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追放令嬢はゲーム知識と生活魔法でダンジョンを攻略する ~もふもふな相棒と始める、自由気ままな冒険者ライフ~  作者: 速水静香
第三章:忘れられた鉱山

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第十二話:冒険は準備が九割

 最高の我が家を手に入れてから、数日が過ぎた。

 すっかり私たちの生活拠点として馴染んだこの家での朝は、決まって極上の目覚めから始まる。小鳥のさえずりをBGMに、新しく設えたリネンのカーテンの隙間から差し込む柔らかな光で目を覚ます。隣には、世界で一番温かいもふもふの塊が、すーすーと幸せそうな寝息を立てている。これ以上の幸福が、この世にあるだろうか。いや、ない。断言できる。


「ん……おはよう、フェン」


「くぅん……」


 私がその銀色の体を優しく撫でると、フェンはまだ眠たげに一度だけ身じろぎして、私の腕の中にさらに深く顔をうずめてきた。その、私の腕に顔をうずめてくるその様子が愛おしくて、私はもうしばらく、この至福の時間を味わうことにした。

 冒険に出ていない日の私たちの暮らしは、ひどく穏やかで、そして満ち足りたものだった。

 朝は、庭でフェンとボール遊びをしたり、私が魔法で作ったアスレチックで彼の運動能力を思う存分発揮させてあげたりする。昼は、街へ買い物に出かけ、新鮮な食材を仕入れては、新しい家のキッチンで腕を振るう。夜は、広々としたお風呂で一日の汗を流し、暖炉の前でぱちぱちと爆ぜる炎を眺めながら、二人でうたた寝をする。

 それは、私がこれまでの二つの人生で、一度も手に入れることのできなかった、温かくて、きらきらとした、宝石みたいな毎日だった。


(……でも、そろそろ、ね)


 そんな穏やかな日々は、もちろん最高だ。けれど、私の心の奥底では、もう一つの欲求が、むくむくと頭をもたげ始めていた。

 もっと、スリルのある冒険がしたい。

 まだ見ぬダンジョンに、挑みたい。

 私の、ゲーマーとしての血が、うずうずと騒ぎ始めているのだ。

 何より、先日手に入れたばかりの、この新しい相棒。

 私はベッドの脇に立てかけておいた、黒檀の杖に目をやった。夜の闇をそのまま固めたかのような、美しくもただならぬ気配を放つ、私だけの専用杖。その力を、まだ一度も、本番で試していない。

 こんな逸品を手に入れて、家でのんびりしているだけなんて、宝の持ち腐れもいいところだ。


「……よし」


 私は、意を決してベッドから抜け出した。


「フェン、起きなさい! お仕事に行くわよ!」


「わんっ!?」


 私の突然の宣言に、寝ぼけ眼だったフェンが、ぴょこんと顔を上げた。その大きな黒い瞳が、「え、今日から!?」とでも言いたげに、ぱちくりと瞬いている。


「ええ、今日からよ! のんびりした休日は、昨日で終わり! 新しい冒険が、私たちを待っているわ!」


 私が高らかにそう宣言すると、フェンは一瞬だけきょとんとした顔をしていたが、すぐに全てを理解したようだった。

 彼はベッドから軽やかに飛び降りると、その場で一度だけ、ぶるぶると体を震わせ、完全に出撃準備完了といった様子を見せた。


「わふん!」


『準備万端だぜ!』とでも言うように、彼は私の足元で、力強く一声鳴いた。

 その頼もしい姿に、私は満足げに頷いた。

 さあ、行こうか。

 新しい杖と、最高の相棒と一緒に、次なる冒険の舞台へ。



 ぎぃ、と。

 すっかり聞き慣れた音を立てて、冒険者ギルドの重い扉を押し開ける。

 その瞬間、中にいた冒険者たちの視線が、まるで申し合わせたかのように、一斉にこちらへと注がれた。


「お、おい、見ろよ……」

「『ソロコンビ』のお出ましだぜ」

「げっ、休みはもう終わりかよ。次は一体、何をやるつもりなんだ……?」


 あちらこちらのテーブルから、ひそひそとした囁き声が聞こえてくる。

 その声には、もはや以前のような単なる好奇心だけでなく、畏怖と、そしてほんの少しの期待が織りなす独特の空気を感じた。

 『湿地の迷宮』の一件以来、私たちはこのギルドで、一種の伝説、あるいは歩く災害のような扱いをされるようになってしまったらしい。まあ、悪くはない。むしろ、注目されるのは気分がいい。


