お荷物令嬢は婚約破棄したい
「あれがダリウス様の婚約者ですの?」
「身の程知らずって言葉を知らないようだな」
「嗚呼、可哀想なダリウス様……」
そう私があの建国以来最強と名高い竜騎士ダリウス・アンディーノの婚約者。公爵家に生まれたダリウス様と違って男爵家の娘。身の程知らずなんて言葉は誰よりも痛いほど知ってるつもり。
「これはレア・ガラテア嬢、今日はお早いですね。団長はまだ訓練中ですので、団長室でしばらくお待ちください。呼んでまいります」
「いえ、予定があって早く着いてしまっただけなので。伝えて頂かなくて大丈夫ですよ。お部屋、少しお借りいたしますね」
廊下で騎士の青年に声を掛けられた。月1回、婚約者として会う約束をしているので、こうして毎月訪れ私は騎士団の面々に顔が知られている。
婚約したばかりの頃は、私の屋敷にダリウス様が来ることがほとんどだった。けれど、騎士団に入り忙しい合間を縫って来て下さるダリウス様の負担にならないようにと、ここ数年はこちらから騎士団の宿舎に会いに来ている。
「わざわざ顔を見せに来るなんて、ほんっと恥知らずね」
「団長の趣味が分からないな」
「…………はぁ」
歩けば陰口ばかりが聞こえてくる。外に出たくなくなる一方だ。社交界なんて行きたくない。
それでも、少しでも彼の評判を落とさないようにと背筋をぴんとして歩く。服も男爵令嬢としては頑張ってる方。流石にダリウス様の隣に立てる程にはならないけれど。
「お菓子、喜んでもらえるかしら」
手に持っている巷で話題の甘いお菓子の缶を見る。私なんかに会うだけに、貴重な時間を使ってしまうなんて勿体ない。ダリウス様は甘いものが好きだから、朝早くから馬車を出し、メイドに並んでもらって買ったのだ。
何度も訪れている団長室の扉を開け、ソファに腰かける。
机には大量の書類が積まれていて、仮眠用の簡易的なベッドには乱れた毛布と服が置いてあり、かなりの忙しさが窺えた。
屋敷でごろごろ過ごしている自分と比べてしまう。
「……相応しくない」
自分にかけられる悪口を、つい自分でも言ってしまう。裁縫や勉強もしている。けれど、こんなに頑張ってはいない。結果としても、出てはいない。
バンッと扉を壊す勢いで慌てた様子の男が入ってきた。あまりの音の大きさに驚き、小さく悲鳴をあげビクッとしてしまう。
「……はぁ……はぁ……すまないレディ。待たせてしまったね」
「だだ、ダリウス様っ!?いえ!私の方こそ早く来てごめんなさい!」
ダリウス様がいつもより早くそれも急いで来たということは、あの騎士の青年は訓練中のダリウス様に、私の意思に反して訪問を伝えたに違いない。
こうなることなら、どこかで時間を潰してから来ればよかった。きっと善意で伝えただろう青年を恨むことは出来ない。次回から私が改善しなければ。
「それは人気店のお菓子だね。もしかして、俺のために用意してくれた?」
抱えていた缶に気付いたダリウス様は、驚いた様にぱしぱしと瞬きをする。
「ダリウス様は甘いものがお好きなので」
「ああ。すごく好きだ……ありがとうレディ」
ふわっと嬉しそうに頬を緩ませる。こんなダリウス様の顔を間近で見る幸せは、きっと誰もが羨む。
缶をぱっと渡せばすぐに開けて一口食べてくれた。
「ん。今までで一番美味しい。ほら、レディも……口開けて?」
「ぇ、あぅ……は、はい」
あーんされるなんて思っていなかった。思わず頬が赤くなる。どうか気付かれませんように。
「んん!美味しいです!」
口の中に広がる優しい甘みに目をぱちぱちさせる。評判以上の味だ。
「もう一個食べる?」
首を傾げクッキーを手に取ったダリウス様に、私は手のひらを前に突き出し左右に首を振る。
