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飛び入り参加は突然に

「駄目です。捨てて来てください」


「ちょっと、あたしを犬猫みたいに言わないでちょうだい!」


冷たいアゼルさんの言葉に猛然と抗議するセシリードさん。

セシリードさんとプラスでリオ君、ハチを連れて行く事を告げると予想通り猛抗議してきましたが、知りませ〜ん。第一神聖な〜何て言ってますが祭りと言う名の大宴会だということは私知っていますよ。


一人増えようが三人?増えようがあまり変わらないですって。

ええ、リオ君とハチもです。

グリーンティーパーティーの後、セシリードさんの参加表明を聞いたリオ君は私の袖を掴む小さな手に力を込め服を遠慮がちに引き、不安と寂しさが混じった瞳が見上げてきました。


ちょっ!?い、い、一体何処でそんな秘技を習得したのですか!?



「主様、何処かに行っちゃう…ですか?」



「勿論連れて行くとも!」リオ君を抱きしめながら声高らかに約束しましたよ!

権力をいつ使うの?今でしょう!職権乱用と言われようともゴリ押ししますよ。


「…計算していない天然って怖いわ」



因みに帰ってからそれを聞いたハチは、直ぐに私のズボンの裾を小さな牙で軽く噛み、ウルウルおめめで訴えてきました。

この子達、別の意味で怖いです。





そんな訳でアゼルさんとセシリードさんの陰険漫才?を苦々しい顔で見ていたルトさんたちにトコトコ近づくリオ君。

…あの雰囲気の中に平然と近づくリオ君にちょっぴり危機管理能力が大丈夫かと不安になります。


「皆さん、今日はよろしくお願いします。

…?ルトさん達、疲れてます?」


「へぇ分かる?そうすっっっごく疲れてるんだ。何でかって?君も天井に届くぐらいの大量の書類に囲まれて三週間生活してごらん。紙の音にも反応してイライラするし、最後にはアゼルのとこの補佐官や書類の幻覚が見えるから。今もチラホラ幻覚が見えるんだよ、ほらそこにも。

君達が我が主と一緒に楽しくお茶会や散歩やお風呂や食事や添い寝なんかをしている間に僕らは仕事をしていたんだよ。し、ご、と。分かる、分かるかな?ねぇ何か言ってごらんよ。分かんないかな〜、この口は飾りなのかな〜、ん〜?」


「ふ、ふぇ〜、ふぁなひひぇふぁあい〜」


相当ストレスが溜まっていたのかルトさん、凄くいい笑顔です。キラキラ輝いて眩しいくらいですが、リオ君に八つ当たりはやめて下さい。

男性にしては細い指がうにゅ〜ん、とほっぺたを引っ張り伸びる伸びる。くぅ、つきたてモチモチ肌が羨ましいですよリオ君。いえ今の私もシミ一つありませんが生前は高い某化粧品をチビチビ使いながら維持していたので、ナチュラルにちょっぴりジェラシーが、、、じゃありませんリオ君が半泣きになっていました。


「ルト」


「いやですよ〜我が主。ちょっとしたスキンシップですって。ねぇ君、今は痛くないよね?」


「はい、今は痛くないです」


私は八つ当たりを注意したのであってそりゃ手を離せば今は痛くないでしょうけど、新手の詐欺師みたいな事を言いますね。もう更生は諦めてますけど。




そしてルトさんを新たに加え、更生を諦めている面々が向こうで揉めています。

私が連れて行く事を譲らないと分かると次に誰が運ぶかで議論が交わされています。

最初考えていた私の背に乗せて行く案が即座に却下され、ゴンドラのように箱に入れて釣り座げて行く案が可決されたのですが、今は誰が運ぶかで押し付け合い、ではなく自分が運ぶと譲らないのです。

……貴方達やる気(殺る気)満々ですね。



平和的じゃんけんで最終的にレイラさんに決定しました。

宝探しゲームの時も思いましたが、アゼルさんの綿密な計算を物ともしない野生の勘って凄いですよね。

そうそう、皆さんの安全を確保しておかないと。

ツルツルした黒檀色の太い丈夫な蔦で編まれた大人四人は入る大きな籠の中にたくさんふかふかクッションを入れて、蔦や紐にも補強魔法をかけて温度や気圧も注意して。精霊ちゃん達の祝福がありますからそこの辺りは大丈夫ですかね。

