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幕間は突然に ⑩

遅くなりました。m(_ _)m

ガイラル視点が書きにくかったのと、またもや体調を崩した上に突発的に京都旅行に行き

『待ってろよ、伏見稲荷!千本鳥居を制覇してやるぜ!』

更に体調を悪化させた愚か者です。



俺の名はガイラル。

北の守護を任されているサファイアドラゴンだ。




我が主が森から出たという報告に守護竜並びに竜種全てが狂喜乱舞したが無理も無い。何せ200年振りだ。

人間達の身勝手な理由から我が主を煩わせた事には怒りを覚えたが、森から出るきっかけにはなったので一応は傍観することに決めた。無論二度目は無い。



我が主がいつでもお起こし頂いてもかまわないよう、次の日から部屋の準備に取り掛かる。

南の希少な香木を使った天蓋付きのベッド。布団も勿論ムームー羊の毛をふんだんに使った一品だ。

床には極彩色が美しいペシャメ織りの絨毯。この大きさの物になると国家予算の半分ほどの値段だがいい買い物をした。

幸いなことに北は鉱石の産地でもある。

朝一番に王室御用達の宝石商を呼び、最高品質で大ぶりの宝石を幾つかと小さいがカッティングが素晴らしい無数の宝石が目に留まったのでそれらは部屋全体に散りばめた。我が主の漆黒の髪に似合うドレスは厳選したがそれでも20着以上はある。ふっ、何でも似合う罪なお方だ。

しかし他の守護竜達も同じく迎える準備をする事は予想していたが、里の各部族も同じく飾り立てていると聞いた時は苦笑したものだ。




来ない。

待てど暮らせど来ない。

いや理由は分かっている、アゼルだ。

どうせあの手この手で我が主を引き止めているのだろう。俺達の中で一番智謀に長けその策の殆どが敵に回したくないと味方が引くえげつないものばかりだ。唯一張れるのはルトぐらいのものだが、如何せん経験値が足りない。

下手に手出しも出来ず、嫌がらせに奴に書類を送り続ける日々の中で苛立ちが積っていった。





そんなある日シャリーズ国で国主催の宝探しゲームを開催する報告が挙がった。

参加者は基本自国の民だけだが、特例として冒険者は認めるとある。

……昔、興味本位で別人に成りすましギルドカードを取得したな。

そしてフッと思った。我が主からは待機命令が出ているが、一個人、冒険者として出場するのは命令違反には当たらないのではないだろうか?きっとそうだ、そうに違い無い。

それからは早かった。保管庫から100年前に登録したギルドカードを探し出し急ぎの仕事を片付け彼の国へと急いだ。






遠目で見る我が主は大変お麗しく〜(20分経過)〜例え王族席の後ろに居られても〜(10分経過)……おや?いつの間に開会式が終わっていたのだろうか?


しかし遠目だが我が主にお会いし、気持ちに余裕が出来た今なら分かる。大臣達の髪が薄くなったのも、国王のベルが激ヤセしたのも、補佐官達が軒並み暗い顔でブツブツと呟くようになったのも俺が原因ではなかろうか?幸いな事にこの国は医療大国だ。もしそうならば詫びに毛生え薬や栄養剤を送ってやろう。






午前の子供の部。

良心が痛まない訳でも無かったが己の使命コレクションの為、姿を変え出場し見事我が主のお手製の宝を獲得した。

交換に応じてくれた彼らは孤児院の子供達だったな。この折紙たからに見合う物は流石に用意出来ないが今度出来る限りの礼をしなければ。





午後の部開始後、何とは無しに辺りをうろついていたが城の方角がどうも気になる。……城門は開放されている上に一部行動可能エリアに掛かっているか。昔からレイラ達から詐欺だのいいとこ取りだの言われるが、昔からこういった勘は外れた事が無い。



開け放たれた城門をくぐり抜けそこに見知った顔に会った。

シャリーズ国前騎士団長セシリード。遠くはルビードラゴンの血を引き我らにも劣らぬ美貌と身体能力を持っているが何故か女性言葉の個性的な人物だ。




バレた。我が主に正体がバレた。

最早どう足掻いても制裁せっかんは避けられないだろう。

どうせ受けるのならばせめて我が主の宝箱を見つけなければ割に合わない。それに我が主がこの男に目をかけているようだが、昔からよく言われているではないか。出る釘は存在が埋れて見えなくなるか、折れるまで打ち続けろ、と。




