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追放令嬢はゲーム知識と生活魔法でダンジョンを攻略する ~もふもふな相棒と始める、自由気ままな冒険者ライフ~  作者: 速水静香
第三章:忘れられた鉱山

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第十四話:物理で考える、ケーススタディ

 私流のアンデッド浄化法は思った以上に効果てきめんだった。

 あれから私たちは鉱山の通路をさらに奥へと進んでいたけれど、道中で遭遇するスケルトンたちはもはや何の障害にもならなかった。黒檀の杖から放たれる浄化の光のシャワーを浴びせてやれば、彼らは一瞬にして呪いから解放され安らかな砂の山へと還っていく。その光景はもはや作業と呼んでも差し支えないほどだった。


「ふう、これで十体目かしら。思ったより数が多いわね」


 通路の角を曲がった先で待ち構えていたスケルトンの小隊を、杖の一振りでまとめてお掃除し私はほうと一つ息をついた。魔力の消費はこの杖のおかげで驚くほど少ない。これならあと百体くらい出てきても息切れ一つしないだろう。


「わふん!」


 私の足元でフェンが『任せておけ!』とでも言うように、頼もしく一声鳴いた。

 アンデッドとの戦闘では完全にお留守番状態になってしまっている彼だけど、腐るでもなく常に周囲への警戒を怠らないでくれている。本当に出来た相棒だ。


「ありがとうフェン。でも、もうアンデッドは出てこないかもしれないわ。見て、あそこ」


 私が杖の先端で示した先、通路の壁の様子が少しずつ変わってきているのが分かった。

 これまではつるはしで無造作に掘られただけの、ごつごつとした岩肌が続いていた。けれどこのあたりから壁や床が、まるで定規で引いたみたいに綺麗に切りそろえられた石材で舗装されるようになってきたのだ。

 壁には等間隔で燭台が設置されていた痕跡があるし、天井も頑丈な石のアーチで補強されている。


(これは……ドワーフたちが暮らしていた居住区画かしら?)


 私のゲーマー脳がダンジョンの構造変化から、そのエリアの役割を推測する。

 かつてこの鉱山で働いていたドワーフたちが寝起きし、食事をとっていた場所。そう考えるとそこら中に転がっている錆びついたつるはしや壊れた木箱にも、どこか生活の匂いが感じられるようだった。

 しばらく進むと道はひときわ大きな空間へと繋がっていた。

 そこはまるで地下に作られた神殿のように、広大で天井の高い巨大なドーム状の空洞だった。

 中央には今はもう枯れてしまった大きな噴水の跡があり、その周りを囲むようにしていくつもの横穴が口を開けている。おそらくあれらがドワーフたちの個室や、共同の食堂だったのだろう。

 黄金色の光球がその静まり返った広間全体を、ぼんやりと照らし出す。

 何十年、いや何百年もの間、誰の足音も響くことのなかったであろう忘れ去られた都。

 そのどこか物悲しく、そして荘厳な光景に、私とフェンはしばらく言葉もなく立ち尽くしていた。


「すごい……。こんな場所が地下にあったなんて……」


「くぅん……」


 フェンもその圧倒的なスケールに気圧されたのか、私の足元にそっと寄り添い不安そうに喉を鳴らした。

 広間の中にはアンデッドの気配はなかった。

 けれど代わりに、もっと別の重苦しくて無機質な圧力が空気全体を支配しているようだった。

 それは生物が放つ敵意や殺気とは全く質の違う何か。

 ただそこに『在る』だけで、周囲の空間を捻じ曲げてしまうような圧倒的な存在感。


「……いるわね。この先に」


 私はごくりと唾を飲み込んだ。


 広間の一番奥。


 ひときわ巨大な観音開きの石の扉が、まるでこの都の玉座を守る最後の門番のようにどっしりと構えている。

 受付嬢さんが言っていた、二組のCランクパーティーを退けたというこの鉱山の番人。

 その扉の奥から、あの無機質な圧力がびりびりと肌を刺すように伝わってくるのだ。


「準備はいい、フェン?」


「がるるる……!」


 私の問いかけにフェンが低い唸り声で応える。彼の全身の毛がびりと逆立っているのが分かった。彼もまたこの扉の奥にいる存在の、ただならぬ気配をはっきりと感じ取っているのだ。

