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幕間は突然に ⑦

(空気な)王様視点です。

突然の出来事に、現場は未だかつてないほど混乱していた。


執務中、轟音と共に揺れが建物を襲い守護騎士や部下達に守られながら外を目指す。

途中の報告で耳を疑ったのは中庭に突如木が生え、力を吸い取って目に見える速度で巨大化しているという、信じられないような話だった。

揺れのせいで多数の怪我人はいるが、死者は無し。但し不用意に近づいた騎士数十人が力を吸い取られ昏倒。息は有るものの危険な状態らしい。


ーーアゼルは……竜王様の手前、渋々ながらも助けてはくれる、か?


多分、“ 死んで肥料にでもなってくれれば後腐れも無いし自分も楽だった” ぐらいは思っているだろうが。


あの容姿まおうに騙されてはいけない。

長い艶やかなシルバーグリーンの髪を腰まで伸ばし、創生神が丹精込めて造ったかの様な美しい顔は絶えず微笑を浮かべている。

老若男女問わず人気があり、熱烈な信者までいるアゼルだが、人間には関心も無く小間使い程度だと思っている事を儂は知っている。

なんせ産まれた時からの付き合いだ。儂の父、祖父、曽祖父、それ以前の時代からずっとこの国に居るのだから。



頼むから見捨てているなよ、と祈るような気持ちで現場に向う。

本来なら儂も避難するべきなのだろうが、いざという時にアゼルにそれなりに意見めいれいを言えるのが儂しかいないのだから仕方がない。

王妃と王子を安全な場所に避難させたが、王子だけはニッコリ笑い、国を継ぐ者として今起こっている事を確認すると言って聞かず着いてきたが、お前は唯の野次馬根性だろう。王妃に似た顔と儂に似た穏やかな雰囲気だが、本人は面白そうな事が大好きで面白ければ多少の苦労は厭わない、我が子ながらなかなか良い性格をしている。


……何故か儂の周りはこんな奴らばかりな気がする。

ダイスよ、そのまま素直に育ってくれ。



直接攻撃も生半可な攻撃魔法も効かない。仮に大魔法とらやがあったとしても国が焦土と化す。

そんなものに対してアゼルはどう解決するのかと思い、最悪な想像にまた胃が痛みだした。

常備薬を飲みなかがら思うのは、最近胃薬の量が増えていること。髪にはまだ影響がないがそれも時間の問題だろう。





現場に駆けつけると竜王様が木に直接魔力を注いでいる最中だった。

ーー成る程。

外からの攻撃が効かないのならば、内側からか。

強大な魔力を持っている竜王様ならではの作戦だ。


やがて器の限界がきたのか、氷が割れるような音と共に内側から爆ぜた。

凄い。周囲からも歓声が上がったが、それも直ぐに静かになる。


ーー竜王様が愁いを込めた眼差しで静かに残骸を見ていたからだ。

あの様な化け物の木にも情けを掛けられるのか。


やがて竜王様は残骸の方まで歩くと衣や手が汚れるのにも関わらず、地面に手をつけ何かを探し始めた。その姿はとても尊く神聖な行為に思えて誰も、あのアゼルでさえも側に寄れなかった。



やがて目的の物、種を見つけると大輪の蕾が綻ぶような笑顔を浮かべる。


…何と言うか凄まじい破壊力だ。

妻子持ちの儂がコロリ、といきそうだった破壊力。周りはイチコロだろう。

アゼルが竜王様に微笑みながら此方に殺気を飛ばしてくるのが何とも器用だ。




竜王様の方に歩いていくアゼルに、側に居た魔法師団隊長のシオルが風を使い、向こうの声を此方まで届ける、といった魔法を使った。

そして聞こえてきたのは竜王様が庭の使用許可を確認する言葉だった。



「…アゼル、ここの中庭の一部を使う許可をシャリーズ王に確認をとってきてくれないか?」


「…ああ、その種ですね。

我が主様、この全ての土地は貴女様の物です。お好きなようにお使い下さい」


「しかし…」


「大丈夫です。お好きにお使い下さい」



………………。


…アゼル、一応確認はして欲しいぞ。

反対はせんが、儂にも立場というものが……イダダダダ、ま、また胃が。



竜王様は一瞬にして庭を元通りにすると、地面に埋めた種が発芽し、二メートルを少し超えるぐらいまで成長をしたが、二人とも何も無い空間に向かって話しかけている。おそらく精霊と話しているのだろう。

見る事の出来るシオルが、緑色の髪で白い衣、薄いピンクの瞳の可愛らしい女の子の容姿を説明してくれた。

瞳の色がグリーンならばエメラルドドラゴン一族の容姿そのままだな。

アゼルの隣にいれば親子と間違えられるかも知れない。

それは竜王様も同じように思ったらしく何やら揉めていたが、最終的にアゼルが崩れ落ちたところを見るとパパ呼びで決定したらしい。


はっ。日頃の行いのせいで結婚もしていないのに子持ちになったな。、とは少しも思っていないぞ。





とにかく一応の解決でしかないが、解決は解決だ。

ほっと胸を撫で下ろし、胃薬を飲むが効きがあまり良くない気がする。また医師達に新薬を作ってもらわなければ。

余談だが儂の胃薬の為に名のある医師達をスカウトしていった結果、医学大国と呼ばれることになったのは全くの偶然だ。



当分は事件も起こらないだろうと思うが、実は不安材料が一つだけ儂の横にある。



息子の竜王様を見る目に熱がこもっているような気がするのは気のせいと思いたい。







遅くなって申し訳ございません。

最初アゼル視点で書いていたのですが事件そっちのけで主人公を褒め称える文章にしかならなかったので、慌てて胃痛持ちの王様にご登場していただきました。( ̄▽ ̄)

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