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追放された「お掃除係」の私が、魔王城の黒ずみを落としたら世界最高の聖域になってしまった件

掲載日:2026/01/30

「リナ、お前はクビだ。

 我が『暁の剣士』パーティに、掃除ばかりしている無能はいらん」


 勇者ゲイルは、使い古された雑巾を投げ捨てるように私に告げた。


 私の役職は「雑用係」。

 主な仕事は、彼らが散らかした食べカスを拾い、血に汚れた装備を磨くことだ。


「でも、ゲイル様。装備を清潔に保たないと魔力の伝導率が落ちます。

 それに、このキャンプ地は不浄の魔気が溜まりやすい構造で……」


「うるさい! 俺たちは伝説の武具を探しているんだ。

 ちまちました掃除など、勝利の後に奴隷にでもやらせればいい。

 お前のような非戦闘員を養う余裕はないんだよ」


 仲間たちの冷ややかな視線を背に、私はパーティを追い出された。


 手元に残ったのは、愛用の『無限に泡立つ魔法の石鹸』と、ボロボロのデッキブラシだけ。


「……あーあ。せっかくピカピカにするのが楽しかったのになぁ」


 行き場を失った私は、あてもなく歩き続けた。


 気がつくと、目の前には禍々しい紫の霧に包まれた「魔王城」がそびえ立っていた。


 *


「うわぁ……何これ。汚ったない……」


 目の前の城を見て、私の「掃除魂」が震えた。


 壁には数百年分のアクがこびりつき、床は魔物の粘液でベタベタ。

 何より、漂う「瘴気」がひどい。


 これは掃除のしがいがある。


 私は正面玄関から堂々と侵入した。


「おのれ人間め、死を……って、何をしている!?」


 襲いかかってきたガーゴイルを、私は無意識にデッキブラシでなぎ払った。

 正確には、なぎ払ったのではない。


 ――磨いたのだ。


「ちょっと動かないで!

 翼の裏にコケが生えてるじゃない。

 不衛生よ!」


「ぎゃあああ!?

 しめる、石鹸がしみる!

 ……あ、あれ? 体が軽い?」


 高純度の聖水を含んだ私の石鹸で磨かれたガーゴイルは、本来の石像の輝きを取り戻した。

 さらには、邪悪な呪いが浄化され、真っ白な「エンジェル・スタチュー」へとクラスチェンジしてしまった。


 私はそのまま城を突き進んだ。


 ドロドロの廊下をモップで拭き上げ、カビだらけのカーテンを洗濯し、換気扇に詰まった闇の魔力を削ぎ落とす。


 私が通り過ぎた後には、魔王城特有の絶望感ではなく。

「レモンの爽やかな香り」が漂っていた。


 *


 ついに辿り着いた玉座の間。


 そこには、漆黒の鎧を纏った魔王が鎮座していた。

 しかし、私は彼を見るなり、ビシッと指を差した。


「あなた、その鎧。最後に手入れしたのはいつ?」


「なっ……何者だ、貴様。我が威光に恐れをなさぬとは……」


「威光っていうか、それ『サビ』よね?

 ほら、マントの裾も泥だらけ。

 魔王ならもっと身だしなみに気をつけるべきだわ!」


 私は激昂する魔王を無視して、バケツから「特製・高濃度アルカリ聖水」をぶっかけた。


「なっ、貴様、何を――!?

 ぐわあああ、温かい!?

 浄化されるううう!?」


 魔王の鎧から黒い泥のような汚れが剥がれ落ちていく。


 数分後。


 そこには、金髪をなびかせた超絶美形な青年が、ピカピカに輝く白銀の鎧を着て呆然と立っていた。


「……呪いが、解けた?

 歴代の魔王の怨念という名の『蓄積した汚れ』が、たった一杯のバケツの水で……?」


 実は、魔王城とは「汚れ」が溜まりすぎて呪いとなった場所だったのだ。


 私が城全体を掃除したことで、魔王城は――「世界で最も神聖な聖域」へと変貌を遂げていた。


「リナと言ったか。

 ……頼む、私の『宮廷洗浄師』になってくれ!

 この城を、いや、この世界を君の手で浄化してほしい!」


「ええ、いいですよ。

 ちょうどこの玉座の裏のホコリが気になってたんです」


 *


 その頃。

 勇者ゲイルたちは、魔王城に辿り着く前に全滅の危機に瀕していた。


 掃除メンテナンスを怠ったせいで剣はボロボロ。

 鎧は重いだけの鉄クズと化していたからだ。


「くそっ、なぜだ!

 なぜ攻撃が通じない!」


「ゲイル様……見て。

 装備がサビついて魔法が発動しないわ。

 リナがいないから……!」


 彼らが這々の体で魔王城に辿り着いた時。


 そこは「世界一クリーンな観光名所」として賑わっていた。

 白銀に輝く城門。咲き乱れる花々。


 そして、元魔王と仲良く並んで、元気に雑巾掛けをする私の姿があった。


「あ、ゲイル様。

 そこ、土足厳禁ですよ?

 汚い装備の持ち込みも禁止です。

 今すぐ捨てて、その辺の川で身体を洗ってきてくださいね」


「な、リナ……!?

 お前、何をしているんだ!」


 私は満面の笑みで、ピカピカに輝くデッキブラシを掲げた。


「掃除ですよ。

 世界を、ピカピカにしているんです」


 後日。

 私は「掃除聖女」として歴史に名を刻むことになるのだが、それはまた別のお話。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


「お掃除聖女、もっと見てみたい!」 「勇者たちのその後が気になる……(笑)」 など、もし少しでも「面白い」と感じていただけましたら、

広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして

応援していただけると、執筆の励みになります!

皆様のブックマークや評価が、新人作家である私にとって一番の支えです。


また次の短編でお会いしましょう!


【追記:連載版スタートしました!】

皆様の多大なる応援のおかげで、本作が全20話の連載版として生まれ変わりました!

短編では書ききれなかった魔王様との甘々なお掃除生活や、フィオナ王女の「黄金タワシ」無双、そして世界の寿命シミを洗う最終決戦まで、設定を大幅に加筆・再構成してピカピカに磨き上げました。

本日より11日間、初日は3回(12時/18時/21時)更新で、一気に完結までお届けします。

「あの掃除の続き」が気になっていた皆様、ぜひこちらからリリアたちの勇姿を見届けてください!


▼連載版はこちらから読めます▼

https://ncode.syosetu.com/n5623ls/1

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