 私たちは顔を見合わせ、こくりと一つ頷き合う。

 そしてゆっくりと、その巨大な石の扉へと歩みを進めた。

 扉には複雑な幾何学模様がびっしりと彫り込まれている。ドワーフの美意識の高さがうかがえる見事な装飾だ。

 私はその冷たくて硬い石の扉に、そっと両手をかけた。

 見た目通りひどく重い。

 けれど今の私には、この黒檀の杖から流れ込んでくる力強い魔力がある。


「―――開け!」


 私が気合と共にぐっと扉を押し込む。


 ゴゴゴゴゴゴゴ………。


 長い年月閉ざされていたであろう扉が、地響きにも似た重々しい音を立ててゆっくりとその向こう側の光景を現し始めた。



「…………これは、また……」


 思わずぽつりとそんな言葉が口をついて出た。

 扉の奥は先程の広間よりもさらに巨大な、円形の闘技場のような空間になっていた。

 壁も床も天井も、全てが寸分の狂いもなく磨き上げられた黒曜石のような滑らかな石材で作られている。

 そしてその闘技場のちょうど真ん中。

 一体の巨人が静かにそこに立っていた。

 いや、巨人ではない。

 それは岩を組み上げて作られた、巨大な人型の人形だった。

 身長は家の一階部分をゆうに超えるだろう。樽のように太い胴体に丸太のような腕と足。顔に当たる部分には目や鼻といったパーツはなく、ただのっぺりとした石の表面が広がっているだけ。

 けれどその全身には、まるで血管のように青白い光を放つ紋様がびっしりと刻み込まれていた。その紋様がまるで呼吸をするかのように、ゆっくりとそして規則正しく明滅を繰り返している。


 ゴーレム。


 魔法によって命を吹き込まれた石の巨人。

 あれがこの鉱山の番人に違いない。


「ぐるるるるるるる……!」


 私の隣でフェンが全身の毛を逆立て、戦闘態勢に入っている。無理もない。あれだけの巨体を前にすれば、どんな生き物だって本能的な警戒心を抱くだろう。

 ゴーレムは私たちの登場に気づいているようだった。

 顔はない。けれどその巨体が、明確にこちらを『認識』しているのが肌で感じられた。

 ゆっくりと、ぎ、ぎぎぎ、と。

 石と石が擦れ合う不快な音を立てながら、ゴーレムがその巨大な腕を持ち上げ始めた。


(……来る!)


 直感した、その瞬間。


 ごうっ!


 と、風を唸らせる音と共に、岩の塊としか言いようのない巨大な拳が私たちめがけて振り下ろされた。

 その一撃はもはや攻撃というよりも災害に近い。小さな家くらいなら一撃で木っ端微塵にしてしまうだろう。


「フェン、下がって!」


 私は叫ぶと同時にフェンの体を抱えて、真横へと飛び退いた。

 直後。

 私たちがさっきまで立っていた場所にゴーレムの拳が叩きつけられ、ずどおおおおおおんっ! という鼓膜が破れそうなほどの凄まじい轟音が闘技場全体に響き渡った。

 衝撃で足元の床がびりびりと震える。

 見れば硬い石畳の床が、まるでクレーターのように大きく陥没しそこから放射状に亀裂が走っていた。


「……あ、あぶなかった……」


 冷たい汗が背中をすっと流れ落ちる。

 今の攻撃をまともに食らっていたら、私とフェンは肉片一つ残さずこの石畳の染みになっていただろう。


(これがCランクパーティーを二組も退けた番人の力……! 冗談じゃないわ、あんなのどうやって倒せっていうのよ!)


