クリスマスは突然に ③
ま、間に合いました。……風邪を引き時間に追われながらペチペチ打っていました。
何はともあれ、
メリークリスマス!
吾輩、わ、す、れ、て、た ♫
ガキンチョの欲しい物を探すのをすっかり忘れ、清々しい労働に勤しんでいた。
クリスマスの前日の夜。つまりクリスマスイブの夜までに作業を終わらなければならず、昼から夕方にかけた限られた時間の中で袋詰めし、夕食後は疲れ果て直ぐに寝るを繰り返し当日もギリギリ夕方近くに終わった有様だった。
てへ♫
……スミマセン、スミマセン、スミマセン、スミマセン!!ど〜かこの前エメラルドドラゴン様にしていた忘れることの出来ないあの大技、フランケンシュタイナー。あの技だけは勘弁して下さい。あれヤられたら吾輩、確実に死にます。直ぐに復活したエメラルドドラゴン様が異常なだけです。
我輩、基本肉食なので狩をする。血やぐちょぐちょも平気な筈なのだが、あの時のスプラッタは今でも悪夢として時々魘される。
これはわが身の一大事、とご主人様の目の前で腹を見せ床を高速、いや限界を超えろ!光速ゴロゴローリングでお願いしてみれば、よしよしと頭を撫でてくれた。……よく分からんが我輩は助かったのか?
クリスマスイブ。
ガキンチョは真っ赤な服に手に持つ白い袋には沢山のプレゼント。我輩は真っ赤な作り物の鼻とひょろ長いツノを付けている。ガキンチョはサンタクロース。我輩はトナカイと言うサンタクロースの相棒の格好らしい。
クリスマス会場に入ると真っ先に目に入ってくるのは中心にある大きな木だ。
木には赤や青、金色のキラキラした丸い玉やめいど達の作った靴下やミニチュアのプレゼントの箱、それに魔法で作られた点滅する淡い光に照らし出されている木はキノコの森のにも負けてはおらんな。をを、ちんまりとした二頭身竜の人形も飾られてあるぞ。
会場全体は淡い光があちこちとっても綺麗だな。
しかし!何よりもご馳走だ!
この辺り一面に漂う美味そうな匂い!肉や魚、新鮮な果物や野菜、我輩の好きなタルトも山盛りだな。ベリーにリンゴにクリームに……じゅる…あそこの一画は全て我輩が貰った!
若干髪の毛の薄い国王の挨拶が終わり先ずは腹ごしらえだ。
グルメな我輩は魚は丸齧りなどせずにカルパッチョで食べるのだ。ムグムグ。チーズは青カビ……は苦手だが、ピザは大好きだぞ!
こっちローストビーフとかいうやつ美味いな!
そこあの肉は口の中で脂が溶けてジワジワと旨味が増しているぞ。この何かのネギのソースをつけると絶品だな!…え?犬猫にネギは駄目?我輩には関係無いのだが、あ、あ、ご主人様、そんな殺生な〜(泣)
軽く腹ごしらえが終わればガキンチョとプレゼント配りだ。
“サンタクロースさんの代わりにプレゼントを届けに来ました”、の言葉と共にプレゼントを渡すと感激に打ち震え失神する者(死んだか?)、滝のような涙を流し家宝にすると言う者(食え!)、息が荒い者(変態か!?)だの反応は様々だったが、まぁ好評だったな。
ご主人様からのプレゼントは大きなチーズスフレケーキというものだった。中央には砂糖で作った可愛い我輩とガキンチョがちょこんと乗っている。見た目は飾り気がないシンプルなものだが、あの味の濃いチーズが甘いのか?硬いのにケーキ?……!!う、美味い!硬くないぞ!柔らかくて口の中であっという間に溶けてなくなるようだ。ほんわか甘くて幸せになる味だった。
我輩、こんな美味い物がずっと食べれるのなら来来世まで服従を誓います。
お返しに一番でかいプレゼント(これ重要)を渡すと大変喜ばれ額にキスのプレゼントをくれたのだ!柔らかくっていい匂いなのだ。ぐふふ。
バキッ、バキバキ。バリバリッ
…………。
…我輩、何も見ていない。何も見ていない。凄まじい呪詛と殺気なんて我輩知らない。
ご主人様は兎も角、何も気付いていないガキンチョが心底羨ましい。
サンタクロースよ。我輩の安全もプレゼントに出来るのだろうか?
ほわほわクッションがたくさん入った我輩専用の寝床はいつもお日様の匂いがする我輩お気に入りなのだ。
ベッドの方を見るとガキンチョはご主人様の隣でもう寝息を立てている。今日一番頑張ったのはガキンチョだからな。
さぁ、美容と健康の為に我輩もおやすみなさい、だ。
…ふかふか…幸せだ。……。
………………
…………じゃないっ!!
い、いかん。いつもの習慣とは恐ろしい。我輩はサンタクロースにプレゼントを貰うのだった。
ふはは!我輩は今夜は寝らんぞ!
………ん?
