる赤組が一体どのような妨害工作をするのか想像がつきませんので平和的に。
会場の方から、夕日色の赤い鱗とローズクォーツ色ピンクの鱗の竜がドシドシ地響きを立てながら此方に走ってきました。ゆ、揺れます!同じ様に走っている姿は姉妹にも見えますが、静かに!
「我が主様、見てくれましたか!」
「我が君、貴女様の為に勝利しましたわ。褒めてくださいまし」
綺麗なお姉さん系と可愛いい妹系の美人さん二人に囲まれウハウハでございますが、耳にギリギリギリ、と何かがこすれ合って軋むような鈍い音がしているんですが何でしょう?
いえ、二人の隙間からチラリと見えた尾が絡まり合っているような。
同じ疑問を思ったのか横からそうっと後ろに回ったセシリードさんの口元が盛大に引きつったので、何やら静かな戦いが起きているようです。
「主様、みんな凄いですね!えっと……み、見応え!見応えがあります」
確かに見応えだけはあります。
それが正しい競技かと問われればアウトですが。
しかし見るだけなのに疲れます。
心の中で突っ込み続けてる所為でしょうか?
花茶を一口啜りホッコリ。
疲れた心にほんのりとした甘さが染み渡りますね。このお茶は珍しいのでお城や緑茶の会の皆さんにお土産に持って帰ってもいいか聞いてみましょう。
この花茶は浮島の南の方に水がないのに年中虹が出ている摩訶不思議な場所があり、その虹の根元に生えている花の花びらを煎じてお茶にしたものでお湯の温度の違いで薄い緑や赤などに変化するお茶なのです。同じ花から採取した花蜜を入れると旨味倍増。リオ君が八対二の割合が一番美味しいと通のような台詞を言っていましたが、対比は蜜が八のお茶が二です。この子将来糖尿病にならないか心配です。
花茶を堪能しつつパンフレットを広げ次の確認。(心の準備とも言います)そろそろお昼休憩に入ってほしいところですが……仮装リレーと応援団の次にお昼休憩ですね。了解しました。私頑張ります。
仮装大会。
これは人化できる方限定です。……良かった、これはそのまま普通の競技ですね。ただバトンリレーでは無く一対一のリレーをし、勝利数が多い方が勝利です。
爆笑と冷やかしの声に出てきた第一走者は、派手なピエロですが顔は羽子板の勝負に負けて墨で顔に落書きされたような丸やヒゲ顏です。
対して……おお、フリフリドレスですよ。ロココ様のキラキラゴージャスですよ。
恥ずかしいのか真っ赤な可憐なお顔に良く似合います。潤んだ涙目が可愛いい〜。
「ダ〜リン!頑張ってくださいまし〜。でもダーリンは白組ですから負けて下さいね〜」
応援しているのか牽制しているのか分からないプリシラさんですが……え、ダーリンって旦那様。えー!?オスですか?
ショックに呆然としている私の耳にこれまた弱々しくて庇護欲をそそりそうな可愛らしい声が。解せませぬ。
「ハニー、何で君が用意してくれた衣装はドレスと兎の着ぐるみしか無かったんだい?恥ずかしいよ〜」
「ダーリンに一番似合う衣装だからですわ。
私では選べませんでしたので二着用意しましたの。選んだのはダーリン自身ですからね」
「兎だけは嫌だー!!(泣)」
プリシラさん、鬼ですか。




