謝罪は突然に
「お前の名は?」
本当は“お名前を教えて頂けますか?”とユニコーンちゃんに聞きたいんですよ(泣)
この口が憎らしい。
『僕はマーリオットと言います、主様』
「ではマ…いやリオと呼ぼうか、今から翻訳と守護魔法をかける、此方においで」
「は…はい」
一瞬ヒゲの生えた某ゲームキャラの名前を愛称に付けてしまいそうになりましたが、グッと堪えてみせますよ。
トコトコと此方に来るリオの額の角に手を伸ばし魔法を掛けていきます。
周囲にいる精霊達も勝手に角に祝福を与えていましたが…見えないからといって自由過ぎますよ貴方達。
まあ、害は無いので無視してますが。
貰える物は貰っておいた方がいいんです。
「これでいいな。
状況を説明するぞ。
西にあるシャリーズ国の王妃が半年前に原因不明の眠りについた。
怪我も病でもないらしく、薬草も治癒魔法も効かない。
そこで一縷の望みを掛けてお前を探しに来たらしい。
治癒においてユニコーンの右に出る者はいないからな。
ーーリオお前はどうしたい?こいつらを追い返したいか?仕返ししたいか?それとも助けてやりたいか?」
「…別に仕返しとかはいいです。王妃様を助けたいとも思うけど人間ばかりのお外は怖いし、…死んじゃうのも怖いです」
リオは俯きながら答えました。
誰だって死ぬのは怖いです、まして赤の他人の為になんて。
脳筋隊は絶句していますね。ユニコーンの声が急に聞こえ尚且つ、怖いとプルプル震えながら答えるその姿は、彼等の罪悪感をガスガスと抉っている事でしょう。
彼らに聞こえるよう、わざわざ翻訳魔法を掛けた甲斐がありました。
うふふ。
「ーードラゴン様、すみませんが我々の魔法を解除しては頂けませんか?
勿論攻撃も逃走もしないとお約束致します」
全員が訴えかけるように此方を見ています。
ふむ、嘘は言っていないようですね。
ーーー。
目を閉じ重力魔法を消します。
彼らは相当キツかったのかフラフラしながら立ち上がると、
「「「「 申し訳ありませんでした!!! 」」」」
全員深々と頭を下げた。
いきなりの事にリオの目が真ん丸ですね。
「自分達の事しか考えていなかった自分が恥ずかしい」
「許して貰えるかはともかく、謝罪はさせて下さい」
「追いかけ回して怖かっただろう?」
「そちら側のゴブリン達も済まなかった」
次々に謝罪の声が上がります。
クール系の隊と思いきや、熱血スポ根系だったんですね。
いきなりの謝罪ですがリオ君、そんなに大きく瞼をを開いていたら目が零れてしまいますよ(笑)
まあ、下手な言い訳をされるよりストレートな謝罪の方が好感が持てます。
「僕、怒ってないし、他の皆も大丈夫だよ。えっと…こんな時って、許しますとか言えばいいのかな?」
コテン、と首を傾げます。
「「「「 うおおおっっっ!!!」」」」
更に一際高い歓声が上がりました。
「俺は何て酷い奴なんだ!こんなにも清らかな生き物を捉えようとしていたなんて!」
「あの清らかな瞳を真っ直ぐに見れない自分が汚らわしい!」
「ぐおぉぉ!俺という奴は〜〜!」
ある人は頭を抱え、またある人は木にガンガンと頭を打ち付けています。
…冷静に見たらこれって怖い光景ですよ。
飴と鞭の使い分けのおかげか、ユニコーンちゃんの可愛らしさを分かってくれて嬉しいのですが、先程ワタクシ罪悪感をガスガス削り過ぎましたか?
鬱陶しいこと、この上ないんですが。