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子守りは突然に

少し遠回りになりますが、依頼を受けた報告をしようと孤児院を訪ねると、皆さんは市の準備で大忙しです。

声をかけづらくそのまま立っていると、ニック君が気付いて声をかけてくれました。


「あ、リン姉ちゃんにリオ!ついでに兄ちゃん達も。どうしたんだよ?あ〜また何か大量にリン姉ちゃんが買い込んだんだろ?」


「失礼な。仕事を受けた報告をしに来た」


「ニック君こんにちは、です」


「…俺らはついでか?」


「ついでだろう」


「仕事って、マザーがチビ達の子守りをする人が来るかも知れないって言ってたけど、リン姉ちゃん達だったんだ」



マザーはこっちにいるよ、と部屋の中に案内され入るといつもあるテーブルやイスが全部片付けられ、広いスペースには左の方には商品なのでしょう、タペストリーや刺繍など可愛い一点ものの小物もあります。あ、端の方に可愛い花が刺繍しているあのハンカチは、個人的に欲しいですね。


右の方には裏の畑で収穫したと思われるジャ芋が山積みにされています。

幾つかは袋詰めにされていて、一袋に5〜6個入って小銅貨二枚、日本円で30円ぐらいですね。う〜ん、安すぎませんか?大きいし、これだけの量を作るのは大変な作業だったのでしょうに。

年中収穫出来るから安いのも分かるんですけどね。


孤児院の子供達が忙しそうに、でも笑顔で準備を進める中、指示を出していたマザーさんが此方に歩いて来ました。


「遅くなって申し訳ないね。ああ、依頼を受けてくれたのはリンちゃんだったんだね、じゃあ安心だ。

市の日はなかなか依頼を受けてくれる人はいなくてね。半分諦めていたんだよ。

でも困ったね、四人分のお給金は難しいね」


「依頼は一名だろう?元々、そのつもりだ」


「でもねぇ、リオ君達も手伝うんだろう?」


「日頃、世話になっているし知らぬ中ではないんだ。寧ろ依頼抜きにしたいが、ギルドに報告しなければならないしな」


「ありがとう。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかね」


副隊長が副業で金品を貰ってはマズイですし、何よりマザーさんの笑顔はポカポカして大好きです。若い頃はさぞかしブイブイ(古)いわせたのでしょうね。



「ところでマザー、他のはともかくジャ芋が小銅貨二枚は安すぎないか?」


「今回はどこも豊作だったのと、やっぱり本職には敵わないからね。質が落ちるならその分安くしないと売れないんだよ」


「…市のスペースでは火を使って良かったか?後、場所はどの位の大きさだ?」


聞くとスペースも広いし煮炊きも大丈夫で、彼らも何か食べ物を提供したいと思っていたらしいです。

年長組さん達は日頃、食事を作っているので火の取り扱いにも慣れているでしょうし、それならばお祭り定番のあれが出来ますね。

ダンジュさんとジルさんに城に行って油とバター、大きな鍋と蒸し器を取ってくるようにお願いしました。

お饅頭が食べたくなり蒸し器は最近作ってもらったものですが、思わぬところで役に立ちそうですね。



持ってきてくれた道具の使い方と注意点を説明をしながら作った、油を使ったフライドポテトと蒸し器で作ったジャ芋のバター添えは大好評でした。

バターは溶けないように氷詰めにでもしておけば大丈夫ですし、手軽で簡単、この商品なら価格を上げてもいいでしょう。

この世界は蒸すという概念がないので、ホクホクした食感に皆さん驚いていましたし、フライドポテトは奪い合いでした。

これは売れます、売れますよ!わっはっははっ。





当日に皆さんをお見送りして、今から子供達とのプニプニパラダイス♫

子供のお肌ってスベスベでプニプニで可愛らしいですよね〜。

赤ちゃんが小さな手で触ってきた時なんて、もう!もう!可愛いは正義です!!


今回の居残り組は赤ちゃんが一人と男の子が三人と、女の子が二人です。

可愛い天使ちゃん達は男の子達がダンジュさんの腕に掴まりグルグル回って楽しそうですね。女の子はジルさんの周りに集まりおままごとですか……お父さん一人にお母さん二人。ジルさん、現実で二股かけて刺されないで下さいね。



午前中はお二人が子供達(リオ君含む)の子守りをしてくれたので、心ゆくまで赤ちゃんのプニプニ肌を堪能しました。

少し早めのお昼はケチャップで顔を描いたオムライス。…ゴブリンだ〜、と喜ばれ、ダンジュさんにも褒められましたが一人一人、食べる子本人の顔を描いたつもりだったのですが、センスが無くてゴメンナサイ…そうですか、ゴブリンに見えるんですね……。

何気に気付いたジルさんが憐れんだ目で見てるのが一番堪えました。



市で頑張っているマザーさん達には簡単につまめるサンドイッチを作ってダンジュさんに差し入れを持って行ってもらいます。

その間に、リオ君達がネコ鍋のように固まってお昼寝しているのを見て悶えながら掃除をし、ついでに夕食の準備。

全て終わったら今度はオヤツ作り。ドーナツを揚げているといつの間に起きたのか、匂いに釣られて子供達が餌を待つ雛のような眼差しで此方を見ていました。………リオ君まで…この子達は私を悶え死にさせるつもりですか?

親鳥の気持ちを若干理解しつつ、少し冷めたドーナツを小さく千切って口の中にポイポイ入れていくと、また欲しいのかあ〜んって、か、可愛い〜。ジルさんのお口には揚げたてを突っ込んであげました。かなり熱かったようでジタバタしていましたが、大人のあ〜ん、は可愛くありません。



お皿にドーナツを置いたのですが、誰も手をつけないので聞いてみると、マザーさんや他の子達に食べさせてあげたいと。

沢山作ってあると教えると安心して食べ始めましたが……ううう。う〜、ずびっ。良い子達でずよ〜。白パンではなくてドーナツですが、天使ちゃん達はハ○ジだったのですね。



マザーさん達が帰って来るまでグリムな兄弟や日本の昔話を語りました。

地球の童話は大好評。次は?次は?と、強請られる中で、ふっと日本のアニメやヒーローの話はどうだろう?と、試しに語った事を数時間後に後悔するハメになるなんて。




商品やジャ芋も目出度く全て完売して(ダンジュさんはお昼ご飯を持って行くとあまりの行列にそのまま手伝ったらしいです)疲れて帰って来たマザーさん達の目の前で子供達が、決めポーズで勢揃いしていました。


『しぇかいのへいわは、おれたちがまもりゅ!しゅごかーれんじやー、けんじゃん!』


『ぷりちーびしょーじょ、まほうしょーじょちゃい、とうじょーう!しゅごりゅーしゃまにかわっておしおきでしゅよ!』


『へ〜んし〜ん!しゅごらいだー!』


『…おなかがすいたのなら、ぼくのかおをたべる?』



…………………………。

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい〜〜〜っっ!!!



いや、話したの私ですけど、でもでも普通は童話や昔話に興味が行くでしょう!?

何故アニメや特撮ヒーローにこんなに食い付くのですか!?



この子達も現代っ子なのですね。



固まってるマザーさん達、どうしましょうか。






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