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玉入れは突然に

「うおりやぁぁぁぁっっ!!」


「死ね、アゼル!滅びろイケメン!!」


「アゼル様〜、お慕いしてますけど王様に引っ付く害虫は別なので死んで下さい、っね!骨は拾ってあげます、っとお!」


「敵味方関係ねえ、貴様だけは俺が倒す!だりゃあぁぁぁっ!!!」


「やれー!お前ら俺の代わりに仇を取ってくれー」



アシュレイさん曰く。

記述には一定の時間内にカゴの中に多くお手玉を入れた方が勝ち、と。


何故でしょう、文だけ読み解けばアシュレイさん達の方解釈が正しく思えてくるのは。

それもこれも文章に自分の陣地のカゴに入れると記述がない所為です。これでは相手のカゴの中に、と解釈しても可笑しくはありません。

今更言っても仕方がないのですが、女神ヨーコさんがどの様に伝えたかによってこの先の競技が恐ろしいものに変わっている嫌な可能性が出てきた事に思わずパンフレットを凝視してしまいましたが、今更私の手に負えませんのでここは悟りの境地で見守ることにしましょう。


生暖かい目で見る私の前では玉入れと言う名のドッチボール?ハンドボール?の様なものが繰り広げられています。短い手から投げる姿は可愛らしさも感じるのに、速度がシャレにならないくらい早く、まかり間違えて人に当たればぐしゃぐしゃ殺人レベルの威力。

そして先程から雄叫びが聞こえますが彼らが投げる先はゴールポストではなく勿論アゼルさんです。

一部の年若いメス達からの黄色い声援を受けながら、襲いかかる無数の弾丸おてだまを大きな巨体でひらりひらりと体重を感じさせないまるで舞うように避ける姿が何とも優雅です。


顔面を狙った白いお手玉(アゼルさんは白組)を最小限の動きでさらりとかわしたアゼルさんは、くるりと赤白混合チームを振り向き目を細めながら器用に肩を竦め、


「これだけ人数がいて私に当てる事も出来ないとは……ふ」


鼻で笑ってくださがりやがりましたよ、この人。



『『……コロス……』』



ゾクリ。


さ、殺意って突き抜けると無感情無表情になるんですねぇ。一流の殺し屋さんになると殺気を出さずに殺れると聞いたことがありますが成る程。……ガクブルガクブル。

手玉きょうきを投げる速度が音速から光速に切り替わり、もう竜王わたしも目で追えません。

リオ君やセシリードさんは凄い凄いと純粋に盛り上がっていますが、選手の方達スポーツマンシップの精神は何処にいったのですか。はぁ。


そんなこんなで只今、空中戦を展開しており、アゼルさんが投げたお手玉が翡翠色のドラゴンの腹に当たり吹っ飛びました。

滑空し襲いかかる弾幕おてだまをかわしつつも反撃する姿は見応え充分で思わず目を奪われますが、地面にいない時点でギリギリ?玉入れからどこぞの戦闘機ゲームに代わり、玉入れという名の競技はアンドロメダ星雲の向こう側ぐらい遠い距離にあると思います。


「ギャオス、ギャオス」


最新鋭の新型戦闘並みの空中戦を生暖かい目で眺めていると、ハチが足の裾をカミカミし引っ張る姿がカワユス。

抱き上げ、お日様の匂いがするフサフサ毛並みを撫でようと目線を変えて見えたもの、それは。


ーーハチはこれが言いたかったんですね。


腕の中のハチがギャオス、と小さな声で鳴いた時、終了の鐘が鳴り響きました。





地面にへたり込み肩で息をしながらし屍になった選手の皆さまご苦労様でした。

ーーそしてご愁傷様です。



「はぁはぁ、、、ん?……し、しまった…」


「あ、どちらが勝ったんだ!?」


「偶然入ったのもあるはず……え、マイラ?」


選手と観客の視線が向かう先にはマイラと呼ばれた白混じりの黒い鱗を持つオニキスドラゴンさん。涙目の彼女の手には白いお手玉、その向こうには赤組のゴールポストに入った大量のお手玉。

それを見た瞬間、歓声と悲鳴と怒号が入り混じる中で一際大きくアシュレイさんの声が白組の勝利を宣言しました。



つまりアゼルさんは敵の目(味方を含む)を自分に向けて、オニキスドラゴンさんの隠れ蓑代わりになっていたということですね。

序でに煽る為に試合が始まる前、私への挨拶も計算に入れていたはず。悪どい。

裏切りに非難の目を向ける仲間達にマイラさんは目を潤ませながらおずおずと説明し始めました。


「だってぇ〜、ア、アゼル様が言うこと聞かないとわたしの鱗を一枚一枚剥がすって脅すんですよ〜。……ゔゔ、あのアゼル様の笑顔、わたし怖かったでずゔゔ〜」


うわああぁぁぁんっ、と大声を出し泣き出したマイラさんを慌てて周囲の人たちがすまなかった、もう大丈夫だぞ、と必死に宥めていますが、その元凶アゼルさんは私の隣で小馬鹿にしたような顔で眺めておりますが全て貴方の所為ですから。



「…アシュレイ、これがスポーツマンシップか?」


「そうです。ほら見てください。正々堂々と戦い、最後にはああして敵味方共に友好を深め合っています。これがスポーツマンシップ、素晴らしいじゃないですか」


………ホントです。

部外者の横槍も入らず正々堂々?(一対複数マイナス一)、最後には敵も味方も心を一つにして戦い、今は仲間を慰めています。(アゼルさん除く)


あれ?

結果だけ見てみればスポーツマンシップになっています。あれ〜?



「主様、玉入れってビュンビュン速くてゴォーでドオンッで強くて凄いんですね」


呆然とする私の横で、リオ君が笑いながら両手をブンブン振り先程の試合が如何に凄かったかを説明してますが、うん。落ち着きましょうね。あれは玉入れではありませんから。序でにキラキラ青春の爽やかスポーツではなく、恨みつらみと脅迫なんかが入り混じったドロドロ真っ黒い試合でしたからね。リオ君は真似してはいけませんよ。


あ。

いやいやいや、そうですよ、やはりあれは違いますよね。

ふぅ、危ない危ない。危うく洗脳されるところでした。リオ君ありがとう。貴方のおかげで逆に冷静になれました。

平常心且つ、心を強く保たないと私まで仲間入りになりそうです。






周囲が話し掛けてくるのを当たり障りない応対で会話をしていると、地面の振動と共に次の競技の道具が転がりながらやって来ました。成竜の四倍はあろうかと思われる巨大な丸い岩が二つ並んで設置されます。

岩?はて、何の競技でしょうか。

首を捻りつつ分からない時はパンフレット、紙を広げましょう。

えっと、次は〜玉転がしですか。ちょっと大きいですが納得です。玉競技が続きますね。、、ん?


たまこがし?



印字ミス発見です。




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