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お願い事は突然に

城の皆さん、バタバタしております。



結局、子供は参加出来ないハイレベルな戦いになりそうなので午前中に子供の部、午後から大人の部、の二部構成で開催する事になりました。

他はともかくリオ君が万が一にも怪我をする事がなくなりましたので安心です。

子供の部の宝箱は空っぽは止めて下さい、とロウカ王子に念押ししましたよ。“ 小さな頃から人生の厳しさを知るのは大切です ”とか言って容赦無くビシバシとしそうで怖いのですが。国のイベントで小さな子供がグレる切っ掛けを作ってはいけません。




スポーツ大会の様に様々なルールを覚えたり専用の道具を用意する手間暇や時間に比べれば遥かにマシなのでしょうが、何しろ会場が広い。子供の部はともかくメインの午後の部は城とメイン会場、城下町の一部全てを使ってるので、何時もの仕事に加え、安全の為に全体に結界を張る準備、会場の準備、整備、宝箱の設置、参加者の募集、審査、警備など周りは目が回る程の忙しさです。……軽い気持ちで言った発案者として少し肩身が狭いですが、皆さん久しぶりのイベントに生き生きとしてる事が救いです。特に宝箱の中身を準備する人達が。


王族を始め、アゼルさんやセシルさん、サリーさんや私も宝箱の中身を用意するのですが聞いた話では一部の方々がエゲツない物を考えているとか。参加者が人間不信にならない事を祈ります。

私は子供の部のハズレを幾つかと大人の部の当たりを用意しますがロウカ王子から私の用意するものは一番期待しています、と微笑みながら言われたのですが、ぶっちゃけ庶民の私には王族からの期待が胃薬が必要な程に重いです。金貨や宝石以外に皆さん何か喜ぶ物ってありますかね?

リオ君や護衛のジルさんとダンジュさんは参加組に入っているので今は別行動です。中身が分かったら面白くありませんしね。





悩みつつ今日は私の癒しスポット、ユグドラシルちゃんの元へと向かいます。漸く花がポツポツと咲き始めて甘い香りを漂わせているのですよ。



「ユグドラシル、調子はどうだ?」


【主様〜、見て下さいですの。今朝また三輪咲いたのですの〜】



二メートル程の高さになっているユグドラシルちゃんの枝には薄いピンク色の花を咲かせ始めており、実のなる半年後がとても楽しみです。花を愛でつつユグドラシルちゃんの意見も聞いてみましょう。



【う〜ん。あ、そうです人間は希少な物が大好きですの!コレクションですの!】



ふむ。なるほど、希少価値があるものですか。それは目玉商品になりますね。

希少価値〜、滅多に手に入らない物ですか。うーん。




「あら?リンちゃん?」


悩んでいると、セシルさんが中庭にやって来ました。このような中場所にどうしたのかと思えば、最近忙しく一時間程、小休憩ひるねの為にユグドラシルちゃんの元へと来たとか。分かりますよ。ここってマイナスイオンが充満してるかの様に癒されますよね。



「本当使い物にならない奴らばっかで(ピー(問題発言))して(ピーピー(差別的用語))してやろうと思って(ピーーー(残酷的表現の為禁止))俺も苦労したぜ……あら?おほほ、アタシってば疲れてるのねー」



ソウデスネ。タイヘンオツカレノヨウデスネ。



「ここって本当のんびり出来るわよね。

あ、リンちゃん。この前言っていたお礼の件、ここでお願いしてもいい?」



以前に孔雀軍団に絡まれた時に助けてもらった件ですね。

お願いは何かと思えば一緒に添い寝をしたいとの事でした。

そ、そそ、そ添い寝ー!?あ、元の姿でですか?



「…笑わないでよ?幼い頃に絵本で読んだドラゴンに憧れたのよ。その本の中で主人公がドラゴンと一緒に昼寝をする挿絵があってね。幼心にいつかアタシも、って思ったんだけどアゼルや他の守護竜達に会って夢が崩れたわ。

もう一生夢のままと思ってたらそこへリンちゃんがやって来たでしょ?これはもう土下座してでも頼み込まなきゃって思ったワケ〜」


「別に土下座は要らないがそんな事でいいのか?」


「勿論〜♫ 」



昼寝ぐらいならいくらでもしましょう。何と言っても森では200年ほぼ寝てましたからね。

元のドラゴンの姿に戻り地面に横向きに寝そべると、セシルさんが目をキラキラさせながら鱗に触ってもいいか確認をしてきましたが、可愛いく見えます。

許可すると私自慢の鱗を褒めてくれ自分が寝るお腹の鱗が薄い事に気付きペタペタ触るのは良いんですが…ちょっ!?か、顔をスリスリするのは止めて下さい!!あわわわわ??!ストーップ!!



