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クリスマスは突然に ①

一度くらいは季節物の小説を書いてみたい。

という事で書いてみました。

三話予定ですがこの師走の中、果たして間に合うのでしょうか?(−_−;)

吾輩は犬である。名前はハチ。


本当はもっと長い真名に加え種族も犬では無いのだが、ご主人様がハチと付けたので吾輩は犬のハチなのだ。

何でもご主人様を一途に慕い飼い主が亡くなった後も毎日帰りを待ちながら死んだ犬の名前だとか。うむ、吾輩にピッタリの名前だな。


どこで生れたのか見当がつかぬが、薄暗いじめじめした森でキャオーキャオーと泣いて居た事だけは記憶して居る。

弱肉強食の世界でいつの間にか森で頂点まで登り詰めた吾輩は、更なる強者を求め森を出た。


旅する先々で強者と戦いを繰り広げていたのだが少し疲れを覚えた吾輩は骨休目の為に都合のいい土地を探し、たどり着いた場所が人間達が墓場と呼ぶダンジョンだった。

ダンジョン内で襲いかかってくる有象無象を蹴散らし、最深部に居た鋭い爪を持つ吾輩の倍の大きさのビックベアーと死闘を制し、見事ダンジョンのボスになった。

今も背中に残る三本爪の傷は吾輩の勲章なのである。………毛に覆われて見えないが。



それから数十年、吾輩は完全な引きこもりになったのだった。

言い訳をさせて欲しい。雨露を凌げる上に魔力も充満しているダンジョン内はことの他居心地が良かったのだ。時折思い出したかの様に現れる人間やボスの座を狙う魔獣は吾輩の退屈凌ぎになった。こんな恵まれた環境でわざわざ外に出ようとは思わないではないか。



最深部でのんびり微睡みながら、そろそろ外に出てみようかと思い立った。元ボスのビックベアー以外ロクな連中も居らず吾輩の野生としての本能が戦いを求めていた。強者を倒した後のあの優越感と充実感は何者にも代え難い。


まあ、外に出たところで吾輩より強いものが居ればの話だがな。


ーーっと思っていた吾輩、すみません。ちょーしこいていました。申し訳ございません。


いや、そのくらいご主人様は次元が違ったのだ。

幼獣の頃は何回も死にかけた。強い敵など数え切れない程居たが吾輩の心は折れなかった。寧ろそれをバネにここまで強くなったと言える。


あの運命の日。

住処で微睡んでいた吾輩は久々に人間達がダンジョンに来たのは気配で分かっていたが、今回も期待外れだとがっかりしていた吾輩の肌が粟立った。

次に来た三人の人間達、いや一人は人間ではない。……竜種か?……………竜、王、、様?


あ、吾輩死んだ。


ダンジョン中の魔獣が逃げ出しまたは隠れる中で、吾輩は呆然としていた。戦う前に心がポッキリ折れたとも言う。

出来れば吾輩も逃げ出したかったがダンジョンの最深部は行き止まり。それでも悪足掻きで必死で隠れ場所を探していた時、遥か上の方にあった気配がいきなり最深部の扉の前に来た。

気が付けば部屋の隅でガクガク震えていた。

そして現れた圧倒的な存在感を持つ竜王様。あの澄んだ漆黒の瞳を見た瞬間、身体だけではなく魂まで服従を誓っていた。


余談だがご主人様お手製ベリータルトを食べた吾輩は来世まで服従を誓ったがな。






今の吾輩の生活は朝はご主人様に挨拶し朝食。昼はガキンチョを背中に乗せ散歩こもり

ご主人様達が昼食中、小型になった吾輩を抱き上げるメスのめいどとやらのぷよぷよのお胸を堪能しながら見る周りのオス共の嫉妬混じりの視線は、戦いの中で感じる以上の優越感と充実感だ。

ふふふ、羨ましかろう。羨ましかろう。これも吾輩の人徳というものだ。

あ、吾輩こっちのめいどのぷよぷよも好きだぞ。そっちのほわほわもまた良し!

……ゴホンッ。午後はりょうりちょーにオヤツを仕方無く貰い、仕方無くだぞ?夜は食事をした後フカフカのわたと言うものが入った柔らかいクッションに埋れながら就寝だ。

吾輩なかなかこの生活を気に入っている。




しかしここでの暮らしの中で、注意すべきことがある。


先ずは守護竜様達だ。

ご主人様の部下だが勿論吾輩よりも強い。そして心が狭い。ミジンコの触角よりも狭い。

四人は陰で吾輩の教育せんのうを始めたが、素早く危機を察知した吾輩は彼らの前に最終兵器ごしゅじんさまのしぶつを提供するとコロリと態度を変えた。

ある意味分かり易い方々である。



次にユニコーンのガキンチョ。

ガキンチョは弱い。吾輩の腕の一振りであっさりノックアウトする程弱いが、万が一実行した場合吾輩もノックアウトである。いや、それだけで済むかどうか。

このガキンチョに関しては吾輩の広い心で接しなければならない。……まあ、あの素直なところは好感が持てなくもないがな。



最後は人間。

当初、吾輩は人間になど媚は売らないのだ!っと思っていた。吾輩の強さをアピールする為と確固たる地位を確立する為、楽しそうにきし達をイジメ、いや訓練ちょうきょうしているオスなのにメスみたいな言葉を喋る人間に喧嘩を売ってみた。


あっさり負けた。


その辺の底辺でちょっと強かっただけなのに吾輩って凄くねぇ?とか恥ずかし過ぎる。生きていてすみません。

そうか、ダンジョンに来ていた人間は特別弱かったのだな。


他の人間に関しても吾輩の度量で特別に触れることを許している。

決してふわふわお胸やフルーツタルトや、柔らかい舌が蕩けるような肉に懐柔された訳では無いぞ。うん。

吾輩の広い心に感謝するがいい。





先程も言ったが吾輩は今の生活に概ね満足しているが、ご主人様。


「ハチ、もうすぐクリスマスだ。

是非ともリオの欲しいものを調べてほしい」



時折無茶を言うのは勘弁してください。





ハチは強いです。

Sランクが束になってギリギリ勝てるぐらい。

周りが異常なだけです。(笑)


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