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波乱の予感は突然に

二百年祭。

本当は長い名称があったのですが、二百年毎に開催される事からいつしか二百年祭と呼ばれるようになりました。

この二百年祭、要は各集落の寄り合いですね。

私たちの生態は基本自分大好き、我が道をゆくタイプですので自分の住んでいる場所から離れない者も多く、下手をすれば何百年も他の集落どころか外に出ようともしない引きこもり。

これではマズイと各集落の長老様方が集まり二百年祭という名の交流会を開催するに至ったわけです。


これは二百年毎に決められた周りでその種族の集落に、他の種族の長老及び代表者数人が集まり意見交換えんかい報告会だしもので交流と絆を深めようというのが目的なのです。

しかし祭りの名の通りそれはそれは盛大に盛り上がるそうです。




「ふーん、随分と期間の空いた祭りねぇ。人間あたし達は何回死んでるかしら……って、リンちゃ〜ん。いい加減機嫌直してよ〜。あたしが悪かったわ。ほら蜂蜜漬け買ってあげるから〜。ね?ね? 」


セシルさんが困った顔で訴えますが知りません。乙女心は傷付いたのです。




いえ、孤児院を出る際にミニマムウェイトレスちゃんを嫌な目で見ていた羽虫、もとい男の方が数名いらっしゃったのでどうするか考えていたところセシルさんが自分の使い魔を護衛にすると言い出しまして。


宝探しゲームの時に見たセシルさんの使い魔だったリンゴ色のハムスターちゃんで名前はマッチちゃん。

その子に孤児院を護衛してもらうって、この間腕の一振りで飛ばされてましたよね?……え?ハチと一緒で身体のサイズが変更可能?逆に腕の一振りでノックアウト出来るのですか?いや、でも何でゲームでは?……手加減が苦手?一般人に死者を出すわけにはいかなかった?………そ、そうですかダンジュさん以上の筋肉ムキムキですか。お強いんですね。


テーブルの上に召喚されたマッチちゃんはキョロキョロと辺りを見回すと、パッと目を輝かせトトトトッと私めがけて一直線に懐へと飛び込んで来ました、が。


ふにふに



ふにふにふに


???


何回も感触を確かめクエスチョンマークを浮かべるマッチちゃん。



……………。


……………………す、すみませんねえぇぇ!!無い胸でっ!!(血涙)

何ですか!?胸?そんなの脂肪の塊じゃありませんか。それとも何か?胸が無いと生物的価値がないとでも?……ふ、ふふふ。その名の通り、マッチみたいに燃やしてあげましょうかねぇぇ。


青筋を立てていたセシルさんも青ざめていたダンジュさんも私の殺気に固まる中、いち早く我に返ったマッチちゃんが、テーブルの上でコロコロ回り始め上目遣いでこちらを伺っております。何というか出会った頃のハチを彷彿とさせるというか、……毒気を抜かれました。貴方たち同類ですか。


「ほあ〜主様、ハチもよくメイドさんのお胸めがけて走って行きますけど、そっくりですよ」


あ、リオ君も同意見でしたか。


「コイツ命拾いしたわね。うちの使い魔がゴメンナサイね〜。後でキツくお灸を据えとくわ。

でもリンちゃん、気にすることないわ。胸は大きさじゃなく感度と形よ!因みにあたしは小ぶりでも大丈夫、いつでもどんっと来い、だからね」


「リン様、胸は脂肪の塊です。それを筋肉に変える事が重要であり、小さければ小さい程楽になるので喜ばしいではないですか。故に大きさなど二の次ではないかと」


「……兄ちゃんらサイテーだな」


何かがザクザク抉られている私の横で最低な大人たちをニック君が蔑んだ目で見ていました。

ニック君だけはこんな穢れた大人にならないで下さいね。


「リン姉ちゃん、気にすんなって。大体胸の大きさなんて関係ないよ。

リン姉ちゃんはスタイルいいし身軽でかっこいいよ。大体胸がデカくても性格最悪ババアなんていっぱいいるしさ」


ニック君!私の心のオアシス!

労わりを込めぽんぽんと肩を叩いてくれるニック君を思わずむぎゅー、と抱きしめながらグッタリしていると、


「…あ〜、リン姉ちゃんってあんまし表情に出ないから分んなかったけど、もしかして結構ダメージ受けてたりしてた?」


ニック君が心配そうな声で聞いてきました。

ええ、瀕死ダメージを受けましたよ……いえ私、負けません。

セクハラと人権侵害で訴えてやります。




と、いう事がありまして。

先程まで私の気分は最悪でした。いえ、何時迄もムスクれているのは大人気ないかな、と思いまして。別にココの実の蜂蜜漬けを買ってもらったからではありませんよ。

しかし美味しいですね。

上に砂糖が掛かって外はシャリシャリとして中は柔らかく食感は日本で食べたザボンの漬けの様です。美味しいんですよね〜。ワイン漬けもあったのですが一口も食べることなく母親の胃袋に収まりまして。あれだけが心残りです。……心残りが食べ物関係か、とまた凹みそうになるのを振り払い、セシルさんに言いました。



「はぁ、この蜂蜜漬けに免じて許してやろう。

先程も言ったとおり二百年祭とはまあ、集会にかこつけた要は飲み会だな……今年はルビードラゴンが担当だからな、レイラが張り切っている」


「へぇ、ルビードラゴンの集落なのね」


私はボイコットしていたので一度もまだ参加した事はありませんが、今回はそうもいかず全族長から嘆願書が山になり内容もちょっとした辞典並の厚さでラブレターも真っ青な内容に渋々了承しましたが、今回の開催地はルビードラゴンの集落。彼らの特徴としては義理人情を大切にし他と比べて付き合いやすい一族ではありますが、如何せん頭に血が上りやすく喧嘩もお酒も大好き。特に喧嘩は集落が半壊するのは日常茶飯事。他の一族は訓練相手で突撃するのは当たり前。

……初めて行くのがルビードラゴンの集落とは結構ハードルが高くありませんか?

悩む私にダンジュさんが常々疑問だったのですが、と質問をしてきました。


「そういえば竜種の住処は不明とされていますが、やはり霊峰と呼ばれるような高い山の上ですか?」


ん〜、惜しいですね。

私は苦笑しながら指を上に指しました。


「惜しいな。私たち種族は空に浮かぶ浮島に住んでいるんだ」


「へ?浮島?あたしかなり視力は良い方だけどそんなの見た事ないわよ」


「あ、僕前に長老様に教えてもらいましたよ。竜種の方々は雲の上に浮かぶ島に仲良く暮らしているんですよね?

浮島は目隠しの魔法で覆われていて僕達には見えないんだって言ってました」


素晴らしいです長老様。なかなかの英才教育ぶりです。

目隠しの結界に覆われていますが、雲の上には大小さまざまな大きさの浮島が点在していてそこに住処を作り生活しています。

一説には創生神と女神が創り出したとされ、神秘の島とも呼ばれていますが、私的の考察としては、女神様はずばりジ○リマニアでしょう!と言ってやりたいです。

まあ、なんだかんだ言っても私も楽しみなんですけどね。

考えてみて下さい。空の城や神殿、要塞なんてファンタジーの王道ですよ、奥様。

ああ楽しみです。二百年祭なんて一日耐えれば終わるんですし。


ムフムフと今後の予定を立てていた私にセシルさんがまさかのお願い事をしてきました。



「ねぇ、それってあたしも行っちゃダメ?」



……波乱の予感しかしないのは何故でしょうか?





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