あ、忘れてはいけない大事な言葉が。


「レイラ、頼りにしている」


「わ、我が主様…」


感極まったレイラさんの目が潤み頬を赤らめて、すっごい色気がダダ漏れなんですが。見送りに出ている周りの人達が真っ赤になって魅了されていますよ。斯く言う私もクラクラと、、危ない危ない。私はノーマルなのです。

レイラさんは潤んだ瞳をキッ、と引き締め迫力美人さんの顔になると、アゼルさん達を睨みつけました。



「お任せ下さいっ!!

ちょっとアンタ達!さっき言ってた、偶然バランスを崩して体当たりも、偶然風が釣り紐を切るのも、偶然怪しい薬を散布するのも禁止だからね。近付いたりしたらタダじゃおかないよ!」


「……はぁ、あたし達を事故死させる気満々ね。偶然がどんだけつくのよ」


ブーイングする面々を見てげんなりと呆れた声でセシリードさんが呟きました。

やっぱり殺害計画を立てていましたか。ふっ、先に手を打って正解でしたね。誰か褒めて下さい。


風と光の魔法を使い姿を隠蔽して、っと。準備万端!さぁ、出発しますよ。





人化の術を解いた時に感じる解放感。

冬着で何枚も着込んだ服を脱いだ時の様に普段は何も感じないのですが、身体に纏わり付いたものが無くなる感覚と解放感。やっぱり人間ではないんですよね。


煌めく鱗を褒め称える周りを急かし、見送りに来ていた人達に挨拶を返すと、飛翔しましました。

先頭はルトさん、アゼルさんと続き次に私、後ろに籠をぶら下げたレイラさん、しんがりはガイラルさん。



久しぶりに感じる空の空気に気分が高揚しているのを感じます。

精霊ちゃん達と一緒に後ろではセシリードさん達のはしゃいだ声が届きました。



「すっごいわね〜、空が飛べるなんて思ってもみなかったわ。んー、風が気持ちいいし空気も澄んでるわ」


「そうだろう、暫くご無沙汰だったが私は空の散歩が好きなんだ」


「こんなに気持ちいいもん、分かるわ。建物もあんなに小さく見えるしそれに何か見下ろすっていい気分ね〜。ほら、まるで人がゴミのようだわ」


自然にその名台詞が出るセシリードさんとはいい関係を築けると思います。


「うわ〜!主様っ!雲、雲のお布団です!ふかふかしてか気持ち良さそうですよ!僕寝てみたいです」


「ギャオス!ギャオス!」


ああ、癒し要員を連れて来て良かったです。ええ、ええ。お布団、メルヘンです。癒されます。





暫く空気抵抗を感じながら上昇していると、先頭を行くルトさんから声がかかりました。



「我が主、そろそろ結界に入りますよ」


ルトさんの声と同時に重い空気の層に入りそのまま暫く上昇していると、急に視界が開け目の前に浮遊大陸が姿を現しました。


見渡す限り大小様々な浮島が存在し、どういう仕組みか火山地帯や大きな滝、草原、大きな湖、まだ上手に飛べない幼竜の為の島と島を繋ぐ大きなアーチ状の橋も見えます。



「な、何ここ…」


「ほわ〜〜」


「ギャオス…」



竜種の領域へようこそ。




そのまま浮島の間をすり抜ける様に暫く飛んでいるとルビードラゴンの集落が見える距離になってきましたが、、あ。集落上空に大勢のドラゴンたちが空を飛んでいま………揉めてます?


「…一体何をしているんだ?」



訝しむガイラルさんの疑問に答えられる人がいません。

遠目に圧倒的に多い色は赤系なのですが、その中で緑や青や紫、透明、黄色など少数の色がグルグル回って混じり合い大勢で大回転しているようにも見えます。不規則に見えてどことなく規則的にも感じられますが、前に出ようとして後ろから邪魔され結果、回転しているような?……これってもしかしてもしかしなくても。




「………ねぇリンちゃん。あたしには誰が一番前に行くのかで揉めてるように見えるんだけど」


「…………奇遇だな。私にもそう見える」



何をしているんですか、貴方たち。





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