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就寝は突然に ぷらす 小話

日頃の感謝を込めて急いで本編と同時に小話を書き上げました。

おかしな箇所があったらすみません。


「我が主様あるじ!その、ど、何処へ行かれるのですかぁぁ!?」



アゼルさんが半泣きになりながら慌てて聞いてきます。



深夜という事や、何より半年ぶりに家族団欒をさせてあげようと、挨拶や事後処理は明日に持ち越しという事になりました。


え?もう一応目的は果たしたのですから、今から宿屋に行こうかとか思っていたのですが?

私は眠らなくても平気ですがリオ君は少し疲れ気味のようで、瞼が閉じてしまいそうなのに。



それに勿論、宿屋にも興味がありますよ!

くふふふふふ。

ゲームのように建物は全て木で出来ていますか?可愛い看板娘に手作りの美味しいご飯…?と、冒険者達との語らい!そこから情報を貰ってダンジョンなんか行ったりして〜。

楽しみですよ〜。


「宿屋に行く」

「!!私を見捨てるのですかぁぁ!?198年と8ヶ月29日ぶりの再会だと言うのに!?」



………この人怖い。

そうでした、記憶の中の守護竜達は皆ウザいんでした。

引きこもりの原因でしたよ。


「鬱陶しい」

「主様あぁぁぁ!!」



泣かせたのは私…ですよね?本格的に泣かせてしまいました。

有能で良い人なんですが、幼い頃の経験から身体が拒否反応を起こすんです。

すると見兼ねたのかサリーさんが提案してきました。



「リン様、この時間ですと宿屋も開いておりません。それに失礼ですがこの国の通貨はお持ちですか?」

「鱗か鉱物でも換金しようと思っていたが」

「私が全て買取ります!!」



アゼルさんは黙ってらっしゃい!



「…竜王様の鱗を市場に出されるのは少し…。

それにどちらにせよ店は閉まっております。

どうでしょう?リン様が我が国に起こし頂けるという事で、アゼル様自ら丸一日かけてお部屋をご用意しております。せめて一晩だけでも泊まっては頂けないでしょうか?」



………お仕事しましょうよ。

でもサリーさんの言う事も、もっともですね。今晩は泊まらせて頂きましょう。

アゼルさん、お世話になります。



「案内を頼む」

「!は、はいっ!!……シオル隊長。明日正午過ぎにダイス隊長と共に会議室に来るように」

「っ、は、はい」


アゼルさんは王妃様の側にいるダイス隊長さんへの伝言を頼むと歩き始めました。

歩きながらリオ君が聞いてきます。


「主様、アゼル様は人間の名前を呼んでいましたよ?大丈夫なのですか?」

「あれは私だけだ。竜王だからな、魔力がデカすぎるんだ」


竜王わたしは魔力がデカすぎて相手にまで影響を及ぼしてしまうんです。困りますね。





「我が主様、此方でございます!」


アゼルさんは一際大きな扉の前に立ちます。

…何故でしょうか?すでに嫌な予感しかしません。

そして、彼は自信満々に扉をばーんっと大きく開けました。



「さあ!ここがご用意しました我が主様専用のお部屋でございます!」


「「「…………。」」」



天蓋付きの、人が5、6人余裕で寝れる大きなベッドがどどーん!と存在感を主張しております。

周りは細密な彫刻と様々な色の宝石がこれでもか!というぐらいビッシリ散りばめられており、家具は素人目でも一目で最高級品と分かるものだらけ。

赤いビロードのフカフカ絨毯に、壁一面全てギラギラ眩いばかりの黄金です。

金と赤のコントラストに周りはキラキラ輝く宝石達♫


…………こんな部屋で寝れるかあぁ!!!!



「目がチカチカします〜」

「……申し訳ございません。私の確認ミスです。

此方にお客様専用の部屋がございますのでどうぞ」

「…頼む」

「何故ですか!?お部屋ならここに!」

「こんな部屋で寝れるか!?ギラギラギラギラと貴様と一緒だな」

「!?私が高貴でキラキラ綺麗とおっしゃるのですか」



なんというポジティブ。

顔を背けるくらい鬱陶しいと言いたいのですが。





更に歩く事、約10分


「リン様、此方が貴賓室です。如何でしょうか?」


全体的に落ちついたシックな色合いで、家具も木で作られた飴色のセンスのいいものばかりです。

私の寝床も暗い空間に光が差した時など水晶が反射しキラキラしていましたが、日本人のわびさび?的な美しさですよ。

間違ってもあんなギラギラ成金部屋ではありません。

というか落ち着けません。



「いい部屋だな」

「落ち着きますね、主様……あ、あの…あの主様、その、一緒のお部屋で寝てくれますか?」


…何ですか!リオ君!その上目遣いは!?

はっ!!私を犯罪者にするつもりですね。そうですね!ふ。その手には乗りませんよ!


「…そのつもりだが?」

「ありがとうございます!」



うん。無理はいけません。やっぱり素直が一番ですよね?一緒に寝ますとも!!



『!☆□■っ○*!▽!◎×☆★☆◻︎%△!!』


……………。


「主様、あれは種族の言葉ですか?」


リオ君が服の裾を引っ張りながら聞いてきますが、ゴメンね。あれ、竜王わたしにも分からないよ。



「アゼル様は、“駄目です!幼いとは言え、リオ殿もオスなのですから、そんな羨ましいことは絶対に許しません!”、と言っておられます」


分かるのですか!?

思わずサリーさんの方を振り向くと、長年培った大体のニュアンスで、と言ってましたが貴方は歩く万能翻訳機ですか?

