お勉強会は突然に
図書館と聞いて、 “城の図書館?市民図書館より少し小さいぐらいの大きさ?” なんて考えていました私。
まさか、この広いお城の一画全て図書館だなんて思わないですよね?
何でもアゼルさんが読書家で私物の本も相当数置いているとか。
………権力にものを言わせてここを作ったんじゃありませんよね?
ぐるりと一周見渡すと本、本、本、本の山です。
軽く4、5階分の高さはありますか?それが見渡す限りズラーっと並んでいるのですよ。本が傷むのを防ぐため、極力日が入らないようにと薄暗い中で本に囲まれる空間は圧巻ですね〜。
活字中毒の自覚がある位には私も本が好きなので嬉しいですね。今度は一人で一日中籠もりたいものです。
ここには司書さんや部下さんが5人程いるんですよ。この膨大な量を5人でこなすエキスパート達は自分の担当場所を持っていて何と、全ての本が何処にあるのか記憶済みなのだとか。凄すぎます。一家に一人のパソコン要らずですね〜。
因みにアゼルさんはどんな本を読んでいますか?、と聞いたところ歴史から植物学、心理学等、ジャンルを問わず幅広く読まれているそうで、今は何を読んでいるかと尋ねると、最近は恋愛小説とか。…………幅広いです。
い、いえ否定はしてませんよ?ただ小説のタイトルが、……《キャベツ畑で捕まえてごらんなさい》《山の谷のキャサリン》《私をお花畑に連れてって》……………ごめんなさい。アゼルさん、似合わないです。
身内から精神ダメージを受けながらも気を取り直して、リオ君のお勉強会です。
長老さんに大まかな神話や歴史、人間達の知識などを習っているので、今回は補足的に神話のお勉強中です。
「…合格だ。一般常識は特に問題はなさそうだな。これは雑学的なものになるが、リオは大体の創世記は知っていたな」
「はい、創生神様が世界を作った話ですよね?」
「その通りだ。これはあまり知られていない事だが、創生神には伴侶がいることを知っているか?」
「伴侶って番い、奥さんですよね?」
「そうだ。創生神バルティアーノの奥方がヨーコ=オーノという名だ」
幼竜の時期に教わった時にはただそうか、としか思いませんでしたが、記憶が戻った今なら言えます。貴女、転生者、もしくはトリップして来た日本人でしょうと。
大野陽子、逢野洋子さん?漢字はわかりませんが、女神様。同じ元、地球出身者として言わせて頂きます。
地球の植物や食材、イチゴやら紙や鉛筆、桜やらをこの世界に伝えて頂けたのは大変嬉しいのですが、言葉はどうにか出来なかったのでしょうか?
イケメンもいいです。チョーやマジで、も別にいいです。
……中二病や腐女子などの言葉は伝える意味があるのでしょうか?
吹きましたよ、そして私のせいじゃないのにいたたまれない気持ちになりましたよ!?
どうしてくれるんですかー!(泣)
「知りませんでした。じゃ女神様なんですね。何で皆、知らないのですか?」
「……そうだな。一説には奥方を溺愛していて、他の者たちに名を呼ばれるのを嫌がったという話もある。…黒髪の美しい女神らしいぞ」
「黒髪…じゃあ主様と一緒ですね。主様も女神様と同じ綺麗ですし」
「…………」
キャー!キャー!、キャーキャー!!
イヤ〜!や、止めて下さい〜!
にっこり笑いながらのそのサラリと言うスキル!何て恐ろしい子!!
将来リオ君、君がその気に…いやその気にならなくても今でもハーレムを作れますよ。大丈夫!私が保証しますから。
「主様?」
「……た、偶々、同じだっただけだろう」
「そうですか、残念です〜。
じゃあ、その女神様も一緒に創生神様のお手伝いをしたのですか?」
「様々な動植物、世界の法則等も共に生み出したと言われている。まあ、サリーの様な補佐だな。
ああ、初代竜王を世界の主とし、守護竜を四方に置く、といった体系を立てたのも女神らしいな」
「何か凄すぎて想像つきません〜。じゃあ初代竜王様は神様と会ったんですよね?」
「……そうなるな」
実は初代竜王が書いたとされる書物が私達ドラゴンに伝わっているのです。
保存と封印の魔法が使われていて、(時空魔法は禁呪ではありませんでしたか?)今でも新品同様です。
日記に近いものでしたが、『バルティアーノからヨーコとずっと一緒にいたいからと土下座で世界の管理を頼まれた』だの『ヨーコがバルティアーノを “ヘタレのムッツリセクハラ男” と叫んでいたが、神語か?ヨーコの使う言葉はよく分からん』だの、初めてこれを読んだ時には目が点になりました。
そして記憶が戻る前だった為に当時は意味不明な単語が多かったものの、幼心に何故かこれを世に出してはならない、と強く思ったものです。
創生神は知りませんが、女神ヨーコは間違いなく私と同類の気がします。
ドラゴンやゴブリンは勿論、聖剣エクスカリバーやダンジョンもあるんですよ?
ゲーマーかファンタジー好きか。どちらにしてもお友達になれそうな気がします。
「あ、じゃあ主様、この…」
リオ君が言葉を続けようとした瞬間、
ドオオォオォォンンンッッ!!
音と共に揺れが建物全体を襲います。
あわわっ、何!?地震ですか!?
今度は何なのですかーー!?




