幕間は突然に 12
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いつも拙い文章を見て頂き、感謝の言葉もございません。m(_ _)m
今回は小話形式の、お礼、お祝い小説です。
それは清々しい朝の出来事。
珍しく真面目にしていた俺に罪は無い。
久々の一日休暇。
昨日残していた仕事を朝のうちに片付け午後はゆっくりしようと、長年愛用しているペンを手に黙々と書類を片付ける。
隊長程では無いが副隊長も役職柄それなりの量がある。嫌になるがやらなければ終わらない。
最後に自分のサインをして終了だ。顔を上げ時間を確認するとあまり得意ではないデスクワークだが思ったよりも早く終わっていた。
固まった体を伸ばすと、ポキポキと音が鳴りあくびを一つ。机の上のすっかり冷めてしまったお茶を飲み干した。
や〜っと終わったぜ。
ん〜、まだ昼には早いんだよな〜。今日は外に出てブラブラしながら何か食うかな。
今話題になっているコロッケもいいな。
ジルは机を片付け書類を提出し、裏庭を通りながら肉にするか魚にするか悩んでいると目の端にもの凄いスピードで通り過ぎようとした何かがクルリと此方に方向転換した。
……何だ?………アゼル様?って、何でこっちに来るんだ!?また厄介事か!?ヤバイ!来るな、あっち行けーっ!俺は休みなんだーっ!!
ジルの心の叫びも虚しく何かに追われた様な顔色が悪いアゼルが目の前に来た。
十中八九どころか100%彼の主に関することだろう。
「ジル、私は今から隠れます!我が主様が来られた際は私は向こうへ走って行ったと答えなさい」
「……今度は一体何をしたんですか?余計なお世話かも知れませんが、変に長引かせるより大人しく制裁を受けた方がいいと思いますよ」
「私も普段なら大人しく裁きを受けますよ。…先日の制裁で腰と首をやられてまして、まだ完治していません。今やられたらエメラルドドラゴンといえども確実に死にます」
「……なんつーか、先日にしろ今回にしろ、自業自得ですよね?」
「あなた私は上司ですよ?少しは敬いなさい。だいた、、ーーっ!?来ました!いいですか!?私は隠れますよ!居ませんよ!」
アゼルが素晴らしいスピードで近くの壁に身を隠したと同時に、リンが姿を見せた。
うあー。目がマジで怒ってるよ。……何したか知らないが、これって本調子でも確実に殺されるんじゃないか?
あ、こっちに気付いた。
ちょっ!?なんつー殺気だよ。自分に向けられてるんじゃ無いって分かってても体が震えるんっすけど。
「休暇中のところすまない。馬鹿はこちらに来たか?
ん?……なに、たいしたことでは無い。いい加減私の手で直接引導を渡してやろうと思ってな。
……さて、何処にいる?」
間違いなく周囲の温度が三度は下がった。微笑んだリン様は激レアなのに普段の無表情の方が安心するってどういうことだよ。
………マジで何やったんですか。アゼル様の生死はたいしたことないって言われてますよ〜。
正直アゼル様とリン様、というか人を天秤にかけた際、どちらに比重が傾くかは日頃の行いと権力だと思う。
あ、間違いなくリン様だ。
アゼル様スミマセン。
何より俺、自分が一番可愛いです。どちらにしろリン様を怒らせた時点でアゼル様の運命は決まっていたんですよ。
短い付き合いだった、と心の中で手を合わせながら、目線だけ斜め後ろにある壁の方を向けるとリン様は心得たとばかりに壁に向かって歩いて行く。
せめて最後を目に焼き付けようと事の成り行きを見守っていた俺の目に、リン様が背負っていた暗雲が雲の切れ間から光が見えたかの様にサァッと消えていく。
怒りが消えた?何が起こったんだ?好奇心で近づき見たものは。
………アゼル様?
緑色に輝く鱗を持った二頭身竜がチョコンと首を傾げていた。
…………何故だろう?
前に見たリン様と同じくらいの大きさ、少し細身だが丸みを帯びた体付き、見た目は大変愛らしい筈なのにリン様の時に感じた吐血するほどのトキメキを感じないどころか、計算され尽くしたあざとさを感じるのは?
しかしながらリン様には有効だったようだ。
無表情ながら周囲がピンクオーラに変わったリン様がゆっくりとアゼル様を抱き上げる。
ジッと見つめた後、頭をスリスリと撫でる手は優しい。
俺は初めてリン様がアゼル様に優しくしているのを見た気がする。
「……我が主様、怒っておられますか?」
うるうるうる。
「…………今回だけだぞ」
「我が主様大好きです!」
「チョロッ!?リン様チョロ過ぎますっ!つーかアゼル様の斜めに首を傾げる仕草があざと過ぎて寒気がしますって。見て下さいよこの鳥肌!」
………ひえっ!…はいはい。これ以上何も言いませんからリン様にバレない角度で睨まないで下さいって。
………ストレス解消食べ物ってカルシウムだっけか?
今日は魚にしよう。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
それはポカポカ陽気の午後の出来事。
「あ」
メイドさんに結んで貰った緑色のリボンが木の枝に引っかかり解けてしまいました。
リボンもいいですが解けやすいんですよね。
「バレッタが欲しいな」
「バレッタ?」
冷たい緑茶でまったりティータイムをしていた相方、セシルさんが首を傾げながら訪ねてきます。
この世界の男性は何故に女子も真っ青な色気を出しているんですかね?うう、キラキラオーラが私には眩し過ぎます。
説明は苦手なのですが、バレッタとは金属や木や革で作った物の裏側に髪をはさんで固定するためのバネとかの金具が取り付けられていて、バネの強い力で髪を固定することができるようになっています。 表側にはキラキラした石を取り付けたり表面を彫ったりオシャレと実用面でも大変優れた小物なのでございます。
因みに私は細長い三角形みたいな長い爪みたいな横から挟む奴が使いやすくて好きです。
私の拙い説明でしたがセシルさんは理解した上、何と作ってあげようかと男前な事を言ってくれました。
【ちょ〜っと待ったですの!
