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幕間は突然に ⑤

少し短いですが、ダンジュさん視点です。

前を歩くニックとトーマスの楽しげな笑い声が聞こえる。

嬉しげな声に思わず笑みが零れた。




俺の名はダンジュ。魔法師団、シオル隊長直属で副隊長を務めている。

元々俺は子爵家の四男だったが、騎士団、魔法師団は実力主義だ。入団と同時に家名は捨てている。

唯一の例外は王族だが。(王族が簡単に捨てられても困る)それでも家名は職場では名乗らないのが決まりだ。

ここだけの話しだが、近くダイス隊長は今回の責任を取り王位継承権を破棄し、王族から外れるらしい。国外向けにアピールするのが目的だ。

本人は堅苦しい名が意外に役に立ったと喜んでいたが。(いいのだろうか?)




この筋肉質の体格から騎士に間違われることも多いのだが、誰がなんと言おうとも魔法使いだ。

子供の頃は細く、病弱であった為に医師の勧めで食事療法と共に、無理せず徐々に身体を鍛えて行く事数年、自分で言うのもなんだが逞しく成長した。

……昔の絵姿を隊員に見せたところ、詐欺だの別人だの果ては双子説まで浮上した。(改めて思い出せば、かなり失礼ではないだろうか?)


そんな俺の入団試験は今でも語り草で、受付で魔法師団の試験を希望すると言ったのにも関わらず、案内された場所は訓練場。周りを見ると体格が良い男達。不思議に思いつつも何故か基礎体力試験や武術試験(魔法を使う時に精神力と共に体力も要るからか?)、得意武器(身を守る為か?)、筆記試験(魔法の事など一つも無く魔獣や砦攻略等…騎士団と合同で任務にあたるからか?)等、気がつけば騎士団に合格していた。慌てて事情を説明し、再度魔法師団の試験を受けたのは後にも先にも俺だけだろう。

当時の試験官が逸材を逃がしたと零していたらしい。





俺は今、騎士団副隊長のジルと共にリン様とリオ様の護衛兼案内役をしている。

本来なら副隊長ではなく、隊長がするべきだろうが謹慎中の為にこちらに回ってきたものだ。

正直に言えば辞退したかった。

王妃を助けた、今は幻といわれるまでになったユニコーンと世界の主、竜王。

国王や守護竜のアゼル様がひれ伏す存在に、たかが副隊長クラスの人間が任務にあたるなど。…尻込みするなという方がおかしいだろう。ジルの『あの美人さんの護衛ですね〜、眼福、眼福』と笑いながら喜んでいた奴の神経を心底疑う。





お二人の散策は、多少の騒動はあったものの概ね順調だったと言えるだろう。

肩で切り揃えた銀髪を揺らしながらリン様の服を掴みキョロキョロとしているリオ様と、黒髪を頭の上でリボンで纏め、無表情ながらも全てが物珍しいのか目が輝いているリン様。

お二人は常に人目を引く。

特にリン様は上に立つ者の独特の雰囲気を本来纏っているが、今回の散策にあたって王気を抑え認識をすり替えるような魔法を使っているらしい。どのような魔法なのか興味はあるが、人間の俺にはどの系統の魔法であるか検討さえつかない。




途中、走って来た少年がリオ様にぶつかり、そのまま案内役になるといったハプニングはあったものの、お二人の楽しげな様子にまあ、いいかと思う。(護衛としては失格だろうが)





リン様の買われた品々をリヤカーで引きながら同僚を横目で見ると息も絶え絶えで、今にも倒れそうだ。

騎士団全体の基礎体力が無いのか、ジル個人のものなのか判断に困る。

歩いている途中ふっと、リン様の買われているものが食料品が殆どなのに気がついた。

果物や玉子といった生ものから小麦粉やクッキー等の保存食品が山のように買われているが、本来ドラゴンは特に食事の必要性が無いらしい。

なのにこの量。

多少の物珍しさもあるだろうが、城に帰れば食材は大量にあるのに、個人で買う量ではない。



ーー後からリン様の行動の理由が分かるのだが。



暫く店や人形劇を見た後、荷物を孤児院まで運ぶという時にフードを被ったアゼル様が現れた。

仕事で近くを通ったというが、城下町でアゼル様ほどの方が自ら関わる仕事など聞いたことがないが……、何故か先ほどの悪徳店主の顔が頭に浮かんだ。

…まさかな?いや、例えそうだとしてもアゼル様は公平かつ冷静な判断で有名な方だ。

私情を挟まない法に則った裁きをしていると………………………信じたい。





お二人を先に帰し、四人で帰りの道すがら聞けば、孤児院のマザーの誕生日が明日なので、贈り物を選んでいたらしい。

ニック達の手持ちのお金では果物やクッキーぐらいがやっとだ。

しかしマザーは毎年一口食べて後は下の子供達にやってしまうらしい。

マザーも子供達もたくさん食べれる量は買えず、せめて物ならと店を見ていくうちに運悪く例の店に行ったのだとか。いや、後のことを思い出せば運が良かったのか?





「でも、俺達は助かるけど、姉ちゃんも完璧そうに見えて抜けてるよな?」

「うんうん。でもおかげでマザーの誕生日のお祝いができるしね。

僕、あんなに大量に買う人、初めて見たよ」


「ぜ〜、は〜、店のおっさん達っ相手の値切り交渉は〜見事だったがな〜、ぎづい〜まだ着かないのか〜?」



「「 もうちょっと〜 」」




少年達とジルの話を聞きながら、きっと明日の夜にはこの食材を使ったご馳走が食卓に並ぶことだろう。


そして大人になった時に、その優しい光景と共にリン様の優しさを思い出す、そんな彼らの未来に思いを馳せた。

















































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