布教活動は突然に
遅くなり申し訳ございません。m(__)m
吐血しそうな程忙しい月でした。(泣)
徐々にいつものペースに戻して行くのでもう少々お待ちください。
「は〜、美味しかったわ〜。
この抹茶のシフォンケーキって風味もいいしこっちの生クリームと一緒に食べても美味しいわね。
ただ軽過ぎて男性のアタシじゃなくてもワンホールペロリと食べてしまわない?」
「ふむ、ワシは此方の抹茶ムースが美味かったぞ。甘さ控えめでありながらもスイーツとして存在を確立している上、風味を損なわず舌触りは滑らか。女性だけではなく男性にもファンが着くじゃろう」
「わたしとしては焙じ茶や抹茶のロールケーキでしょうか。
それぞれの味が楽しめる上に経営者側としては切ってお出しするタイプは数がはけますし」
「私はあんみつがお勧めだな。
ほろ苦い抹茶寒天が餡子の甘さを引き立たせている。抹茶のソフトクリームが付けば尚良し」
「俺はナッツ入りのパウンドケーキの方が…」
「わたしは…」
緑茶の聖地とも呼べるいつもの喫茶店。品の良い飴色のアンティークが並ぶ店内には落ち着いた雰囲気とは対象的に皆様口々に白熱した議論が飛び交っております。
第9回緑茶の会を開催中です。
本日の議題は若い子にも緑茶の美味しさを知ってもらおう。
題して 【若い子を釣るにはスィーツじゃね?緑茶の甘い罠。これで君もハートキャッチ!】………このセンスは国特有なのか、たまたま特殊な感性の持ち主が続いたのか微妙です。
そして何気に怖くて誰が作った題なのか聞けない小心者の竜王。
もともと緑茶が人気がなかった背景には知名度が低い事や苦いや古いイメージがあります。そして皆さん入れ方を知らないのです。
王室御用達のお店で緑茶を見た時には感動しましたよ?飲んだお茶のど渋さに泣きそうになりましたが。
茶葉の量や蒸らし方一つで味が変わります。茶葉の入れ過ぎ蒸らし過ぎ。紅茶はもの凄く美味しかったのに緑茶はこの扱い。茶葉の量はこれ!っという固定観念の元、王室御用達のお店がこんな緑茶を出すのではど渋いイメージが嫌でも付きますよねぇ。
でもちゃんとした入れ方を知れば誰でも素人でもそれなりに美味しい味を楽しめる筈です。プロのマスターの入れるお茶はほのかな苦みと甘みで後味も素晴らしいのです。
緑茶のイメージを払拭しようと一度試飲会をしたのですが、しかし緑茶と聞くと皆さん犬猿しがちでしてあまり人が来ませんでした。
しかーし、それをきっかけに何人かは緑茶の会に入会してくれまして。念願の若い子も入りましたよ。6歳の渋い幼児ですが。
でもでも会員番号一桁には若い女性もいますし現在は3、40名ぐらいですね。ふふふ。この調子でどんどん信者を増やしますよ。
…………ん?
もしかして私一人で緑茶の会の平均年齢を無駄に上げてます?………イヤイヤイヤイヤ。私はまだピチピチなのです!き、気の所為です!えっとマスターが65歳で、、セシルさんが、、……や、止めましょう。考えたら負けです。
と、兎に角。どうアピールしようと悩む私達にマスターが、“甘いもので釣りましょう” 、とそれはそれはいい笑顔で提案されました。
そして今に至ります。
さて大人気なくお互い譲らずに主張し合い危うく掴み合いの喧嘩にまで発展しそうだった会議でしたが、(多分セシルさんの一人勝ち)リオ君の “ どれも美味しいのに一つだけなのですか?何で皆さん仲良くしないのですか? ”、の一言でピリピリと白熱した議論がピタリと止まりました。
そうですよね〜。どれも美味しいのなら全部出せばいいのですよね〜。
煩悩まみれの大人ですみません。流石はリオ君。菩薩の様です!