因みに私は守護竜達と100年程一緒に暮らしていましたが、何か?



「幼児を知らない場所へ放り出すほど、放任主義ではないぞ」

「☆☆%っ…そ、そのあれです。リオ殿はユニコーンですからベッドの中には入りにくいでしょう?

向こうのお部屋に大きなクッションをご用意いたします」



そういえばここではユニコーンの姿ではいろいろ不便ですね。

宿屋や買い物も目立ち過ぎます。



「リオは、人化の術はつかえるのか?」

「人化?人になる魔法?使ったことはないです」

「そうか、では目を閉じるといい」


リオ君に直接魔法を掛けると、身体の輪郭がぶれ始め5、6歳ぐらいの艶やかな毛並みと同じ銀色の髪の青い目をした男の子が立っていました。


……………っ!

落ち着け、落ち着くんですよ、ワタシ!スリスリもいけません!このまま犯罪者になりたいのですか!?竜王のプライドに掛けて我慢するのです!!




「か、身体の具合はどうだ?違和感はあるか?」

「目線が違うから変な感じがします。指?も動くんですね〜。

でも、ちゃんと歩けるし面白いですよ。主様と一緒、人間の姿、嬉しいです」

「……………、、」



ワタシ!!ガンバレ!

守護竜達と同類になりたいのですか!!

リオ君は小悪魔ちゃんだったのですか!?

チラ見すると、サリーさんは歯を食いしばっています。ええ、分かりますよ。お互い大人ですものね。

アゼルさん、何を歯ぎしりしてるんですか?貴方は大人になりなさい。




「これで問題は無いな」

「お布団初めて、です」

「わ、私も…」

「アゼル様はお仕事が残っていますので此方に」

「貴方は私の補佐でしょう!そんなものいくらでも調整して、」

「調整して、昨日丸一日時間が空いたのです」

「………しかし、」



無駄に終わった丸一日でしたね。

そして何気にサリーさんが私に目で訴えて来るのが地味にキツいです。

まあ、一宿の恩がありますしね。

私はリオ君を連れ部屋に入ると扉を閉めながらアゼルさんに声をかけました。


「アゼル、お前の用意した部屋はそこのサリー監視の元で改装するのならば泊まってもいい。

勿論、仕事をした上でだがな」

「本当ですか!?では、少なくとも改装するまではこの城で待っていてくれるのですね!」


…あれ?そういう事になるのでしょうか?あれ〜?

そんなに時間もかからないですよね?ま、いいか。



「…そんなに気が長くはないぞ」




ーーーー扉を閉める瞬間、『これが人間達の言うツンデレーー!?』といった言葉が聞こえた気がしましたが多分、きっと気のせいですね。



「わ〜ふかふかですよ!僕こんなの初めて」

「そうだな」


ポンポン飛び跳ねはしゃぐリオ君を落ち着かせると一緒に横になりました。

やはり疲れていたのか瞼が重そうです。


「主様、おやすみなさい」

「おやすみ、リオ」



布団の暖かさに懐かしさとほんの少しの切なさを感じながら目を閉じました。


おやすみなさい。














(小話)


200年以上前のある日、ある場所、ある守護竜たち。




「ガイラル!!あんた一体どういうつもりだい!?」


部屋にレイラの怒声が響き渡った。


彼女の震える目線の先にはモコモコの茶色の毛に埋れた彼等の至高の存在である主が眠っている。




「あんた本当に馬鹿!?我が主の寝床に羊の毛をそのまま敷くなんて!ああ!もう!僕は信じられないよ!」

「何の処理も刺繍すらもしていない原料の毛、そのままをですか。…ガイラル、貴方死にたいのですか?」


ルトが頭を抱えながら、アゼルが無表情にガイラルを睨み付けた。



「落ち着け。我が主が起きられてしまう。

安心しろ、この毛は殺菌消毒消臭済みだ」

「そんな問題じゃないだろ!!」

「仕方が無いのだ、我が主が毛を離されなかった」

「離されなかった、ってなんだい?」



ガイラルはため息を吐くと話し始めた。



「俺は我が主の為に最高級の毛布かクッションを用意しようと思ったのだが、羽毛や羊の毛は種類が様々で手触りも違う。

俺が一番素晴らしいと思っていても我が主が同じ様に思っていないなら何の意味もない。

そこで俺は考えた。我が主に選んで頂こう、と。

だから俺はとりあえず、最高級の毛を持つという羊達を10頭ほど用意し我が主の前に連れて行った」


「「「……………。」」」


普通は生きている羊ではなく、素材の刈った毛を用意しないだろうか?



「我が主はムームー羊の前に行くとモコモコの毛を掴んで離す事は無かった。……毛を刈る時にも」

「……刈る時にもかい?」

「ああ、余程気に入られたのだろうな。そして今に至る」




「…ふーん?そんなに気に入られたんだ?」

「…へえ?我が主が離されないほどかい?」

「…ほう?因みにその羊は何処に居ますか?」



混沌としたおどろおどろしい雰囲気が渦巻く中、ガイラルは口の端を軽く上げた。



「今日のディナー、メインは美味かったか?」

「…メイン?…って肉料理だったよね。ああ、うん!と〜っても美味しかったよ♫」

「肉も柔らかく味付けもなかなかのものだったね〜」

「ガイラル、先に言って下さい。

もっと味わいながら食べたのに」

「すまなかったな。まあ、お前達に喜んでもらえて何よりだ」





和やかな雰囲気の中時折、笑い声が聞こえる守護竜達の談笑は深夜まで続く。































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