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初ナンパは突然に

ポカポカ陽気の午後。ちょっとオシャレなカフェテラスでリオ君とお茶してます。


私のお気に入りのお店で、大通りを一本外れた角にある隠れ家的な場所に立つこのお店は少し煤けた壁全体に蔦が覆い、店内はカウンターとテーブルが三つ、オープンテラスに一つ。

店内の棚には一点ものの趣味のいいカップが並べられていて、白髪をオールバックにした素敵なマスターさんが頼めば好きなカップに美味しく淹れてくれます。落ち着いた雰囲気の中で淹れた紅茶は正直、城のメイドさん以上の絶品で、その日の気温や茶葉の状態でオリジナルブレンドやフレーバーティーも出してくれますが、何とここには緑茶まである私の一押しの店なのです。

このお店に来たら一番初めに注文する緑茶とリオ君は甘い蜂蜜茶で二人まったりタイムです。

緑茶は独特の味なので中々浸透はしていないのですが、一部熱狂的なファンも多く私もその一人です。


この風味豊かなお茶を分からない何て嘆かわしい。

緑茶サイコー。好きが高じてマスターと一緒に緑茶の会を立ち上げてしました。現在会員は5名。今日は会う約束はしていないのですがメンバーの一人カキヤさんに羊羹を作って来たのです。来なかったらマスターに貢ごうと思います。

カキヤさんとは、緑茶の会のナンバー3で、マスターと張る程の素敵なオジ様です♫

くぅ。惜しかったです。マスターといいカキヤさんといい、私がもう50年ほど早く森を出ていれば…。





先程まで、この店の表通りで態度も人相も悪い方達が、一般人に絡むという騒動がありまして。ええ、国を守るエリート集団の副隊長達の目の前で。(笑)

運が悪いと言うかマヌケですね。

勿論、ドナドナの様に連行されて行きましたが。


ですからリオ君とお茶を飲みながら二人を待っている最中なのです。



のんびり道行く人たちを眺めながらもうすぐ二ヶ月近く経つんだなぁとぼんやり考えました。


部屋の改装は遅々として進まず、流石の私もサリーさんに訴えたところ、勿論一番の原因はアゼルさんが仕事をほっぽり出し背後霊の如く引っ付いていることなのでしょうが、何と他の守護竜達からの嫌がらせが発覚しました。


纏めると、アゼルさんだけが竜王わたしの側にいるのは不公平だ → アゼルさんを仕事漬けにしてしまえ → 守護竜達が無理難題を押し付けて来る → 当然、時間が取られる → 部屋の改装が出来ない → 私が国にとどまる → 結果、悪循環。



馬鹿だ、馬鹿者どもがいます。

人間より遥かに高い知能を持っているハズなのですが。


…あの部屋に布団だけひいて寝て、次の朝さようなら〜は、駄目ですかね?え、駄目?アゼルさんが暴走する?…は〜。まあ、この国にも愛着が湧いてますし、もう暫くはのんびりしますか。







「あらやだ?チョー美人さんと天使ちゃんじゃない。アタシってラッキー?

美人さん、アタシとお茶しない?」



ーーーーむ。



リオ君とまったりしていると何処からかナンパしている声が聞こえてきました。

ふん。リア充爆発しろ。

どんな顔かと、やさぐれた気持ちで顔を上げると、私の目の前に煤けたマントが見えました。

??更に目線を上に上げると、旅から帰って来たのか、全体的に草臥れた感じの男の人が立っていました。

をを!イケメンさんです。

見事なプラチナブロンドが肩のあたりで風でサラサラ揺れています。マント越しからでも分かる長身で引き締まった体に、白い服を着せたらミカエルとかカブリエルとか天使コスプレが似合いそうな拝みたくなる中性的な美貌です。



???さっきの声って、女の人が男の人をナンパしていた声ですよね。


右。 誰も居ません。

左。 向かいの店に家族連れが一組。

後。 ガラス張り。

前。 イケメンさん。


私が周りを確認することが可笑しかったのかイケメンさんが笑いながら声をかけて来ました。


「声かけたのはアタシよ、ア、タ、シ」




ーーーーー人生初ナンパはオカマさんでした。





「……これはナンパと言うものか?」


もしそうならば、喜ぶべきなのですか?悲しむべきですか?


