幕間は突然に ①
ユニコーンのマーリオット視点です。
途中前の話と被りますので、面倒な方は飛ばして下さい。
主様はとても優しい。
怒るとちょっと怖かったけど凄く強いし、綺麗な方。
僕はそんな主様が大好きです!
僕はアルトヤージュの森で生まれました。
僕が大きくなると、お父さんもお母さんも何処かに言っちゃった。
長老様がユニコーンは群れを作らず、子供が成長すると別の場所に移動するんだよ、と教えてくれたの。
習性って言うんだって。
だからかな?あんまり寂しくないし、森に住んでいる皆の怪我を治していたら、自然にお友達も沢山出来たからいいんだ。
長老様やお外から来た皆が口を揃えて言うのは、この森は絶滅寸前の珍しいお花や石や僕らみたいに人間に追われた者たちの為に主様が作った奇蹟みたいな森なんだって。
ここには自分達を狩る人間はいないし、勿論油断していたら森にいる肉食獣さん達に食べられちゃうけど、この森ほど豊かで精霊さん達が多い場所は他に無いんだって。
そしてそれを支えているのが主様なんだ。
ドラゴン様達の中で一番偉い王様で、世界の主なんだよ。
そんな凄い人がなんでこの森に居るのかな?
僕は主様にお会いした事はないんだけど、どんなに優しい王様かは皆知ってる。
大きな声で悪い獣を追い払ってくれたり、ずっと雨が降らなくて皆が困ってた時は森中に雨を降らせてくれたんだ。
それから、外からきたスライムさん達が人間に狩られて核にある魔力が無くなっててどうすればいいか困ってた時には、主様の魔力が宿った水晶を分けてくれたんだ。
今ではスライムさん達は恩返しに森のお掃除屋さんになってるんだよ。
ある日の朝、皆が人間達が森に入って来たと大騒ぎになった。
僕らを狩りに来たのかな?
捕まえに来たのかな?
…でも人間を少しだけ見てみたいかも。
僕とお友達は遠くから見るだけなら大丈夫だと、長老様に止められていたのにも関わらず人間を見に行ったんだ。
「こっちだ!」
「そちら側から回り込め!」
「ちっ。チョロチョロ動き回るから魔法もつかえねぇ」
「初日で見つかるとは運が良かった」
人間達が口々に言い合いながら僕を捕まえようとする。
ーー何で?どうして?
あの人達は何かを探している様子だだった。でも僕を見つけた途端捕らえようと追いかけて来たんだ。
ーー探していたのは僕?
お友達と一緒に何とか逃げてたんだけどだんだん追い詰められていく。
ーー怖い怖い怖い怖い!!
ーー誰か助けて!!
バリバリバリ
ドゴオォォンン
大きな音と沢山の煙がモクモクして周りが見えなくなった。
今度は何!?人間達が何かしたの!?
だんだんと見えてきた。ーーーあれは…主様!?
僕らを助けに来てくれたの?
「無事か?」
主様は優しい目をして無事を確認してくれた。
やっぱり僕らを助けに来てくれたんだ!!
『は…はい。みんなが助けてくれたので大丈夫です』
「そうか」
ほっとされたのか、瞳が和らいだ。
わ〜。目も黒いんだ、真っ黒じゃなくて透明の中に濃い黒色が混じってとても綺麗〜。
「何でこの森にドラゴンがいる!?」
主様を見つめてたら突然人間達が騒ぎ出した。
「見たところ一匹だけですね」
「じゃあ、作戦通りこのまま魔方陣で捕縛だな」
「他もなるべく殺すなよ」
「勿論そうするつもりだけど事故は仕方ないよね〜?」
「オニキスドラゴン程度なら5人もいれば充分だろう」
ーー?
何でちゃんと丁寧に喋らないんだろ?一番偉い王様なのに。
オニキス?こんなにキラキラしてる鱗なのに?
人間は頭がわる……目が悪いのかな?
それに勝手な事ばかり言って嫌な感じ …!?
主様の気配に皆が凍りついた瞬間、咆哮が響いた。前に悪い獣が来た時の声よりも怖い〜、怖いよ〜
森の皆を傷つける事を言うから怒ったんだ〜〜
あ〜あ。あの人達ボロボロになってる。
「何故人がいる?最高ランク、ジン条約によりここは立入が禁止されているはずだが?」
…?ジン条約?約束のこと?
