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食事は突然に

おはようございます!


お昼まで寝てました!リオ君に起こされました!…駄目な大人でごめんね。昔も今も朝は弱いのですよ。



「すまなかったな。お腹が空いただろう?」

「いえ、僕も遅くまで寝ていたので、お腹は、」


くうぅぅぅ〜。


「…本当にすまなかった」


顔を真っ赤にしているリオ君に、心の中でスライディング土下座をしました。






アゼルさん達は会議中という事で、メイドさんが部屋までご飯を持ってきてくれました。

リアルメイド!紺色のエプロンドレスに白いカチューシャ!

ぜんせ、メイド喫茶に行く夢がここで叶うなんて!しかも本物!これだけでも城に来た甲斐がありましたよ!

可愛いな〜♫何故この世界はカメラが無いのでしょう?

よし!近いうちに魔法でカメラみたいに撮れたり保存できるか研究です!

うふふふふ。待っていて下さいね!リオ君、メイドさん達!





リオ君の前には彩り鮮やかな野菜や果物が並び、私の前には彩り、繊細な盛り付けの見た目も文句無しの豪華な料理の数々。

まるで食品サンプル!

味もでした!いえ、食品サンプルは食べた事が無いですが、何となくニュアンスで。

つまり不味いのです。食べられない程不味くは無いのがポイント。

…くっ。もったいない文化で育った自分が憎い。

硬い肉に掛けられた赤いソースは苦みと酸味のコラボ。見た目が紫のカピカピのピーマン?炒めは砂糖菓子の様に甘く、黄土色のグミのように弾力がある魚は、しょっぱい塩味と噛んだ時の食感が絶妙♫カミカミしちゃうぞ!



…………。(泣)


……帰りたい。帰りたいです。

味と色合い、食感全てが素晴らしかった日本食が食べたいです。いえ、もうこの際ご飯に納豆があれば何もいらない。

何なんですか?罰ゲームですか、この味付けは!

………ん?では、味付けしていない生の方が美味しい?

横目で見るとリオ君がムシャムシャと果物を食べています。

…それ美味しいんですね。

私もそちらが食べたいのですが、メイドさん達の期待と不安を込めた瞳がチクチクと追い詰めるのです。

これって、残したらきっとコック長達がお叱りを受けるんでしょうね〜。

ーーええい!私は空気の読める女性です!この食事しれん、見事完食してみせます!




高校時代、お遊びで食べた闇鍋に匹敵するものだったとお伝えしておきます。




食後、リオ君はミルク、私はローズヒップに似たお茶で優雅なティータイム。

飲み物は普通に美味しく飲めた時には心底安堵しました。…ご飯だけ何故?

荒れた胃袋をお茶で癒しているとアゼルさんとサリーさんがやって来ました。




「御前への参上、遅れて申し訳ございません。

お食事もお気に召したようで、料理長以下見習いまで厨房で泣いていましたよ」


………試練を受けた甲斐がありました。



「ああ、礼を言っておいてくれ。

しかし今後、私の食事の用意は不要だ。いないものとして扱ってくれ。

城下町の散策や用事があった場合、決まった時間に食事がとれるとは限らないからな。

私は食事をしなくても問題無いし、時間を気にしたくはない。寝所だけ借りる。

…ああ、でもお茶だけは欲しいな。城のメイド達が入れてくれたものは美味しい」



お茶を一口飲むと、うん。冷めても美味しいですよ。

思わず笑みが零れてきます。

おお!メイドさん達が赤くなってますよ!カワユス!

褒められて嬉しいなんて初々しいですよね。眼福です!

そして食事回避、できましたよね?ね?

食事を回避してもメイドさん達は回避しませんよ。



先程なんて、麗しいメイドさん達がリオ君の口元についていた食べカスをナプキンで拭っている姿に、何となくヴィーナスの誕生の構図にリオ君達を当てはめ、リオ君を中心に周りをメイドさん達が囲んだ妄想をしましたが……いいかも。うふふ。

そんな絵があったら、どんな事をしてでも、そう最終手段、守護竜達に貢がせてでも入手しますよ!

ーー危ない世界に行きそうな自分が怖い。

うふふふふふ。


って、アゼルさん!だから歯ぎしりは止めなさい!皆さん引いてますよ!






「…失礼しました。

ところで我が主様、プレージェ王が再度、御礼と謝罪をしたいと謁見を申し出ておりますが」

「礼も謝罪も貰っている。不要だ」



王妃様が回復した後、全員が土下座での謝罪は凄かったですよ。

私、殿様気分を味わえるなんて思いませんでした。

遠い目になりながら扇子と脇息が欲しいな〜、何て考えるぐらいには私も混乱していたんでしょうね。

もう一度、アレを体験しろと?冗談じゃないです。


「分かりました。

と、ところで本日のご予定は決まっておられますか?

宜しければ私が城をご案内…」

「アゼル様はお仕事です」

「っ!サリー!貴方は私の邪魔をしたいのですか!?

我が主様との198年と8ヶ月30日ぶりの心の交流を!

お互いが離れていた年月、しかし離れていたからこそ気づく相手の大切さ、そして自分の想い。

長い年月、相手を思いながら過ごした日々!

今からそんなお互いの告白を邪魔すると!?」


そんなものありません!!

離れていた年月、どんなに心穏やかに平和に過ごしていたか。



「今度はメイド達にどんな恋愛小説を借りられたのかは存じませんが、仕事が半年分溜まっているのです!

