目先の罠は突然に
いつも見ていただきありがとうございます。
気が付けばお気に入りやらアクセス数やら驚いています。
お礼小説は何がいいのでしょうか?悩みます。_φ( ̄ー ̄ )
悲鳴と怒号が飛び交う中、切り替えの早い方々はすぐさま会場を飛び出し別の宝箱を探しに行きますが、全ての宝箱を確認しなければならない隊員さん達はそうもいかず頭脳派の魔法使いさん達を中心にシオル隊長以下数名が問題に挑戦し、他は外へと飛び出しました。
大人の部は三時間ですからね。体力と集中力も必要になりますよ。
先頭をきって大通りを走るのは冒険者ギルドで見かけた事がありますね。確かBランクの方でした。
彼が爆走するその道の先、宝箱がポツンと置かれているのを発見すると、ダンジュさんにも引けを取らない筋肉を躍動させ更にスピードをあげました。
二位、三位に続く方達も負けてはいません。
抜きつ抜かれつ白熱したバトル!盛り上がる 大胸筋!躍動感溢れる上腕二頭筋!凄い、凄いスピードです!おっと?Bさんが頭一つ抜けたー!もう宝箱は目の前ですよ!後三メートル、二、一、ゴーーールゥうう!!??
き、消えたー!?選手が消えました!??
会場内から驚きの声が飛び交う中、続く二位、三位も消えました。………落とし穴?まさかのトラップ!?
「あらあら?目の前の宝に目が眩み警戒を怠るなんて、まだまだですわね」
……王妃様の用意した物でしたか。宝箱自体に罠を仕掛けるのは禁止されていますが、周りに罠を仕掛けるのは禁止されてはいません。が、その何と言うか…すみません。えげつないです(汗)
ダンジョン内ではあるまいし、目の前に宝箱があったら普通飛びつきますよね?人の深層心理をついた恐ろしい罠です。
顔を引きつらせた国王様の横でコロコロと少女のように笑う王妃様とトルティールちゃん。トルティールちゃんは王妃様の精霊ちゃんの名前です。二人?仲良く笑う姿は大変可愛らしく眼福なのですが、内容がえげつない。ロウカ王子との血の繋がりをハッキリ感じました。
粗方罠が無くなった落とし穴トラップを避け宝箱をゲットしたのは荒事とは無関係の花屋さん。棚ぼた的幸運の持ち主です。因みにお宝はいきなり大当たり。ネタばれされていた、ダイヤモンドとエメラルドのネックレスでした。奥様に贈られるそうですよ。
むむ、こちらの映像では何か不穏な空気ですね。
「なあ、どうせ一人一人監視するなんて出来やしねぇんだ。俺と組まないか?」
柄の悪そうな頬に大きなキズがある方が同じ所を探していた人に声をかけました。強そうな人を仲間に入れたかったのでしょうが馬鹿ですね。その方、国の騎士隊長です。
「……貴殿はこの国は初めてか?」
「おう!元々西南辺りで稼いでいたんだが、今回ゲームみたいなお遊びで簡単に稼げると聞いて初めて来たんだ」
…何も知らないとは幸せなのか不幸なのか。ふふふ。最早私が最初に提案した 《皆で仲良く楽しめるゲーム》 からは遠い代物に成り果てたのですよ。
ダイス隊長も同じ事を思ったのでしょう、哀れんだ目で彼を見ると口を開きました。
「知らぬようだから忠告しておくが、この国の住人や関係者はアゼル様には絶対に逆らわない。まして今回は王子と団長まで加わっている。彼らを敵にまわすぐらいなら俺は、その辺りに落ちている棒切れで魔獣や魔王に立ち向かった方が余程マシだ。貴殿もおかしな事は考えない方がいい。あの罰則はただの脅しでは無い」
「はっ!臆病風に吹かれたか。第一あんなの人間のすることじゃねぇ。あんな罰則にビビるなんざ、とんだ見込み違いだったぜ」
