入城は突然に ぷらす 小話
お気に入りや感想、評価等いつもありがとうございます。
今回は本文の一番下にお礼小話を付けています。
ついにやって来ました、シャリーズ国!
本当は夕方頃には着いたのですが目立ちすぎるので深夜まで待機していましたよ。
石畳と向こうに見えるのは時計塔?上に鐘が付いてますね。
イメージ的には19世紀ロンドンみたいですよ。単に、鐘と薄く靄が見えたので安易にイメージしただけですが。
霧の都ロンドン!!
……まあ、昔のロンドンの霧は殆どが石炭の煙などが原因の光化学スモッグらしいので、夢も希望もありませんね。
「主様、向こうに人間が沢山集まってます」
「あれは、残りの隊員達だ。迎えに来てくれたのか」
城門付近にいた方々が歓声を上げながら近づいてきます。
深夜ですよ、安眠妨害ですよ。というか、深夜まで待機していた私達の時間は無意味ですか?
「隊長〜〜!!」
「皆、無事だったんだな!」
「ユニコーンだ!すげ〜!」
「ダイス隊長がいつヘマするか心配でしたよ〜。まあ、シオル隊長が同行していたから最悪にはならないとは思いましたけど」
「美人だ!嫁も連れてきたんですか!?」
最後の一人は余計ですが、脳筋隊の皆様は口々に喜び、労い?ます。
シオル隊長さんは苦笑しながら答えました。
「私達では何も出来ませんでしたよ。
ここにいるリン様とユニコーンのリオ様の協力があってこそです」
「こんにちは、…夜だからこんばんは?えっと、リオです。」
「リンだ」
「おお!?ユニコーンが喋った!ユニコーンは喋れるのか〜」
「すげ〜!あ、こんばんはだな!」
「こちらの方はクールビューティーですね。……本当に誰かの嫁や恋人ではないのですね?」
「俺達が大変だった時に嫁探しなんてしやがってたらフクロだ、フクロ」
「そういえば、バレたのが早すぎだよな」
「お前、知らねえの?精霊がアゼル様に告げ口したらしいぜ。精霊はお喋りだからな」
「ジン。お前達の隊はアゼル様が直接来られたのか?」
ダイス隊長が他の皆様に問いかけた瞬間でした。
城門組の皆様が真っ青になりガタガタと震え始めたのは。
ひ〜〜!?何?何なんですか!?
「俺は何も知らない、聞いてない」
「竜王様、アゼル様バンザ〜イ」
「…ボクラハ、キリツヲマモリ、クニトリュウオウサマニスベテササゲマス」
ガタガタ、カクカク、まるでロボットの様に繰り返し言っています。
リオ君も異様な様子に怯えてますが、小さな声で“ヘンタイ”、と聞こえましたが気の所為ですよね?ね?
そして、アゼルさん!!
貴方一体この人達に何をしたのですか〜!??(泣)
ロボット化されていた方々を張り飛ばして正気に戻すという荒技をされて、ひとまず落ち着かれましたよ。
ある意味高校時代に、友人に無理矢理連れて行かれ翌日に熱を出した日本のお化け屋敷より怖かったです。
向こうから城の門番さんを横切り一人の男性が近づいて来ます。
少し笑っているようにも見える細目の短髪の男性です。
私の前で深々と腰を曲げました。
「遠路はるばるようこそ起こし下さいました。
私は、アゼル様の秘書官を勤めておりますサリアと申します。サリーとお呼び下さい」
…某魔法少女みたいにサリーちゃんと呼んでは駄目ですか?
「本来ならば王家一同、お出迎えをしなければならないところを、此方の事情を汲んで頂きありがとうございます。
今からご案内致します。ダイス、シオル両隊長も同行を許可しますので此方へ。後の方々は兵舎で待機していて下さい。
お待たせ致しました。此方からどうぞ」
心置き無く観光する為にも頑張りましょう。
(小話)
200年以上前のある日、ある場所、ある守護竜たち。
「ほーっほほほほほ!!」
赤い髪の女性が勝利の笑い声を上げながら下に崩れた男共を見下している。
彼女の名前はレイラ。
守護竜でルビードラゴンだ。
「我が主様とのお風呂権は同じメスである、あたしのものだよ!」
「くっ…卑怯ですよレイラ!」
地面に崩れ落ちた男の名はアゼル。彼もまた守護竜で、エメラルドドラゴンだ。
「そうだそうだ!卑怯だ!…あ、僕はまだ小さくて可愛いから我が主と一緒に入っても、何の問題も無いよね?」
この場に居る守護竜達の中で、一番若い守護竜である彼の名はルト。アメシストドラゴンだ。
「問題あるに決まっているだろ。
小さいはともかく、可愛いは違うじゃないか。
並み居る一族の成竜達を押し退けて守護竜になった時点で可愛くないよ。
ま、恨むんならオスに生まれた自分を恨みな」
「俺は別にオスに生まれて恨むことは無いが…」
ポツリと呟いたのは四方を護る最後の一人、サファイアドラゴンのガイラルだ。
「私はこの瞬間に猛烈に後悔していますよ!何故、私はオスなのですか!?
…仕方ありません。断腸の思いですがお譲りましょう。
しかし!お勉強を教える権は私が貰います!」
「あ、ズルい!!
じゃあ僕は我が主と一緒に寝る権を貰う!」
「!!それは駄目です!」
「そうだよ、それはまた別だよ!」
「じゃあ一緒に遊ぶ権のどちらかだ!」
ギャーギャー言い争っているもの達を、積み上げられた極上の絹のクッションの上から見下ろす、人形サイズのまだ幼い竜王の姿があった。
産まれてまだ間もないその瞳には明らかに侮蔑の色がある。
「はー、竜王様。ここは少々騒がしいのであちらに行きましょう。
…失礼致します」
そう言うとガイラルは竜王を持ち上げ歩き去った。
今のところ抱っこ権は彼にあるようである。