王妃様の件でアゼル様が日々、仕事と研究に明け暮れ大変だったのは城の者、全員分かっております。

私達も出来る事は全てしましたが、アゼル様ではないと駄目な案件や要望が積み上がり書類保管室が崩壊しかけているのです!

最早、一刻の猶予もありません!」


悲鳴のように声を荒げるサリーさんを初めて見ましたが、それだけ切羽詰まった状況なのですね?

そんな中、丸一日休暇を捻り出したサリーさん、男前過ぎます。



「アゼル、私の予定は換金と城下町の散策だ。お前に付き合う暇は無い」

「換金!?お金は私が出します!

何が欲しいのですか?食材でも店でも街でも、何なら城でもいいですよ」


…貴方、一応知り合いや親しい友人達が沢山住んでいる場所を何だと思っているんですか?

しかしこの人ならやりかねない。

竜王わたしの為に、国一つラッピングでもして差し出しそうです。


「いらん。

第一、何故お前の施しを受けなくてはならんのだ?」

「それは私が、忠実な下部しもべだからです。我が主様の為ならば、全ての金銀財宝から私自身まで…」

「お前は不要だ、断固として断る!」

「それでは…」



ぎゃあぎゃあ言い争っていると、埒が明かないと思ったのかサリーさんから提案がありました。


「リン様、アゼル様、落ち着いて下さい。では、私からの提案です。

資金が欲しいリン様は、換金出来る物を用意し、アゼル様はそれを買い取る、そして私がその物の評価価値、つまり値段を決めるというのは如何でしょうか?

…アゼル様はリン様の私物の件については一歩も引かないでしょうし、払うとすればそれこそ全財産出しかねません。

なので、私が適正価格を決めさせて頂きます」


成る程。

確かにこのままでは埒が明かないし、私の私物を外に出せばいろいろ問題もありますね。

うーん。鱗でいいかな?この髪留めはダイヤモンドで出来てるから、これ?


「その提案を採用する。

とりあえず、鱗か髪留めか?それとも鉱物でも作り出した方がいいのか?

アゼル、何が欲しい?」

「………………………………」

「アゼル?」

「……!はっ!…申し訳ございません。いろいろ妄想、い、いえ、考え事をしていました」


ーー頭、大丈夫ですか?


「リン様、鱗は出来れば避けて頂きたいのですが。

正直に申しますと、価格がつけられません」

「…そうか、では髪留めでどうだ?」


髪留めを外してテーブルに置きました。

全てダイヤモンドなのでこちらの世界でもそれなりの価値はあると思うのですが、内心はドキドキです。某鑑定テレビのゲスト達はこんな気持ちなのでしょうか?

期待を込めてサリーさんを見ていると、彼は軽く首を振り言いました。


「…申し訳ございません。

こちらの髪留めも評価が付けにくいですね。

竜王様自ら作られた最高級品の上に、魔力が宿っておられるようで宝石というより魔石の類のようです。

金貨何百、何千…いえそれ以上ですね」


魔石とは、その名の通り魔力が宿っている石です。

魔法使いが持つと、術の威力が上がったり、一般人が持っていても、ちょっとしたお守りになりますが、確かにそれは高いでしょうね。

うーん。もう面倒です!


「金貨100枚でいい」


暫くの間お買い物出来ればいいだけですし、何百枚も持っていても嵩張りますよ。足りなかったらこっそり換金すればいいですしね。



「安っ!い、いえリン様それは安過ぎです!」

「アゼル、今すぐ持って来い。

それとも他の奴らに売った方がいいか?」

「すぐに持ってまいります!!」


素直で大変宜しい。

早く外に行きたいのですよ。



「あ、アゼル様!

は〜。リン様、護衛を連れて来ますので失礼致します」


瞬間移動のごとく消えたアゼルさんを追うように、サリーさんも慌ただしく部屋を出て行きました。

お疲れ様です。






メイドさんに追加のお茶を頼んでいると、リオ君が寄ってきました。


「主様〜、サリーさんにキャンディって言うお菓子を貰いました。

主様と一緒にどうぞって」


リオ君がキラキラ輝いている目で硝子に入った色とりどりのキャンディを見せてくれました。


むむ、サリーさんいつの間に。

リオ君に対してもポイントアップを狙うとは、なかなかやりますね。

仕事も出来て男前、しかも細やかな気配りが出来るなんてさぞかしモテるのでしょうね〜。


鮮やかな赤や黄、緑色などのキャンディはとても綺麗です。

私も前世、お徳用キャンディを大量買いして、それを舐めながら残業していたものです。



「お店で売っている人気の商品で、ブンブーン蜂の蜜で作ったものだと言っていました。

主様もどうぞ」


そう言うとリオ君は赤いキャンディを差し出してきました。

あ、イチゴキャンディですね?

大好きですよ〜。


「ありがとう、リオ…っ」


ーーー甘い。

歯が溶けそうに甘い。

口に含んだ瞬間、溶け出して慌てて飲み込むと喉が軽く痛いですよ!? すぐに溶けるって何?飴じゃないですよね!?

あっ!リオ君大丈夫ですか!?


「甘〜い♫主様、美味しいですね」


…本気ですか!?これ喜べる甘さですか?

あ、リオ君は青色を食べていましたよね?もしかして味が違う?

試しにもう一つ貰って食べてみると同じ味でした。(泣)

違うのは色だけ!?

お菓子なら安全と思っていたのに〜




外出先では、口に入れるもの全て疑ってかかれ、という事なのですね。










脇息は肘掛のことです。


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