…な、何か眠くなって、き…たぞ。…これは、、魔法…?
……ぐー。
ぱっちり目を開けた我輩の視界にはいつものふかふかクッション。いつの間にか寝てしまったようだ。
…ふむ。サンタクロースは凄腕の魔法使いだったのだな。我輩を眠らせるとは恐るべし。
大きく伸びをし背筋を引っ張ると右足、左足を伸ばしあくびを一つ。そして我輩やガキンチョを囲むようにある沢山のプレゼントの存在に気付いた。
な、何だ?こ、これは全部プレゼントなのか?サンタクロースは一人ではないのか?いや、その前にこれ全てガキンチョのプレゼントだったら我輩泣くぞ。泣いちゃうぞ。
あわあわしている我輩の気配に気付いたのかガキンチョが目を擦りながらモゾモゾと起き出して来た。
「おはようございます、ハチ。主様はもう起きちゃったんですね。………これプレゼントですか!?サンタクロースさんが来てくれたんですね!あ、サンタクロースさんからのカードがありますよ!」
なぬ!?カードとな?何と書いてあるんだ?我輩は字が読めんのだ。我輩のプレゼントもあるのか?
「え、っと…プ、プレゼント配り、のおてつだいありがとう。リオ君と、ハチのプレゼント、も、……です。ま……よ、よいこで…いてください…だって。これ全部僕とハチのプレゼントですよ!」
なぬ!?じゃあ我輩の周りにのは全部我輩の物か?
この服はあっちにあるガキンチョの物と一緒だな。色違いのお揃いだ。お、我輩の好きなタルトもあるぞ。こっちは我輩の凛々しい絵姿だな。爪研ぎと……向こうに生きているムームー羊が繋がれているが我輩の好きなモコモコ毛を堪能する為なのか食べていいのか判断に迷うな。
あ。
こ、これざっかやで見た丸くて金色で音が鳴るやつだ!サンタクロースは凄いな、我輩の欲しかったものが分かるのか。
「あ!!僕が欲しかったペンです!」
あちらの方でプレゼントの包み紙を開けていたガキンチョが驚きの声を上げた。
ペン?…そう言えばざっかやでガキンチョが青いペンをジッと見ていたな。あれが欲しかったのか。欲しいものが分かるなんてサンタクロースは本当に凄いな。………ん?つまりご主人様はプレゼント対決でサンタクロースに負けたという事か?我輩の所為で?
………。
「メリークリスマス。リオ、ハチ」
ギョェッ!!ご、ご、ご主人様!?
し、心臓が飛び出るかと思った!
「あ!メリークリスマスです、主様!見てください、サンタクロースさんがこんなにいっぱいプレゼントをくれたんです!」
「リオとハチはサンタクロースの手伝いをした上に、とてもいい子だからな。良かったな」
「それに僕が一番欲しかった青いペンをくれたんです!」
ぎゃああぁぁぁあっ!?
ガキンチョ!余計な事を言うな!!アワアワアワ、ワ、ワ、ワイロだ!ワイロワイロ。……少し、いやかなり惜しいがこの金色のを貢げば少しは怒りも収まるだろうか?
金色のを咥えご恐る恐る主人様の足元へ持って行くと、優しく頭を撫でてくれ懐から取り出した赤い紐を使い首にかけてくれた。
ボールぐらいの大きい金色のがチリンチリンと我輩の胸元で綺麗な音を鳴らせる。
「わ〜、ハチかっこいいです〜」
「この鈴はハチの為に作られたみたいに似合っているな」
これはスズと言うのか?あ、いやこれはご主人様への貢ぎ物で。……怒っていないようだしいいの、か?
…ふ、ふははは!我輩なんでも似合うぞ!かっこいいぞ!
我輩の尻尾がフリフリと動くのに合わせて鈴がリンリン鳴り、ガキンチョが青いペンを持ちながらご主人様に身振り手振りでサンタクロースがいかに凄いか伝えている。
めいどやきしの二人組や守護竜様たちもやって来た。
周りには沢山のプレゼントと沢山の笑い声。
体の奥がポカポカして来るのはどうしてだろう?
ふむ。我輩も挨拶し合う人間達に出遅れてはいかんな。
「ギャオース!!(メリークリスマス!!)」
おまけ。
しかしガキンチョがペンを欲しがるなんて意外だったな。普段からご主人様のきしになる!、と言っていたガキンチョが欲しがるのは剣とか武器だと思っていたのだが。
ジッと見つめる我輩の視線に気が付いたのかガキンチョは自慢気にペンを見せながら、
「サリーさんが “ ペンは剣よりも強し ” 、て言っていました。
僕は剣よりも強いこのペンで主様を守るんです!」
とペンを振りながら力強く言った。
ーーーーそれ、何か違わないか?
首を傾げる我輩の胸元で同意するかの様に金色の鈴が小さくチリン ッと鳴った。
リオとハチには常に精霊が着いていました。(笑)
活動報告に今書いている他小説の小話(会話のみ)を載せましたのでお暇な時にでも覗いて下さい。