 私の心に焦りがじわりと広がっていく。

 恐怖はない。けれど目の前の『攻略不可能なクソゲー』を前にした時のような、絶望的な徒労感が思考を鈍らせる。


「がるるっ、わんっ!」


 私の腕の中から飛び出したフェンが反撃とばかりに、ゴーレムの足元へと銀色の弾丸となって突っ込んでいく。

 そしてその岩の足首に自慢の牙を立てて、がぶりと噛みついた。

 けれど。


 ぎゃりりりりりっ!


 と、まるで黒板を爪でひっかいた時のような耳障りな音がしただけだった。

 フェンの牙はゴーレムの岩の装甲に白い引っかき傷を一つつけただけで、全く歯が立たない。


「ぶぉぉぉぉん……」


 ゴーレムは自分の足元でちょこまかと動き回る小さな生き物を、鬱陶しい虫でも払うかのように巨大な足で無造作に踏みつけようとしてきた。


「フェン、戻って!」


 私は叫び、フェンはその俊敏さを生かしてぎりぎりのところでその一撃を回避する。


 だめだ。


 物理攻撃が全く通用しない。

 フェンの攻撃ですらあの通りだ。私のナイフなど爪楊枝にも等しいだろう。


(だったら魔法は……!?)


 私は黒檀の杖を再びゴーレムへと向けた。

 この杖の力を今こそ見せてやる。

 アンデッドを砂に変えたあの浄化の光を、もう一度。


「『浄化の光』!」


 杖の先端から放たれた清浄な光の奔流が、ゴーレムの巨大な胴体へとまっすぐに直撃した。

 けれど。


 ぱち、ぱちぱち……。


 光はゴーレムの全身に刻まれた青白い紋様に触れた瞬間、まるで静電気のようにあっけなく弾き飛ばされてしまった。

 ゴーレムの体には焦げ跡一つついていない。

 それどころかその紋様の輝きが、心なしか先程よりも増しているようにさえ見える。


(うそ……!? 魔法が効かない……!? それどころか吸収してる……!?)


 受付嬢さんが言っていた最悪の事実。


『ゴーレムには魔法がほとんど効かない』


 それが今、目の前で身をもって証明されてしまった。

 物理攻撃も魔法攻撃も通用しない。

 ただ圧倒的なまでの破壊力と鉄壁の防御力だけが、そこにある。

 まさしく動く要塞。


(……つ、詰んでるじゃない、これ……!)


 私の頭の中が真っ白になる。

 違う、白ですらない、何も無い完全な思考停止。

 これまでの冒険でどんな困難な状況に陥っても、必ずどこかに攻略の糸口はあった。私の前世のゲーム知識と生活魔法の応用力があれば、どんな壁だって乗り越えられるはずだった。


 でも今度ばかりはその糸口が全く見えない。


 ただ圧倒的な『理不尽』だけが目の前にそびえ立っている。

 ゲームで言えば、絶対に勝てないように設定された強制敗北イベント。


「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉん……!」


 ゴーレムが再びその巨大な拳を天高く振り上げた。

 今度こそ逃げ場はない。


(……ああ、もうどうでもいい)


 考えることすら放棄した、その瞬間だった。


 ぎ、ぎぎぎぎぎぎぎ…………。


 振り下ろされる拳が私の目の前でぴたりと止まった。

 いや、止まったのではない。

 ゴーレムのその動きが明らかに先程よりも鈍くなっているのだ。

 石と石が擦れ合う音が、まるで油の切れた機械のようにぎこちなく耳障りに響いている。


(……ん? 動きが鈍い……? どうして……?)


