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キノコの森へは突然に (夕方)

「主様〜!キノコがい〜っぱいですよ!!」


「ギャオス!」


私の目の前には無邪気にはしゃぐリオ君と忠け、忠獣ハチ。日が落ちかけ空は赤く染まり何処か哀愁を漂わせ頭の中では夕焼け小焼けの曲が流れる中、見渡す周囲一面に……キノコキノコキノコキノコキノコだらけ。白、茶、赤色からパッションピンク、スカイブルー、柄も単色、水玉模様、ストライプから千鳥格子までありとあらゆるキノコが勢揃い。

私は今、世界中のキノコが生息すると言われるキノコの森にきています。




今回の依頼は何処かの学者さんからで内容はキノコの森でなるべく珍しいキノコを採って来ること。

この森ちょっと奥に入るだけで新種がわんさかとか。

この依頼は上級ランク扱いで報酬は金貨15枚からで、キノコの種類により追加報酬有り。新種の場合はプラス金貨5枚。

キノコ狩りで上級ランク?と思っているそこの貴方。甘い、名物喉が焼ける程甘いキャンディより甘いです!

考えてもみて下さい。

キノコは胞子で発芽します。分かりましたか?そうです、見えないだけで周囲にはそこら中に怪しい胞子が沢山飛びまくっているのです。そんなキノコの森に入ろうものなら呼吸で空気と一緒に肺に胞子が入り込み菌糸が広がり発芽。

後はご想像通りで。


頭にキノコが生えたという笑い話から、菌糸が身体中に行き渡りキノコが皮膚を突き破ったり、身体の色が緑色に変色したり果ては性格が変わった者など洒落にならない、動物は元より魔獣さえも寄り付かない森なのです。

そんな森でも依頼が多いのは薬に使えるとか。確か地球でも冬虫夏草とかありましたね。

そして何より美味しいのです!

以前夕食に出された黒く焦げた焼きキノコだったのですが焦げが気にならないくらい美味しくて美味しくて。 “ はぁ?松茸おまえがキノコの王様クラスだぁ?はんっ、平民が。味も香りも俺の足下にも及ばねーぜ! ” 、なぐらい美味しかったのです。料理長が実物を見せてくれましたが、両手に抱えるほど大きい蛍光紫に発光するキノコを持って来たときには、いやこれ絶対毒キノコですよね!?、とドン引きしましたが、食感よし、噛めば噛むほどジューシー且つ味が出てくるので見た目は無視し、早速お吸い物や挽き肉の挟み揚げで美味しく頂きました。このキノコも20年前に森で発見され、今は人の手で栽培しているとか。

つまりまだまだ未知の美味しいキノコがあるという訳ですね?ふふふふふふ♫、キノコ鍋とか〜、直火焼きとか〜、カレーやスープに入れても良いし〜、忘れてはいけない土瓶蒸し!ああ、今夜はキノコパーティーですよ!!


はい、そうです。この依頼は依頼者の希望と私の食欲が一度に解決出来る、まさに一石二鳥なのです。


前回はダンジョンという危険な場所だったのでリオ君は連れて行けませんでしたが今回は魔獣も居ないキノコ狩りですから安心です。逆に人間であるジルさんとダンジュさんが危険ですので二人はお留守番になりました。

私達は人間ではありませんしそれなりに耐性もあります。いざとなればリオ君も居ますしね。ダンジュさんは残念そうにしていましたが、ジルさんが逆にお仕置きされる、自分の身が危ないと必死で訴えてきましたが、どうしてでしょう?






周囲の気温も下がりもうすぐ日が落ち夜になります。

昼間でも良かったのですが、このキノコの森が一番素晴らしい光景は夜。

闇夜に一斉に発光する様は表現できないぐらい美しく多少危険でも見る価値があるとか。住処を離れる前に精霊ちゃん達が言っていた光るキノコはこの森の事だったようです。とても楽しみですね。

夜通し見る予定なので野営グッズもバッチリです。

テントと夜食と飲み物にオヤツと忘れてはいけない調味料とキノコを焼く網。

誰が持つかですって?そこは我らのハチ。元の大きさに戻れば軽々と荷物と私達付きでここまであっという間でした。

風を切り走るハチの背の上ではしゃぐリオ君と心の中で大喜びの私。ゲーム!ビバ、ファンタジーの世界!いや〜楽しかったですよ。途中振り落とされそうになったのはご愛嬌でしたが。



半月前に飼い犬になったハチは、以前はダンジョンに住み着きボスにまでなった強い魔獣でしたが、何故か私に懐き離れようとしませんでした。

初めは突然現れた人間にビックリしたのか、尻尾を丸め怯えていましたが、此方に害する意思が無いと分かると様々な芸で私達を歓迎し楽しませてくれたのです。

しかしダンジョンのボスが芸達者とは驚きました。ジルさんは拍手喝采し、ダンジュさんは芸のクオリティーの高さに涙し、ついでにツノを自ら折り差し出して来るフレンドリーさでした。こんな魔獣も居るんですねぇ。



目的を果たしダンジョンを出ようとする私達の後を何処までも追いかけ、チラ見をすればコロンッとお腹を見せ、グルグル回り可愛らしさ?をアピールされ、……はい、絆されました。

だ、だって可愛いんですよ!?それなのに無視しろと?

体の大きさを調整できると知り、ヌイグルミサイズになってもらい捨て犬を拾った子供状態で、こっそり城に持ち帰った先でオカン、もとい守護竜達が仁王立ちし待ち構えておりましたが、次のハチの行動が凄かったです。

ピョンッと私の腕から飛び降りると何と守護竜達の目の前で無害アピールをし始めたのです。

自分より上位を瞬時に見極め即座にお腹を見せる、流れるような一連の動作はまさに芸術の域に達する素晴らしいものでした。

周囲も呆れ……コホコホ、これなら大丈夫と太鼓判を押し、今ではリオ君と並ぶ城のマスコットです。

私が一番懐かれている様で、次にはおそらく料理長でしょうか?知っていますよ、こっそりおやつを貰っている事を。メイドさんに抱っこされほわほわのお胸を堪能し、料理長の元へと行きおやつを強請る、実に平和な日々を送っているようです。





「主様、僕いーーっぱいキノコを採ってきますね」


「ギャオス!」


「リオもハチもありがとう。……ところで何故お前達がここにいるんだ?」




「え?僕は研究の材料を探しにきたんですよ」


ほう。たまたま私と同じ場所の同じ時間帯に来たと?



「あたしはこのガイドブックにある、死ぬまでに一度は見てみたい光景の上位に入っていたから観光ですよ」


ほう。まあ私も夜のキノコの森が目的ですが、貴女は後何百年も生きるんですよね?何故に今夜ですか?



「俺は訓練の為に此処まで来ただけです」


ほう。魔獣も居ないこの森で?キノコ相手に訓練をすると?



「私は仕事の息抜きです」


ほう。城から此処までどれくらいの距離があると思っているんですか?




………誰か、誰かツッコミ役を!

ジルさん、今こそ貴方のツッコミが欲しいです。





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