「とても美味しいので、この幸せはダリウス様がいっぱいとってください」
「ははっレディは優しいな。じゃあ引き出しに隠しておこう」
お菓子の缶を引き出しにしまったダリウス様に、「では、これで失礼します」と告げれば、「待て待て早い」と手を掴まれた。
「机に高く積まれた書類、それに仮眠ばかりとっているようですので、これ以上忙しいダリウス様のお時間はとれません」
「…………」
「顔色も少し悪いです」
「…………」
「…………」
じっと見つめ合う。やっぱりどこか顔色が悪い。肌のツヤがない。
「来週、この埋め合わせをしよう」
「私は月1回だけでいいです」
「俺に会うのは嫌?」
「嫌というわけでは……」
むしろ私なんかと会うなんて負担は、ダリウス様の方が嫌でしょうに。婚約者として、きちんと大事にしてくれる人格者で素敵な貴方に、これ以上を求めるなんて許されるはずがないのに。
「じゃあ、来週。今度は久しぶりに俺がレディに会いにいくから」
「はい……」
レア・ガラテアとダリウス・アンディーノが婚約したのは、私が5歳ダリウス様が9歳の時だった。
小さい頃は、ダリウス様のことを明るく優しいお兄さんという認識しかしていなくて、婚約という意味もあまりよくわかってもいなかった。
けれど、社交界へデビューした時、周りからの陰口にこの婚約のおかしさを思い知らされた。見目が良く、家柄も良くて、騎士団では才能を発揮しどんどん出世していき、男女共に彼は憧れの的だった。
そんなダリウス様がエスコートした少女は、男爵家のそれも地味な娘。
陰口だけではなく、ダリウス様から少し離れた途端に悪口も意地悪もされた。
嫌な記憶の残るデビュタントから帰り、私は母に聞いた。なんでこんな婚約が結ばれたの?と。
身分差もある。どちらかが思いを寄せた訳でもない。それなのに何故?
母は、重苦しい顔で答えた。
母の妹である叔母が昔、公爵家の方から顔に傷を付けられたのだという。叔母は何も求めなかったが、申し訳なく思った公爵家の当主が、叔母の娘を公爵家に嫁入りさせると約束したらしかった。けれど、叔母は独身を貫いたため、その姉の娘、姪である私が公爵家に嫁入りすることになった。位の高い家に入ることが女性としての幸せだと思って。
「それなら、ダリウス様が可哀想じゃない」
公爵家に入り、誰もが羨む旦那様を手に入れられる幸せな私。なら、ダリウス様は?昔の誰かがした失敗のせいで地味な娘と結婚しなければいけない。自分は何もしていないのに。
私は、お荷物でしかないじゃない。
それなら、悪口も堪えよう。
それより、ダリウス様の方が可哀想なのだから。
彼の幸せを願って生きよう。
罪滅ぼしのような思いで、私はダリウス様の負担にならないよう徹した。
「ねぇねぇ!最近流行ってるこの小説!呼んだ?」
「恋愛小説?」
可愛い装丁の本をばっと見せてくるのは、親しい友達のリファン男爵令嬢。流行に敏感でオシャレにも力を入れている可愛らしい彼女から、この前ダリウス様にプレゼントした人気のお菓子屋さんを教えて貰ったのだ。
「婚約破棄から始まるお話でね!」
「婚約破棄……」
「親に決められた婚約を破棄して、愛する少女をとるんだけど」
「婚約破棄……」
「聞いてる?レア?レーア?」
そうだ。婚約を解消すればいいんだ!
なんで思いつかなかったんだろう。婚約解消をお互いが望んでいるのなら、格下の家の娘なんて欲しがる理由はない!解消出来るに決まってる!
結婚はダリウス様が騎士団長になり仕事が落ち着いたらという話だったから、騎士団長になった今はもう時間が残されていない。結婚前の白い状態でダリウス様を私から解放しなければ!