その素材はユグドラシルじゃないと駄目ですの!断固反対ですの!ユグドラシルがいるのに浮気するんですの!?】
ユグドラシルちゃん乱入。
さその辺りの木を見繕っていたところ嫉妬されました。カワユスです。
いやいや、樹精ちゃんではユグドラシルちゃん一筋ですとも。傷など付けたくない事を伝えれば満面の笑みで大丈夫と太鼓判を押してくれました。
ユグドラシルちゃん自ら上から落とした枝は丈夫で太さも丁度いい感じらしく早速セシルさんが削り始めます。
「器用だな」
「ふふ、ありがと。小さい頃は欲しいのは自分で作らなくちゃいけなかったからね〜。手先も器用になるわよ」
「そうなのか?」
「言ってなかったかしら?あたし孤児院出身なの。だから欲しいのは作るか近所の悪ガキどもから分捕るしかなかったのよね〜」
………聞いていません。今重い話をサラリと言いましたが、悪ガキどもから分捕るの方が気になるのは何故でしょうか?
「そうか。どうやって分捕ったか気にはなるところだが。
…それにしても上手いな。騎士を辞めても職人でやっていけそうだな」
「あら?いいわね。アタシが作ってリンちゃんが売り子さんならお客もたくさん来るわね」
いえセシルさんの方が来ると思います。
「綺麗だな」
【花と葉っぱの模様が細かくて綺麗ですの〜。これユグドラシルですの】
出来上がったバレッタはニスの様なものを塗った明るい木目の表面に、ユグドラシルちゃんの花と葉がセンス良く彫られとても素人が作ったとは思えない出来栄えです。
「…こんな素敵なものを本当に貰ってもいいのか?」
「大した物じゃないわ。それにリンちゃんの為に作ったんだもの。貰ってちょうだい。
ほら、付けてみて。……ん。似合うわね」
【主様の黒い髪に似合いますの〜。だってユグドラシルのですもの〜】
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。リンちゃんが喜んでくれてアタシも嬉しいわ」
そう言ってセシルさんの手が髪留めを確認しながら髪を優しく撫でてくれました。
ふふ。何か嬉しいですね。
そういえば同族以外では初めて男性から貰い物をしてしまいました。
ふふふふふふ。顔がにやけてしまいます。セシルさんの手作りですかー。そうですかー。ふふふ。
「バレッタはオシャレと実用性だったわよね?髪留めになるし〜、不審者が襲ってきたら、武器にもなるのよ」
ーーーん?
「魔法で強度アップしているから剣戟も平気で受け止められるし〜、そこらの鎧なんかさっくり簡単に貫くわよ〜。
ユグちゃんのおかげでちょっとした魔法剣並みね」
【わ〜い。お役に立ったですの〜】
グッと親指を立てるセシルさん。
………どうやら私はバレッタ兼暗器を作って貰ったようです。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
それは就寝前の夜の出来事。
おーっほっほっほっほっ!我が主のお世話係の時も思ったけど、アタシは声を大にして言いたいね。
雌に生まれてほんっっっとおぉに良かった!!
「……何故こうなった?」
我が主がベッドの上で呟かれた。右にアタシ、真ん中に我が主様、左にユニコーンの坊や。
これが有名なカワノジって言う並びらしいね。何でも三人で寝る時の由緒正しい寝方だとか。
本当は子供や一番背の低い奴が真ん中に寝るらしいけどアタシと坊やが我が主の隣を譲らず結局こんな形になっちまったよ。
「我が主、これは運命です。今夜はガールズトークです。パジャマパーティーですよ」
「レイラ様。僕、雄です」
アタシと我が主様とプラス1。
まあアタシは他の奴らと違って心が広いからね。坊やも一緒に寝ることを許可してあげようかねぇ。
それにしても我が主がアタシと一緒に寝ると知った時の他の三人のあの顔!この世の終わりみたいな絶望した顔!クックック。今思い出しても笑が出てくるよ!
未婚前の雌と共寝なんて出来るわけ無いのに、押し掛けた奴らを重力魔法で潰した我が主の手並みには惚れ惚れするねぇ。
それに………。
………一時間ばかり賛辞と思い出し笑いしていたら二人とも寝ていたわ。アタシの夢のガールズトークが。(泣)
引っ付いて寝る坊やを引き離したい衝動にかられるが我慢する。
……何か姉弟にも親子にも見えるねぇ。
こうして見ると二人とも見目麗しく目の保養だけれども、我が主の事を思うと少し切なくなる。
竜王は親兄弟はいない。
何故なら竜の聖域にある創生神の祭壇に、ある日前触れもなく卵が出現するからだ。ある意味創生神が親とも言えるかも知れない。
そして他の竜王に子を成したという記録も無ければ血統もいない。
記録では番いを大事にする竜種には珍しく、二代目は相当の遊び人だったようで、何匹も番いがいたと記されているが子供は産まれなかったようだ。
血を繋ぐ事は種の本能だが、創生神から産まれてくる竜王には必要性が無いからだと考えられている。
まあ、当代の竜王は何もかも規格外れだからねぇ。何が起こるか想像もつかない。
つらつら考えていても先の未来の事なんで誰もわからないんだ。その時はその時考えればいいさね。
ばっさりと思考を断ち切り今は200振りの主を堪能しようと、その背中に寄り添い目を閉じた。
今夜みる夢はきっとしあわせ。
おやすみなさい。