守護竜同士でも手合わせもしているが、それぞれの武器えものが違う為、剣でこの様に撃ち合う事は殆どない。ーー楽しい。久しく覚えていなかった湧き上がるような歓喜。

一族にも此処まで俺と打ち合える者はそうそういない。スピードが加速し剣戟が増す中、セシリードにも同様の笑みが浮かんでいる。剣同士がぶつかり合い衝撃波が巻き起こり、何方もまともに入ればタダではすまない戦いの中、樹精の悲鳴が上がった。

思わずお互い距離を取り樹精の方を振り向くが地中を凝視している?


ーー地中?


下に意識を向けた瞬間、俺達が立っていた場所から銀色の川が吹き上がった。咄嗟に地面に転がりすぐさま体勢を立て直して見たもの。


ーー川?違う、あれは糸だ。


川と見間違うほどの束になった銀色の糸が近くの木に巻きつき、いとも簡単にへし折るとそのまま地中へと引き摺り込んだ。



背筋に汗が伝う。

何なのだあれは?


【あ、あれユグドラシルを捕まえた嫌な物ですの!ぐるぐるになって操られるですの!!】


樹精を捕らえた?……そう言えばアゼルから調査依頼が来ていたな。何か私物を盗られたとかで持っただけで呪われそうな、呪詛と怨念に満ちた依頼書だったが、………。



「…魔力パターンはほぼ一致するが完全ではない。おそらく自分をモデルにした分身だな」



俺も文献でしか見た事がない禁呪の中でもトップクラスのものだ。里長や守護竜ならもしかしたら出来る可能性はあるが、考えても見ろ。自分の分身は間違いなく我が主に付き纏うハズだ。創造主には絶対服従らしいが、自分の分身だぞ?上手く制約を潜り抜け下手したら殺し合いに発展する危険もある。ただでさえ周囲が鬱陶しいのに更に自分から厄介事を増やす気は更々ない。


つらつらと考えている傍から攻撃が来る。一体しかいないのか同時攻撃は出来ないのか攻撃が単調なので不意を付かれない限り除けるのに問題ない。

しかし樹精を狙っていると思ったが攻撃で離されるどころか逆に近づいている。

その意図は?離された方角には?



「ーーっ!!セシリード、宝箱だ!奴は宝箱を狙っている!」



俺の声に茂みに近い位置に居たセシリードが走り出す。

言語も理解出来るのか、同時に茂みから銀色の糸が吹き上がり宝箱が巻き込まれた。

衝撃で開く蓋から手のひらサイズの黒く光るものが零れ落ちる。

……鱗?……我が主の鱗か!?な、何てものを入れておられるのですかーっ!??

糸を剣で薙ぎ払いながらセシリードがジャンプし、ギリギリのところで鱗を掴むが空中で体勢が整わないところを再度糸が襲いかかる、が。



「ガイラル!?」


ギリギリのところで体を割り込む事に成功する。

全身に糸が巻き付き凄まじい力で締め付けられるが圧死させるつもりなのか。

ぐっ、こ、れはなかりキツイ。あの大きな幹が飴細工の様に簡単にへし折られるのも頷けるが、残念だったな。せめて俺が唯の竜種ならば可能だっただろうが相手が悪かったな。


目を閉じ、人化の術を解くと同時に広がる殻から出るような解放感。

ブチブチと糸が千切れる音と共に体の自由を取り戻す。目立たない様、また直ぐに人化の術を掛ける途中また糸が襲ってきたが、左手の一振りで切り裂く。

俺の魔力に反応したのか次々に攻撃を仕掛けてくるが、不意にそれがピタリと止んだ。

まるで何かから隠れるように。


そして現れた懐かしく愛おしい気配。



「わ、我が主!?」


そこには200年振りに間近でお会いする我が主が艶めく漆黒の髪を緑色のリボンで結い上げ(青の方が最も似合うと思うが)静かな目で此方を見ておられた。



☆□*★%!!