「レア、なんか使命感に狩られた顔してる」
「手紙!手紙を書かなくちゃ!便箋を買いに行くわよ!リファン」
「私も手紙書こうかな。この小説の作者さんにファンレター♪レアは誰に書くの?」
「公爵家!」
「…………高そうなやつ買わなきゃだね」
「絶対上手くいくはずだったのだけ ど」
公爵家へ手紙を出し、ダリウス様のご両親とお話させて頂ける機会をいただいて婚約解消のお話をした。けれど受け付けては貰えなかった。ダリウス様には話は通さないでおくとも言われた。忙しいのに時間をとるなんて、したくないから有難いけれど。
それどころかそろそろ息子の仕事が一段落しそうだから、結婚式の日取りを決めようなんて言われてしまった。
「昔のことなのに、なんて義理堅いの公爵家……」
これは治癒魔法を使って、叔母様の顔の傷を消すしかないのかもしれない。
「……婚約破棄……すればいいんだわ」
こうなったらもう最終手段を取るしかない
一方的な破棄だから、慰謝料を払うことになるかもしれないけれど、多少ならダリウス様から頂いたドレスやアクセサリーを売って足しにしよう。換金するのは申し訳ないけれど、ダリウス様のためでもあるのだから。
「お嬢様、ダリウス様がいらっしゃいましたよ」
「今行くわ」
先週の埋め合わせとして、久しぶりに屋敷にやってきた婚約者を出迎える為に私は急いで玄関へと向かった。
「やぁレディ。今日はたっぷり夕方までエスコートするから。さ、お手を」
「は、はい」
完璧な所作でエスコートされ馬車へと乗る。
ダンスパーティーに行く時など、普段なら向かい合って座るのに今日は隣にダリウス様が座って、手もぎゅっと指を絡められていた。顔が熱い。
「これからレディの好きなとこにいくよ」
「私の好きな……ところ?」
「魔道具の市場。巨匠アスピダの作ったものがいくつか出品されるらしい」
「あ、アスピダの!?魔道具!?それは一目見たいです!フォルムの美しさで彼女の右に出るものはいません!効果も実用的なものばかりで、無駄のない美しさといったら……あ、し、失礼しました」
手を握られていたままブンブン振ってしまった。品がない。嬉しすぎて周りが見えていなかった。
「その後はカフェで紅茶とスコーン。大通りの老舗のテラス席を予約したんだ」
「それってあの先代の女王陛下も愛したとされる有名な!?予約は2年待ちと言われてましたよ!?……あ、また失礼を…っ!」
またブンブン振ってしまった。
「ははっ。喜んでもらえて嬉しいよレディ」
こうやって好きなことを覚えていてくれて、エスコートまでしてくれる。私には勿体ない人。ダリウス様に相応しいのは、美しくて品があって、才能があって位も高い人なのに。
例えば、
国民から愛される末の王女様。宰相閣下の一人娘。隣国の第2王女。国三本の指に入る公爵家の才女。美しい容姿の歌姫。異世界から来た聖女様。
彼の隣に立つに相応しい人たち。
「そういえば、王女様とのお茶会はいかがでした?」
末の王女様はダリウス様のことを気に入っている。
私がいなければ、婚約を申し込まれてもおかしくなかった。国民から愛される王女と、歴代最強と謳われる竜騎士との婚姻。国民全員から望まれるものだ。
「素敵な茶会だった。騎士団長としての参加だから、あまりお菓子が食べられなくて悲しかったけどね」
「ふふっお菓子好きなの隠さなくてもいいのに」
「俺だって男なんだよ。カッコつけたいんだ」
お菓子を幸せそうに頬張る姿は、普段とのギャップで可愛いのに。
「嫉妬でもしてくれた?」
「いいえ」
嫉妬ではなくむしろその逆で、ダリウス様と誰がお似合いか考えている……なんてことは言わないでおこう。
優しいダリウス様なら、思いがなくても婚約者を不安にさせたことを謝ってしまいそうだから。
「さて、市場に着いたみたいだ」
話をしていると時間はあっという間に過ぎていく。
話し上手のダリウス様は馬車から先に降り、私に手を伸ばす。彼の手に自身の手を乗せ、これから行く市場に胸をときめかせた。
そういえば、魔道具を作るアスピダは市場に出品する時いつも事前連絡なしで驚かせることで有名なのに、何故ダリウス様は知っていたのだろう?
任務で知った?交友関係は広いからもしかしてご友人?
