NEETとフリーターの差ってなんなんだ?
「なあ神淵、俺今日さ…」
「…でさ、…なんだよね」
「はははは!!」
周りを取り巻く高校2年3組の神淵徹。サッカー部先発メンバーにして成績も抜群の日本中の男子が理想像とするような、いわゆる完全人間。
世の中完全犯罪があるように、その人間バージョンだ。
で、さっきなにがあったか分かっただろうか。
無視されたのだ、神淵に。
いや、正確には存在すらもわかっていないのかもしれない。無視するのが普通すぎて。
人が物体を判断するには五感を元にして割り出される。
嗅覚は臭いで判断し、視覚は見たものを眼球にさかさまに映し出しそれを脳に送って由々しき方向にもっていき、聴覚は音、味覚は食べ物を口にしたときに感じる味で、最後の触覚は触れたものが神経を通して脳に達し、感じ取る。
味覚は置いておくとして、存在を感覚としてわかっていないとなれば、それは大問題だ。
人間としてこれほどのすばらしき感覚を持っていながら使わないのだから。
省エネでいいのかもしれないが、所詮僕のような奴には。
僕だけに対して防御線を張っているのならばそれはすごいことだ。完璧な五感を持っていらっしゃる。まあおそらくそうだろうけど。だって俺の雰囲気なんてわかりやすいんだから。
MHPの歴代ハンターランクがすべてが☆4のような上位になったけれども下位防具のままで、上位モンスターを通信なしでは倒せず結局フルフルの電撃の耐性が弱く途中までは大剣でガードできたのはいいものの、フルフルが怒ってしまって咆哮、動作が速くなり耳鳴りさえも耐性に入れていないので即座に回避もできずキャンプ場へ。挑もうとするもペイントボールを忘れてどこにいるかわからず、ようやく見つけたがなぜかティガレックスが標準でいたみたいな感じで回復薬グレートを使い切り、回復薬、支給薬も使い切り、はちみつは行く途中で採取していたので薬草だけ取ろうとしたが、ティガレックスの回転とフルフルの電撃でゲームオーバー。
みたいな感じじゃないのかな。ちなみに総プレイ時間2000時間。
こんな中途半端、よく言えば普通の高校2年1組、田中寛太(姓名の差が激しい。名前は神淵と一緒だが感じ方が違うのはなんでだろうね)がこの僕だ。
一応漫画研究部に所属。成績は中の中。本当に何かもが普通の男子高校生。
本当に何かもが普通の男子高校生。
二回言ったら強調になるよね。
「ああ、今日もゲーセン行くか」
帰りのバス通学の帰り道、ラウンドワンがあるのでいつもそこで対戦型ゲームを両手でやっている。
遊戯王を一人でやるみたいなものと考えてくれて大いに結構。
あとは初音ミクアーケードや太鼓の達人など。通っているだけあってうまくはなったが、やっぱり限界も一般人。ミクでは☆8を85%、太達では☆9を魂ゲージ行くか行かないか、あとは☆10の黒薔薇をハウスバチでクリアできる程度。周りの超越神たちがマイバチを使っているのをみて
「あんなんせこいだろ、俺もあったらできる」
とか思ったので、技術室でこっそり作って(誰も気に留めてくれなかった)使ってみたが、調子乗りすぎて一日で破損。やる気をなくして低迷中。
そんな平凡な日常を送っていた彼に受信箱に「新着メール」のアイコンが。
「なんだろう…知らないアドレスだな」
そういってメールを開くと、エクセルで「セルを結合して中央揃え」みたいな感じで上から5行目から書かれてあった。
「君に会いたい」
「場所は君のアカウント上にディジタル信号として載っているだろう」
「僕は…君とは違う人生を送る人間だよ」
「君は、リアルを追い求めて儚く散ったプリムローズのような人間だと僕は踏んだ」
「000000000」
「なんだこれ。新手の迷惑メールか?」
一通り文章を読んだ後に携帯のふたを閉じる(ガラケーというところまで標準)。
「ま、いっか。僕にはコミュニケーションなんてものは必要ないのかもしれない。僕にはこの『ウブプラス』があるんだから」
ウブプラス、とは。
KANAAMIから発売されたギャルゲーの一種だ。このゲームは媒体がTSで、タッチパネルで操作できるのが特徴。体、顔などあちこち触れまくれるので、購入者は1日とたたないうちに倒れてしまう。その平均睡眠時間は15時間。人間というのは、その日に起きた出来事を夢で整理してくれるので、情報がまとまる。しかし、莫大なHな情報量はいくら男といえど消化されにくく、結果15時間に及ぶ睡眠に陥ってしまうのである。
似たようなゲームに「どぎまぎ魔女裁判!」というのも同じTSで、「SNKプレイモア」から出ている。主人公はこのゲームの主体性がつかめなかったようですぐに飽きてしまったが、ウブプラスだけはずっと続けている。
AMAZONESESのレビューを見てから買ったので、買うのが遅くなり、ネット上でのアカウントが102453909とずっと後の方のナンバーとなってしまった。
「ん…ちょっと待てよ」
000000000という番号はウブプラスと似ている。同じ9桁で、ちなみにこの会社は9億9999万9999人を目標としたゲームなので、最初からどのアカウントも9桁だ。
「まさか…!」
Wi-Xに接続してログイン画面へ。メッセージに1通。
「この文をみているころはもうすでに気付いたと思うよ」
「え、僕は誰だかって?」
「僕はこの世界のすべてを総べる」
「神だよ」
「僕のことを知りたくば、ゲームに勝っていくことだね」
「・・・」
「まあ、MHPで2000時間つぶすよりは暇つぶしにやってみるか。多分メールで送られてくるんだろうし」
ぴろりろぴろりろ、ぴろりろぴろりろ。
携帯の方に送られてきた。イヤホンをつけていたので少し気付かなかった。もちろんマナーモードにはしているが・・・。
「このゲームをクリアしてみよ」
「D.S.Ⅱ~ダルセーニョ2~」
「発売元:CIRCAS。PC」
「ソフトはすでに君のPCへインストール済みだ」
「安心したまえ、ウイルスなどは送り込んでいない」
どこかで聞いたことのある名前だ。
「あ、この間アニエイトに行ったときに…」
この前、とは4月、ダルセーニョのシリーズ3が発売されているのを見た記憶がある。絵がきれいで印象に残っていた。
「インストール済みって…本当に神なのか?」