 私の停止しかけていた思考が、再びゆっくりと動き始める。

 なぜゴーレムの動きが鈍くなったのか。

 何かきっかけがあったはずだ。

 私は必死に記憶を巻き戻す。

 そうだ。私が浄化の魔法を使った後だ。

 でも魔法は効かなかったはず。


 いや、違う。


 浄化の魔法は確かに攻撃としては無効化された。

 けれどあの光の奔流は、確かにゴーレムの全身に降り注いだのだ。

 そして私の浄化魔法には、おまけの効果がある。


(……水)


 そう、私の浄化の光は清らかな『水』の性質をわずかに含んでいる。

 あの時ゴーレムの全身は一瞬だけ、浄化の光つまり『水』でびっしょりと濡れたのだ。

 そして、その水分がゴーレムの石と石の隙間、つまり『関節』部分に染み込んだ。

 それが潤滑剤の役割を果たしていたであろう、魔法の効力を弱めてしまったのではないか。


 だから、動きがぎこちなくなった。


 その突拍子もない仮説が私の頭の中に閃光のようにきらめいた、その瞬間。

 公爵令嬢アリアとしての私の意識のさらに奥深く、ディスプレイの前でコントローラーを握りしめていた、あの頃の記憶が思考を加速させる。


(そうか、そういうこと……! これはギミックボスで、弱点は関節!)


 私の『水』の性質を帯びた浄化魔法が、偶然にも潤滑を妨げる『スロウ』のデバフとして機能したんだわ!


 デバフ!


 敵を弱体化させ、動きを阻害する特殊効果。けれど、水だけでは効果が薄い。

 もっと強力なデバフを、意図的に作り出す必要がある。


 でも、どうやって?


 私は考察を深める。相手は生き物じゃない。そして、この世界に電子部品はないだろう。しかし、目の前のゴーレムは紛れもなく『機械』だ。

 それはまるで、石でできた巨大な機械人形――。


 機械の動作に影響を及ぼすもの。機械をスムーズに動かすために必要なもの……。


 ――機械の潤滑油。それは水によってスロウのデバフとして機能した。


 さらに潤滑を妨げるもの……潤滑油の、真逆の性質を持つもの。例えば、粘度の高い、べとべとした液体を関節に流し込んだら……?


 絶望の色に染まっていた視界が、一瞬にして鮮やかな攻略ルートの色に染め上げられる。


「フェン!」


 私は隣でまだ警戒を解いていない相棒に、小さな声でしかし力強く話しかける。


「どうやら戦闘は回避できそうよ。それどころか、この子をただの石ころに変えてやれるかもしれないわ」


「くぅん?」


 フェンが不思議そうな顔で私を見上げる。


「これからちょっとした化学実験を始めるの。あなたはあの子の注意をできるだけ引きつけておいて。でも絶対に攻撃を食らっちゃだめよ。いい?」


「わふん!」


 私のいつもの調子が戻ったことに安心したのか、フェンは私の意図を正確に理解したように力強く頷いた。

 よし、決まりだ。


「オペレーション『ゴーレムは物理法則で攻略!』、スタートよ!」


「わんっ!」


 私の合図と共にフェンが矢のように飛び出した。

 彼はその小さな体と俊敏さを最大限に生かし、ゴーレムの足元をまるで踊るように駆け回る。

 右へ、左へ。

 その予測不可能な動きに、動きの鈍くなったゴーレムは完全に翻弄されていた。


「ぶぉん、ぶぉん!」


 巨大な拳や足をめちゃくちゃに振り回すが、そのどれもが空を切るばかり。

 よし、フェンが見事にヘイトを稼いでくれている。

 その隙に私は黒檀の杖を地面にとんと突き立てた。


(イメージするのは原油。ドロドロとした黒くて粘り気の強い、あの液体……!)