いえ、確実に執行されます。ダイス隊長の心の底からの忠告に、キズ男さんは馬鹿にしたように吐き捨てました。
「そう思ってくれても構わない。だが、会場内にあったあの問題を見て何も感じない方がおかしいと思うがな」
「何だと!?バカにしてるのか!」
「はーい。イベント中は争い事は禁止ですよー」
いきり立つキズ男さんに警備兼監視員から注意が入ります。
失格は流石に嫌なのか大人しく引き下がりましたが、ダイス隊長を睨んでいるのを見るとまた一悶着有りそうですね。要注意人物です。
それよりロウカ王子の“ あの程度の罰則は生ぬるかったと言う事でしょうか? ”と言っていましたが、何も知らない人が冗談又は脅しと思うくらい人でなしの罰則なんですからね?勘違いしないように。
会場内からお嬢様方の声援が起こりました。あ、シオル隊長が動き始めましたよ。あの鬼畜問題を解いたのですか?紙とペンを手に一歩一歩数えながら東に向かい歩き始めましたが、万歩計を持っているならともかくとして、地味にキツいです。静かに自分と戦うシオル隊長に会場内の皆さんも地味すぎて何となく目が離せません。
よし!ここからは大盤振る舞いで、精霊ちゃん一人を付け独占映像を流しましょう。
さてさて、ジルさんがいました。
おー、四人の混戦模様ですか。相手の剣撃を逆手に持った剣で横に逸らし、そのままバックステップで大きく距離をとると、その勢いのまま何と斜め後ろで別の選手達が戦っていたところに乱入し、先ずジルさんに背中を向けていた選手を剣の柄頭で昏倒させ、思わず動きを止めた相手の選手との距離を一瞬で詰めると殴り飛ばし地面に沈めました。
凄いです!流石は副隊長!いつも飄々としつつも苦労人オーラが出ている人とは思えないぐらいかっこいいです。
最初に切り結んでいた選手を余裕で沈めると周囲の観客や会場内から拍手と歓声があがります。宝箱に近づき中身はーー?
紙切れ一枚ですか?………ん?
画面に映るジルさんが紙を持つ手を震わせ叫んでいました。
「………ここに来るまで下には槍付きの落とし穴、横から矢が飛んで来る、上からおかしなネバネバの液体が降ってくるわ、下手なダンジョンよりよっぽど危険な罠を抜けて来て、どんだけ凄いお宝かと思ってたら、、、まさか似顔絵ってコレかよーーーっ!?そして何でコレ引き当てるかな俺ーーーっ!!」
似顔絵?えっと、確か噂では二頭身が衝撃過ぎて城の機能が一時ストップしたぐらい凄い絵でしたか?
「アゼル様ーッ!何で俺がアンタに献上した似顔絵が入ってるんですか!?苦悶の表情浮かべながら宝箱に何か入れていたのは知ってましたけど、何でコレクション入れてるんですか!?自分的大盤振る舞いは良いですけど、普通の人間はこれの価値、分かりませんからね!?聞いてます?聞いてるんですかー!」
お怒りモードでその辺りににいるであろう精霊ちゃんに向かって指を差すジルさんですが、精霊ちゃんは貴方の後ろです。
はて、あまり良い予感はしませんが、アゼルさんの宝箱ですか?似顔絵?………見覚えがあり過ぎるその紙には、初めてセシルさんに会った時に私が描いた彼の似顔絵が何故、宝箱に?
ギギギ、と軋んだ動きで横を向くと、いない?開始の合図までは確かに横にいたはずなのに?…アゼルさん逃げました?
……………………感動するぐらい凄い絵ではなく、城の機能が一時ストップするぐらい見るに堪えない酷い絵って事ですかー!?皆さん酷いですー!あんまりですー!
ア、ア、アゼルさんーー!!
何処に行ったのですかーー!(怒)