……いかん、歓喜で一瞬意識が飛んでしまった。一番の従者であるこの俺が全く情けない。頼れる姿を見せなければ。



「我が主、お久しぶりにございます。200年振りにお姿を拝見出来たこと、このガイラル望外の喜びでございます」


「……言いたいことは山ほどあるが今はそれどころでは無いな」


俺もお会い出来なかった200年分山ほど話したい事がある。しかし今はその時では無い。


「そうです!ここは危険です、お下がりください」


「全て分かっている」


「!流石は我が主様。素晴らしいご推察です」



流石は我が主だ。

周囲と魔力残滓から状況判断したのだろう。

しかしまだ敵は地中深く潜っており迂闊に手出しが出来なかったがどうなされるのだろうか?

ーーーー!!

途方もない魔力にぶわりと全身があわだつ。体が硬直し指一本動かせない中、無慈悲で残酷なまでの圧倒的な魔力の奔流が地中深く潜んでいた異形を跡形もなく消滅させた。


魔力の余波に充てられ自分の呼吸すらも止まっていたのに気付き深く息を吐いた。

全く相変わらず出鱈目な魔力だ。




「モ、モグラの駆除も終わったな」


「…モグラ、ですか?」


「ああ、モグラだ」


ああ、そうか我が主はいたずらに周囲に不安を与えないようにするおつもりか。

人間達にまで心を砕くとは何と素晴らしく心優しいお方だろう。



「……そうですね、モグラでしたね。完璧に駆除されたようです。流石は我が主」


「さて、このままという訳にもいかないだろうな。また次が来ないとも限らないしな」



おお、アフターケアもされるのですか?完璧な我が主だ。







目を見開くと其処には一面に赤い花が咲き乱れ、息を飲むような幻想的な風景が広がっていた。



「……リンちゃん、この花は?」


セシリードがかすれた声で問い掛ける。

息を飲むほどに美しく目が惹きつけられるのに切なくなるような不思議な花。

ここは我が主の魔力で生み出された花を使った強固な結界に覆われており、地中まで魔力が行き渡っている。例え花が枯れても結界の効力が失われる事は無い、この庭は世界で一番安全な場所だろう。



「ん?彼岸花とも曼珠沙華とも呼ばれる花だ。

いろいろな別名があるが死を悼む花とも言われているな。美しく妖艶だろう?」


そう言いながら微笑まれた我が主に俺は言いようのない不安を覚えた。

死を悼む花。先ほど消滅したあの化け物の為の花なのだろうか。

一輪手折り花を見つめる我が主はこの赫い花に溶け込むような、目を離した一瞬に居なくなるのではと思う程に儚く見えた。思わず一歩踏み出しかけた足が止まる。……この馴染みのある気配は。





「ルト!早くしなさい!今撮らずにいつ撮るんですか!?今でしょう!!」


「無茶言わないでよ〜、これまだ試作品だよ?」


「ああ、赤い花に囲まれ儚く美しい我が主!絵になるじゃないか〜。ルト、早くそのポンコツ何とかしな!」


「ポンコツとは何だよ!これは始まりの書物から僕が作り出した見た映像を絵に残すという画期的な物なんだからね!」


「動かないなら唯のポンコツさね。早くしないと、、、あ」


「………は、はははは。我が主様」


「……お前達は一体何をしているんだ」



本当にこそこそと一体何をしているのだ。俺は同じ守護竜として恥ずかしく思うぞ。うむ。

すると我が主がアゼルに向かって歩いて行く。



「…アゼル」


普段無表情に近い我が主がアゼルに微笑まれたがこれはーーー。



「ちょっ!?リンちゃん!?っておい!てめぇ、ガイラル離しゃがれ!」




慌てて我が主を止めようとするセシリードの肩を掴み注意を促す。隣ではルトがレイラを止めているがよく見ろ。俺も止めに入る寸前だったのは棚に上げるが。

我が主は見た目は女神の如く微笑んでいるが目が笑っていない。寧ろ闘神?殺る気が漲っているのは見てわかるだろう。現に。



バキバキボキッ



何処ぞの骨が折れる様な音と断末魔が響き渡った。

密着した状態に対し蕩けるような恍惚な表情で、しかし口からは恐ろしい悲鳴が上がるこの違和感。まるで恐怖映像のようだ。幼竜達には絶対に見せられない。



物理的にあり得ない曲がり方をしたアゼルを放置し我が主の元へと駆け寄った。



ああ、我が主のお傍にいるだけで心が満たされる。守護や国なんかどうでもいい。

俺はもう二度と貴女様の傍から離れませんから。覚悟して下さい。





布団の中でペチペチ打っていたものなので、後日、加筆修正するかもです。

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