「あ、あああの、セシル!?その顔を擦り付けるのは止めてくれないか」


「あ、ゴメンね。感動のあまりつい。女性にする事じゃなかったわ」



嫌と言うか、腹部に顔を擦り付ける行為は竜種の求愛行動、つまりプロポーズなんですよ。

オスはメスの前に首をさらけ出し、メスは弱い腹部を相手に預ける事によってお互いを信頼し、受け入れる行為なのです。なのですりすりされるのは、すっっごく恥ずかしいのですよ。

因みにメスが気に入らなければ首は切り落とされはしませんが、頭を殴られとどめに魔法でこんがり。運が悪ければ重傷を負いますので、なかなかデンジャラスな種族です。

つまり今セシルさんが私にプロポーズしている状態なのですよ。



「あら?じゃあアタシのお嫁さんになる?」


「………………は?」


「えー?だって美人さんで料理も上手いし、一緒にいて楽しいし、話も合うし、その上好みだって合うし。…………ん?あらやだ、よく考えたらいい事づくめ?………俺の…先祖が(ボソ)……番い…結婚……(ボソ)」


「セ…セシル?」


「……………………まあ、リンちゃんが恥ずかしいなら今回は止めとくわ」



セシルさん?

今回は、って何ですか!?

いや、止めましょうって。私が人型なら貴方警察呼ばれても文句は言えないんですよ?変質者ですよ?



「では早速。寄りかかる分には大丈夫なのよね?」


「……顔ではない限りは」



約束は約束と言え乙女心は複雑なのですよ。



「んじゃ。……んー、少しひんやりして気持ちいいわねー。ふふふ、夢が叶ったわー、あの絵本の主人公もこんな気持ちだったのかしら………最近忙しかったら…何か……」


…寝たようです。お疲れだったのか薄っすらとですが目元に隈が出来てますね。本当に申し訳ないです。

………こうして見るとセシルさんは半端なく綺麗な顔をしてますよねー。美形さんの顔は何時間見ても見飽きないです。しかし恋愛対象は異性と言われていましたがオネエ口調ではなかったら、もっとモテるでしょうに、人生ままならないものです。



平和ですね。ユグドラシルちゃんは目を閉じ私の近くに寄り添い、側にはセシルさん。穏やかな日差しで、風も気持ちよくて、風がサワサワと草木を揺らす音が聞こえてきて…………なのに何故泣きたくなるような気持ちになるのでしょう………。


遠くで……鳥の声も聞こえ…………て……セシルさんの穏やかな寝息の音を聞いていたら…何かこちらまで……眠たくなってきまし………た……よ…。スー、スー。








ドガアァアアンッッ!!



ひー!?何ですか?何なんですか!?地面が揺れてるー?……何かデジャブ?ユグドラシルちゃん二号襲来ですかー!?

慌てて周囲を確認すると、、え?アゼルさんとセシルさんが戦っていますが、何故に?

思わずユグドラシルちゃんを見ると、ドカンドカンと爆音が響くこの殺伐とした空気をまる、っと無視したほんわか笑顔を浮かべております。



【主様達が寝てから暫く経った後に、パパが主様を探しに来たですの。パパ、主様が元の姿に戻っているのを見て喜んでこっちに来たらセシリードさんが一緒に寝ていたのを見て………お顔が怖くなりましたの、思わず花が何輪か落ちちゃったくらい怖ーーいお顔だったですの。

それで抹殺しようとしたらセシリードさんが起きて今に至る、ですの】



抹殺って、アゼルさん何をしようとしたんですか。

…目の前で庭師が丹精込めて育てている植物達がバキバキとヘシ折られちぎれていきます。

私のあの切ない気持ちを返して下さい。

………アゼルさんをお仕置きしようと思ったのですが……セシルさんも止めるどころか生き生きと戦いながら庭を破壊していますので同罪とみなし喧嘩両成敗決定です。




尻尾をブンッと一振り。をを、ホームランです。


当分戻って来なくて結構です。




ボロボロの中庭を眺めながら思うのはユグドラシルちゃんの時といい今回の事といい、この中庭風水の方角が悪いとかで何か呪いでもかかってませんか?







時間が欲しいです。

一日28時間ぐらいになればいいのに………休みの日だけ。


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