「そうそう、アタシとお茶しましょう」


「主様、ナンパって何ですか?」


「ナンパって言うのはねー、知らない異性、まあ女の子に声をかけて一緒に仲良くしましょう、って意味よ〜」


あれ?そんな意味でしたっけ?どちらかと言うと性的意味合いの方が強かったと思うのですが……んん?この方はオカマさんでしたね。つまり言葉通り仲良くなりたいと?分かりましたよ!お友達になりましょう!



「お友達になりましょうって意味なのですか〜。あ、僕リオと言います」


「リンだ」


「ご丁寧にありがとう。アタシの名前はセシリードよ。

宿をとる前にここの緑茶を飲みたくなって来たんだけど、美人さんや天使ちゃんと知り合いになれるなんて〜」


なんと!貴方も緑茶仲間でしたか。

これは緑茶の会に勧誘決定ですね。ささ、セシリードさん。羊羹わいろなどいかがですか?緑茶にとても合うお菓子なのでございます。

見た目と違い羊羹を豪快にかぶりついたのには驚きましたが、不思議と様になっていてました。

リオ君は一口食べた後、蜂蜜茶に付いてた蜂蜜を羊羹にかけてこっちの方がもっと美味しいです、と一言。

セシリードさんの若干口元が引きつっていたのが印象的でしたね。

言いたい事は分かります。しかしリオ君は殺人的甘さの飴を笑顔で美味しいと言った強者つわものなのですよ。



試食は大好評。それと栄えある緑茶の会ナンバー6になって頂きました。

セシルさんは旅をされている方で聞き上手で話し上手な方で、羊羹の感想や緑茶の素晴らしさ、他国の珍しいお茶など時間が経つのも忘れてついつい話し込んでしまいました。



ゴーン、ゴーン、ゴーン…

遠くの時計塔から鐘の音が聞こえてきます。

あれから40分は経っていますね。

そろそろジルさんとダンジュさんが戻って来る頃でしょうか?


「あら、いやだ?楽しくって話し込んじゃったわねー。そろそろ宿をとらないと良い部屋が埋まっちゃうわ」


「そうか、私も連れが戻って来る頃だ」


「リンちゃん、リオ君、暫くはこっちに居る予定だからまた一緒にお茶しましょう」


リンちゃん、セシルさん、とお互いに呼び合う仲になった緑茶仲間に、緑茶の集い予定などを説明し、お互いに別れました。

う〜ん。同志との語らいは楽しいですね。さて、そろそろお二人が来る頃なのですが……。

あ、向こうから早歩きでやって来ましたね。お二人の為にアイスティーを注文して待ちます。



「すいません、遅くなりました」


「暑〜っ、あいつら詰め所でも暴れやがって。お、アイスティーですね、ありがとうございます」


余程喉が渇いていたのか、二人とも一気に飲み干しました。


「気にするな。初めてナンパされて楽しかった」


ーーーっっ!?ぶぶーーっっ!!


うあー汚いです。

一気飲みで喉に詰まらせたのですね? 全くいい大人でしょうに。


「リ、リリ、リン様!?ナ、ナンパーー!??」


「ゲボゲボっっ!ま、待って下さい。何処の誰ですか!」


「セシルという名で旅人らしい。今日この国に着いたそうだ」


「主様と緑茶仲間になったのですよ。僕ともお友達になりました」


顔色が悪いですが、そんなに苦しかったのですか?ブツブツと二人で命が、とかアゼルさんの名前が出てきてますが何ですかね?



「いいですか、リン様。行方不明者を出さない為にもどんな奴なのか特徴を教えて下さい」


よく分かりませんがセシルさんの顔が知りたいのですね。

それでは紙とペンで似顔絵を……っと。あ、リオ君も一緒に描いてくれるんですね。

……ジルさん、ダンジュさん。何故にそんな目で見るのですか?



「…………人、か?」


「ああ、ダンジュは知らなかったか。残念ながらあれは人だ。人間の男に見える分、リオ様の方が上手いな」


失礼な。目と鼻と口があるのですよ?人間じゃないですか。リオ君の方が少〜しだけ上手いかもしれませんが。

むっ、としたので少し文句を言おうとした矢先に、噂のセシルさんが姿を現しました。



「あ、いたいた。リンちゃん言うの忘れていたんだけどー………ん?」


「リン様?彼は?ーーーっっ!?」



「 「 団長ぉぉーーー!!?? 」 」



もしかしてお噂の元団長さんですか?

っていうか元団長さんはオカマさん!?








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