 土魔法と水魔法の複合魔法。

 地面の中の炭素を多く含んだ鉱物と地下水脈の水分を、魔力で強制的に化合させ粘度の高い油状の液体を生成する。

 前世の化学の知識がこんなところで役に立つなんて。

 人生何が幸いするか分からないものだ。

 杖を突き立てた地面がぼこりと小さく盛り上がり、そこから黒くてどろりとした液体が泉のように湧き出し始めた。


「よし、できたわ! 特製の『スライムオイル』よ!」


 私はその粘度の高い油を水魔法で操作し、手のひらほどの大きさの黒い球体へと変えていく。

 そしてそれを、フェンが注意を引いているゴーレムの関節部分めがけて狙いを定めた。

 まずは膝。


「いっけええええっ!」


 私が杖を振るうと黒い油の弾丸が、しゅるるると糸を引くようにして飛び出し、正確にゴーレムの膝の関節の隙間にべちゃりと着弾した。

 油はその粘着性で石と石の隙間にじわりと染み込んでいく。


「?????」


 ゴーレムが困惑したような動きを見せた。

 右足を前に出そうとするが膝がうまく曲がらない。まるで関節に強力な接着剤でも流し込まれたみたいに、ぎしぎしと嫌な音を立てている。


(よし、効いてる!)


 私は確かな手応えを感じ、第二、第三の油の弾丸を次々と生成していく。

 肘、肩、股関節。

 フェンが見事な連携でゴーレムの注意を逸らしてくれるその一瞬の隙を突いて、私はゴーレムのありとあらゆる関節部分に特製のスライムオイルを正確に撃ち込んでいった。


 ぎ、ぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!


 やがてゴーレムの動きは完全に、錆びついた機械のようにぎこちなく滑稽なものになっていた。

 腕を上げようとすれば肩が動かず。

 足を前に出そうとすれば膝が曲がらず。

 その巨体はもはやただの、動くのがひどく苦手な岩の塊と化していた。


「よし、第一段階成功! フェン、とどめよ!」


「わんっ!」


 私の言葉にフェンが大きく後ろへと跳躍し、ゴーレムから距離を取る。

 私はこれまでで最大量のスライムオイルを、巨大な一枚のシート状に変化させた。

 そしてそれを。

 ゴーレムの顔があったであろう、のっぺりとした部分めがけて思いっきり投げつけた。

 イメージは顔面への巨大なパイ投げ。


 べっちゃあああああああっ!


 と、実に締まらない音を立てて黒い油のシートが、ゴーレムの顔面を完全に覆い尽くした。

 ゴーレムの唯一のセンサーであったであろう、青白く光る紋様が分厚い油の膜の下に完全に隠れてしまう。


 突然視界を奪われたゴーレムは、完全にパニックに陥っている。


 ぎっ、ぎっ、ぎっ、ぎっ…………。


 手足をめちゃくちゃにばたつかせているようだ。

 けれど、その動きは油で固められた関節のせいでひどく鈍重だ。


 前が見えず体も思い通りに動かない。

 その姿は、単にその場でよろよろとふらついているだけ。

 もはや、何の脅威もそこにはなかった。


 かつての無敵の番人の姿はどこにもない。

 そこにいるのはただの方向感覚を失った、意味ない動作をゆっくりと繰り返すだけの、巨大な石の人形がそこにいた。


「……ふう。完了、かしらね」


 私はぱんと手の見えない汚れを払った。

 目の前では巨大なゴーレムがまだ、うろうろよろよろと意味のない動きを繰り返している。


「わふん!」


 フェンがどうだ! とでも言うように私の足元に駆け寄ってきて、尻尾をぶんぶんと振っている。


「ええ、フェンのおかげよ。ありがとう。あなたの見事な陽動がなければ、こうはいかなかったわ」


 私は最高の相棒を力いっぱい撫でてやった。

 さて、と。

 私は目の前の、もはや無力と化した元・番人を見つめる。

 このまま放置して先に進むだけ。

 破壊する必要も倒す必要も何もない。

 これもまた私流の、非殺傷攻略法だ。


「さあ、行きましょうか、フェン!」


「わふん!」


 私たちはその場でまだあっちへふらふら、こっちへふらふらしている巨大な石人形の横を、悠々と通り過ぎていく。

 魔法が効かないなら物理で殴ればいい。


 いや、違う。


 魔法が効かないなら、物理『法則』で攻略すればいいのだ。


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お菓子作りのための追放スローライフ~婚約破棄された公爵令嬢は、規格外の土魔法でもふもふ聖獣やゴーレムと理想のパティスリーを開店します~


【化学調味料/飯テロ/日本食】
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