『ねぇ、条約って何?』
「世界はこの森を中心に東西南北に四つの国と、その土地を守護する者たちがいるのは知っているか?」
主様が教えてくれるなんて思わなかったからビックリした。
え〜っと守護竜様の話は長老様から聞いたよね。
『は…はい。長老様に教えてもらいました。えっと確か、創生神様が一番最初に誕生させたドラゴン様に世界を与え、ドラゴン様は後から生まれた人間に大地を貸しているんだと言っていました。大地に国を作った人が悪い事をしないように見張ってるのとえっと、土地の守護の為に各部族から選ばれたドラゴン様達の事を守護竜と呼ぶと教わりました』
大丈夫かな?
「合格だ。条約とは国家間、まあ国同士の決まり事だ。守護竜はあまり介入することはないが、守護竜同士の話し合いで決定されるものは最高ランク、初代竜王の名が付いたジン条約とも誓約とも名が付くんだ。
つまりは無視した場合は他の国々や守護竜達に滅ぼされても文句は言えないレベルの決まり事だな」
良かった〜。間違っていなかった〜。
お勉強しておいて良かった。後で長老様にお礼を言っておこう。
でも、約束を破ると皆死んじゃうって、
『怖いです〜』
「実際に滅ぼされた国もあるぞ。大抵は国が動く前に竜が滅ぼすがな」
ひ〜。
『ね…ねぇ、皆知ってた?』
『知らねぇけどあの人間達、勇気あるよな〜。そんな約束事無視して入ったんだろ?』
『勇気というより無謀だな。第一、ここは竜王が住まう森だぞ?守護竜様達でさえ入れない。
それをたかが人間が入って来たんだ。…………我は守護竜様の方が怖いな』
『なんで?主様じゃなくて?』
『外から来た者たちの間で有名だぞ。竜王様絶対主義達の話は』
『ああ、あれか。……あそこにいる奴ら、悲惨だな』
『俺も聞いた!聞いた!幼体だった時に物凄〜く纏わり付いて離れなかったとか、主様の触った物全て集めてるとか』
『…ソレコワイヨ』
………守護竜様って一体…?
「お前の名は?」
あ、いけない。主様の話を聞いていなかった。
えっと名前だよね。
『僕はマーリオットと言います、主様』
「ではマ…いやリオと呼ぼうか、今から翻訳と守護魔法をかける、此方においで」
「は…はい」
!!主様自ら魔法をかけてくれて、愛称までつけてくれた!
僕、これからリオって名乗ろう♫
「これでいいな。
状況を説明するぞ。
西にあるシャリーズ国の王妃が半年前に原因不明の眠りについた。
怪我も病でもないらしく、薬草も治癒魔法も効かない。
そこで一縷の望みを掛けてお前を探しに来たらしい。
治癒においてユニコーンの右に出る者はいないからな。
ーーリオお前はどうしたい?こいつらを追い返したいか?仕返ししたいか?それとも助けてやりたいか?」
だからあんなに必死だったんだね。
「…別に仕返しとかはいいです。王妃様を助けたいとも思うけど人間ばかりのお外は怖いし、…死んじゃうのも怖いです」
助けたいけど、怖がる自分が情けなくて考えるだけで震えが止まらない。
涙まで出てきた。う〜。
そしたらいきなり人間達が謝って来たの。
え?え?怖かったけど怒ってないよ。
いっぱい謝ってくれるのは嬉しいけど、何で木に頭を打ち付けてるの?
頭抱えて回ってるの?
……これが前に長老様の言ってた頭がおかしい人??
「喧しい」
主様が頭がおかしい人達を止めてくれました。
良かった〜。何で何もされていないのにあの人達を見たら震えが止まらないのかな?
主様が僕は精霊の祝福を貰ったんだって、だからお外に行くのは大丈夫なんだけどーーーやっぱり怖い。
あの人達は悪い人達じゃ無かったけど、本当に終れば帰れるの?迷子になったりしない?イジメられない?
考え過ぎて頭がグルグル回って来たとき優しい目をして、言ってくれたんだ。
「………行くか」
ーーー!!
「主様、一緒に来てくれるんですか!?」
嬉しい!!
「僕、一人で不安だったんです!
主様が一緒なんてとっても嬉しいです!」
「良かった〜」
安心したら今度はワクワクして来た!
お外の世界はどんな場所だろう?
お城は大きいのかな?
美味しい草や木の実もあるかな?
あ、ちゃんと王妃様を助けないと。
僕は本当に治せるのかな?
不安も期待もい〜っぱいあるけど主様と一緒に出掛けるなんて夢みたい!
楽しみだな〜。
次は隊長さん視点も入れようか悩んでます。
ストックが無くなりましたので不定期になりますが、目指せ一週間に2、3回更新!