とりあえず非番の城の料理人達にレシピと引き換えに助っ人を頼むとして問題は場所ですね。
この喫茶店は落ち着いた隠れ家的なお店ですし、マスターも静かなお店の雰囲気を壊したくはないそうでして。
……流石にお城はマズイですよねぇ。
そこそこのスペースがある場所、何処にないでしょうか。
「……ここがうってつけの場所か」
「そ。売り子も確保出来るし〜、一石二鳥でしょ」
「ふふふ。孤児院が交流の場所のお役に立つのなら協力しますよ」
客間でコポコポお茶を入れながら目の前ではマザーさんがにこやかに笑いながら醤油煎餅をパリパリと齧りつつ温かい緑茶でまったりとしています。
くぅ。ここが縁側なら完璧ですのに。
個人的にも孤児院の方々には大変お世話になっているのですが、セシルさんは何とこの孤児院出身だそうでお互い驚きましたよ。
マザーさんは母親の様な人で今でも頭が上がらないの、と困り顔でしたが少し照れ臭そうでもありました。
「本当にセシリードは立派になったよ。
昔は、“ 天使の皮を被った破壊神 ” だの “ 孤児院に住み着く悪魔 ”と呼ばれていたこの子が騎士になると言った時にはどうなるかと思ったもんだがねぇ。
素行のよろしくない方達に喧嘩を売られれば返り討ちにし身ぐるみをはいだ後、裸のまま広場で晒し者にしたり、気絶させて縛ったまま真夜中の廃屋に放り込んで外で怪談話をして大の大人を本気泣させたり、そうそう。権力を笠に着た貴族には男色の噂を流して婚約を破談にした事もあったしねぇ。
それが騎士団長にまでなるなんて、長生きはするもんだ」
「嫌だ〜。昔のちょっとヤンチャしていた頃は言わないでちょうだい」
大きな樫の木のテーブルを囲み、ほほほ、うふふ、と優雅に微笑む院長と眉を下げ困り顔のセシルさん。傍目には他はおばあちゃんとお孫さんの和やかな雰囲気なのに話している内容がおかしいと思うのは私だけでしょうか?
………セシルさん。それってちょっと、ですか?
「リンちゃん、ありがとね」
ハチの背に乗っているリオ君の頭を撫でながらの帰り道。
夕日を背にした城に着くかという時にポツリとセシルさんが呟きました。
「何がだ?」
「孤児院の子供たちよ。みんなリンちゃんの話を楽しそうに目を輝かせて聞いていたわ。
マザーから食料を提供してもらっているとも聞いたし。金品だと変に勘ぐる連中もいるから助かるわ」
「僕も主様のお話大好きです!美味しそうなお話でした」
「ギャオス!」
マザーと話が終わった後、孤児院の子供たちにせがまれて話したアンパン男の仲間の食パン男の話は好評でございました。
食パンは此方にもあったので想像しやすかったらしく、太陽の熱で顔をトーストしペリッと剥がすくだりでは美味しそう派と顔を引きつらせる派に分かれましたが。
グリムな童話のお菓子の家話でも美味しそう派と最後に魔女を釜で煮てやっつけたぜ派に分かれましたが、これって情操教育的にどうなんでしょう?
因みに食料提供の件ですが、グミ、パン、卵に肉に、ジュース、チョコレートにキャンディは回復アイテムなのですよ。……すみません。ゲーム脳から卒業しますからもう少々お待ちください。
そんなに好意的に捉えられると私の良心がチクチクチクチク痛むのです。
「…買い過ぎただけだ(本当に)」
「それでも、よ。ありがとね(んも〜、照れ屋さんなんだから)
わかったわ。もうこの話はやめましょうね。
そうそう、あたしも今度いろんな話が聞きたいわ。あの魔女を煮た話なんて爽快だったわ〜」
煮るのが爽快ですか。意外と漢気があるセシルさんには、○○戦隊モノより必○仕事人や鬼○犯科帳モノが宜しいでしょうか?