嬉しすぎたからあまり考えていなかった。
「今日のドレスと髪型とても似合っていて可愛い。俺の贈ったネックレスも付けてくれたんだ?」
さらっと褒め言葉を言いながら、髪をひと房とっては口付けを落とす。頭で考えていたことが真っ白になり、顔は真っ赤になった。
「はは、はい。ダリウス様から頂いたネックレスに似合う様に……選びましたので……」
婚約破棄をするし、これが最後のデート。
少しでも良い思い出が欲しいなんて望んでしまった。
「そうか……」
嬉しそうに目を細め、ネックレスをすっと指で持ち上げる。首周りの肌にダリウス様の指が触れ、吃驚してぴくっと身体が跳ねた。心臓に悪い。
「また贈る」
手を持って指に軽くキスされる。
もう何も口に出せなかった。
キャパオーバーです。
「あれって、ダリウス様じゃない?」
「えええ!?噂以上の美形だなありゃ!」
「一緒の女は何?侍女?」
一応婚約者です。
もうすぐただの他人になりますけど。
慣れた周囲の声もこれでお別れ。
これからはきっと、お似合いの2人なんていわれる女性が彼の隣に立つ。
魔道具の市場からカフェへと移り、甘いパンケーキにフォークを刺す。私の前に置かれているのは紅茶とパンケーキ。対面するダリウス様はブラックコーヒーだけ。ダリウス様の家系は代々騎士をしていて、幼い頃に父親から甘いものなど騎士は嗜まない!と禁止されてから彼は外で甘いものを食べない。
「ダリウス様、どうぞ」
甘いもの好きなダリウス様の熱烈な視線をちらちらと受けていたパンケーキをそっと唇に押し当てる。
「レディのお願いは断れないね」
ふわりと笑ってダリウス様は口に含む。
騎士は女性に優しくあるべきという信条を逆手にとって、私はダリウス様にお菓子を贈った。それはダリウス様のお父様からも許された行為。
小賢しい私。
こういうところは頭が回るなんて恥ずかしい。
「あ、あの……ダリウス様……ですよね?少しだけでもお話させて頂けませんか?」
綺麗で可愛い貴族の女性二人が話しかけてきた。
傍には従者が三人いる。それなりの身分の方なのだろう。
「すまない。デート中なんだ……また今度」
二人はダリウス様から私へと視線をうつす。「これが?」「居たの?」目は口ほどに物を言う。
そう。こんなものが彼の婚約者。
「レディ、少し席を外すね」
そう言ってダリウス様はカウンターの店員のところに行ってしまった。ご令嬢達はそそくさと自分の席に戻っていく。
ぱくぱくと甘いパンケーキを食べる。
美味しい。
幸せをいっぱい噛み締めなきゃ。
嫌なことを考えないように。
店員への用事が終わってこちらに戻ろうとするダリウス様にまた誰かが話しかけていた。彼は人気者なのだ。
知り合いだったようで、しばらく談笑してから席に戻ってきた。
「待たせてしまってすまない。仕事で世話になった人達なんだ」
「素敵なご夫婦でしたね」
「……ああ。憧れだね」
先程まで話していた夫婦への眼差しは温かい。
二人はお似合いの夫婦だった。
私とダリウス様とは違う。
カフェから出る時に店員にお土産を貰った。
どうやらダリウス様が注文したらしい。
クッキー、マフィン、ドーナツと色々入っている。
紙袋が三つも。大変お気に召したらしかった。
それから少し公園を散策して、日が傾いた頃に行きたい場所があると告げられ、騎士団の宿舎に着いた。
さらに案内されるとダリウス様の相棒である竜のフォティアがいた。
フォティアは私に気付くと顔を寄せてくる。
猫のようにごろごろと喉を鳴らした。
懐いてくれているけれど、この子にも気軽に会えなくなる。
だってダリウス様は本来遠い存在なのだから。
「ダリウス様、私貴方に伝えたいことがあるんです」
「改まってとは珍しいねレディ」
もうデートも終わりの頃。
お別れを告げなくてはいけない。
「私は……ダリウス様との婚約を破棄します」
一呼吸入れて、絞り出した宣言。
「…………。レディ、おいで」
「?」
何を言われるかと構えていたのに、少しの沈黙の後、優しくかけられた言葉の意味がわからず、言われるがままダリウス様のもとへ歩く。
「わっ」
抱きかかえられたと思ったら、竜の背中に騎乗していた。
「フォティア」
ダリウス様も後ろへと乗り竜の名を呼べば、翼を広げて空へと上がっていく。
「理由を教えてもらってもいい?」
天高く上った所で、ダリウス様は話を切り出した。
「私は、ダリウス様に相応しくありません」
「それはどうして?」
ダリウス様は優しく落ち着いた声色で話す。
一言も逃すことなくゆっくりと聞いてくれる。
「なんの取り柄も無い……地味で……位も低い女だからです。ダリウス様にとって価値ある人間ではありません。王女様や高位貴族のご令嬢、美しい歌姫や聖女様……ダリウス様の隣に立つべきはそういう方々です」
「俺の意思は不必要?」
「いいえ!必要です。ダリウス様が愛した女性がいらっしゃるのなら、それが一番です。例え平民でも貴方が見初めた人なら」
貴方が幸せになるなら。
他人がした罪のせいであてがわれた私以外なら。
「俺が愛しているのは君だよ。レア」
「……?」
「俺の一番は、君しかいない」
「……いえ、もう良いのです。他人の罪を背負わないで下さい。ダリウス様は優しすぎます」
責任感が強く優しい人。
でも、その優しさは少し辛い。
完璧な貴方の唯一の汚点、それが私。
「俺が子供の頃、大好きなお菓子を食べるのは父から禁止されていたよね。父は怖いから俺は素直に言いつけに従ってた。正しいと思って疑うこともなかった。でも、君は俺が食べたそうにしているのに気付いて、陰でこっそり分けてくれたね。分けられない時は、婚約者という立場を使って食べさせてくれたりして……だから父に何も言われなかった」
「……それは……小賢しいだけです」
「俺はそれが凄く嬉しかった。小さい君を守らなくてはと思っていたのに……君に支えて貰ってた。覚えてるかな……君が友人に俺の事どう思ってるか聞かれて、君は「優しいお兄ちゃん」って言ったんだ。俺は悲しくなって傷付いて、そこで君への恋心を自覚したんだよ。そこから俺は君のことをレアちゃんじゃなくて一人の女性として、レディって呼ぶことにしたんだ」
「………わ、わた、私なんかより、ダリウス様をもっとちゃんと支えて下さる方が」
「俺の立場や体調もいつも気遣ってくれたね。周りが俺を期待に満ちた瞳で見る中、君だけは俺の心配をしてくれてた。隠し事は結構得意なんだけど、君は俺を色眼鏡で見たりはしないから。怪我してもすぐバレた。変な歩き方とか、手を庇って使ってるとかね」
「そんな事は……」
「触れたり、甘い言葉に弱くてすぐ赤くなるところも好きだよ。もっと見たいけど、意地悪し過ぎて君に嫌われたくないから我慢してる」
「!?」
顔を少し逸らしたりしてたのに赤面がバレてる!?
「好きな物に素直に飛びついて喜ぶとこも可愛くて好き」
「こ、子供っぽいってことですよね?」
「散策が好きだから少し日に焼けた肌も健康的で、目がくりっと丸いとこも、愛しいって思ってる。ぷっくりとしたその唇に、子供の頃してくれたみたいにお休みのキスをして欲しいとも」
「…………」
「俺は君が納得するまで続けるよ。好きな人からされた別れ話に、素直に頷くほど俺は出来た人間じゃない」
「…………」
「何年かけてもいい。俺の想い人も婚約者も君で、俺が結婚したいのはレア・ガラテアただ一人だけだ」
「ダリウス様が私を……好き?」
引く手数多の国一番の竜騎士様が?
「レディは?俺のこと嫌い?」
「き、嫌いになるわけありません!」
国で一番強くて、かっこよくて、誰にでも分け隔てなく優しく手を伸ばす素敵な人で、
私が隣に立つのはおこがましいほどの
でも、
だからこそあっさりと好きになってしまった。
もうずっと前から。
一目見たときから意識はしてた。
素敵だからと一歩引いて接してきた。
眩しい人。大好きな人。
「私なんかで……い、いいんでしょうか」
「君以外を娶る気はないよ」
「…………あぅ」
「ねぇ、早く俺のものになって?」
「……んぐぅ」
「ははっ真っ赤」
「…………!!」
「お願いだレア。俺以外のお嫁さんにならないで」
後ろから覆い被さるようにぎゅっと抱き締められ、耳元で囁くように言われたら、もうダメだった。
「………………はぃ」
「……良かった。やっと俺の片思いが終わった」
左手を持ち上げられ、薬指に指輪が通される。
この洗練されたデザイン。
魔力の籠った石。
アスピダの魔道具だ。
「……結婚、してもいいかな?」
「……よろしく…………お願いします」
私、この人と結ばれるんだ。
結ばれていいんだ。
ぽろぽろと嬉しくて涙が溢れてくる。
「愛してるよ……レア」
「私も……ダリウス様が大好きです」
こうして、
お荷物だから、
言っていいものではないと、
思っていいものではないと、
縛り付けていた言葉を、
私は大好きな人に告げたのだった。