「あら、アリアさん! いらっしゃい!」


 カウンターの向こうから、いつもの快活な声が飛んできた。

 受付嬢さんが、満面の笑みでぱたぱたとこちらに手を振っている。


「こんにちは。しばらくご無沙汰しておりました」


「ええ、本当に! 新しいお家での暮らしは、いかがですか?」


「最高です。この子が、毎日庭で楽しそうに走り回っています」


「わふん!」


 私の言葉を肯定するように、フェンが胸を張って一声鳴いた。


「まあ、それはよかった! フェンも、すっかりこの街の有名人ですよ! 子供たちが、いつも『銀色のわんちゃんは、今日はいないの?』って聞きに来るんですから」


「あらあら」


 それは初耳だった。私の知らないところで、相棒はアイドルになっていたらしい。

 そんな和やかな雑談を交わした後、私は本題を切り出した。


「それで、今日は新しい依頼を受けに来ましたの。Cランクになったことですし、何か、もう少し歯ごたえのある冒険がしたいと思いまして」


 私の言葉に、受付嬢さんの顔が、ぴしりと引き締まった。


「Cランク向けの依頼、ですね。分かりました。こちらへどうぞ」


 彼女に案内されたのは、これまで見ていたFランク用の掲示板の、さらに奥にある、一回り大きな掲示板だった。

 そこに貼られている依頼書は、もはや白色の紙ではない。羊皮紙そのものの色をした、黄ばんだ紙。それが、Cランク以上の冒険者が受けることのできる、本格的な依頼の証だ。


(おお……! ついに、中級者向けのクエストボード……!)


 私の心は、初めて見る光景に、小学生の遠足みたいにうきうきしていた。

 依頼の内容も、これまでのものとは、明らかにレベルが違う。


『ワイバーンの卵の採取 場所:竜の爪痕渓谷』

『オーガの群れの討伐 場所:嘆きの平原』

『リザードマンの集落の調査 場所:黒鉄の沼』


 どれもこれも、冒険心をくすぐられるような、本格的な冒険の匂いがぷんぷんする。


「どうですか、アリアさん。何か、気になる依頼はありますか?」


「そうですね……。どれも、とても魅力的で、迷ってしまいます」


 私がずらりと並んだ依頼書を、一枚一枚、吟味するように眺めていると、その中で、ひときわ異彩を放つ一枚が、ふと目に留まった。

 それは他の依頼書と少し紙質が違い、インクも古びてかすれていた。


『依頼:忘れられた鉱山の調査 目的:鉱山内に発生したアンデッドの浄化、及び、深部に存在する魔力源の特定 ランク:C』


「『忘れられた鉱山』……?」


 私がその依頼書を指さすと、受付嬢さんは「ああ、それですか」と、少しだけ表情を曇らせた。


「ええ。街から北に三日ほど行った山脈にある、ドワーフの鉱山跡なんですけど……。十年ほど前に閉山したんですが、最近になって、中からアンデッドが這い出してくるのが目撃されるようになったんです」


「アンデッド、ですか」


 ファンタジー世界における、定番中の定番モンスター。

 私のゲーマー魂が、ぴくんと反応する。


「はい。それだけならまだしも、どうやら鉱山の奥深くで、何か強力な魔力が観測されているらしくて……。それが、アンデッドを発生させている原因ではないか、と。これまでに、二組のCランクパーティーが調査に向かったんですが、どちらも深部までたどり着けずに、撤退してきています」


「どうしてですか?」


「鉱山内に、ゴーレムがいたそうです」


「ゴーレム!」


 今度は、はっきりと声に出してしまった。

 アンデッドに、ゴーレム。

 なんという、王道で、そして胸躍る組み合わせ。

 自然の洞窟だった『ゴブリンの洞窟』や『湿地の迷宮』とは、明らかに毛色が違う。

 人工的に作られた、ダンジョン。

 そして、物理攻撃が主体となる、タフな敵。


(……面白くなってきた)


 私の頭の中で、何かがぱちんと弾ける音がした。

 生半可な魔法は通用しないかもしれない。小手先のトリックも、見破られる可能性がある。

 これまでの冒険とは、全く違うアプローチが求められるだろう。

 そして、それこそが、私の新しい杖の性能を試すには、最高の舞台じゃないか。


「……ふふっ」


 思わず、口元から笑みがこぼれた。

 私の様子に、受付嬢さんが「え、アリアさん?」と不思議そうな顔でこちらを見ている。


「決めたわ。その依頼、私が受けさせていただきます」


「ええっ!? ほ、本気ですか!? アンデッドは、普通の攻撃じゃ倒しにくいですし、ゴーレムに至っては、魔法がほとんど効かないって話ですよ!? アリアさんの戦い方とは、相性が悪いんじゃ……」


「ご心配なく。私、そういう一筋縄ではいかない相手、大好きなんです。それに、私の新しい相棒も、早く本番で活躍したくて、うずうずしているみたいですしね」


 私は、懐から取り出した黒檀の杖を、くるり、と指先で器用に回してみせた。

 杖は、私の魔力に呼応するように、一瞬だけ、翠色の光をまたたかせた。

 私の決意が固いことを悟ったのか、受付嬢さんは「うう……分かりました……」と、まだ不安そうな顔をしながらも、受付の手続きを進めてくれた。


「本当に、気をつけてくださいね! アンデッドには、神聖魔法が有効ですけど、アリアさんは……」


「ええ、心得ていますわ。私流のやり方で、なんとかしてみせます」


 私は彼女の心配を笑顔で受け流すと、古びた依頼書を受け取った。


「それでは、行ってまいります」


「行ってらっしゃいませ! どうか、ご無事で……!」


 何度も念を押してくる彼女に手を振り、私たちはギルドを後にした。

 新しい冒険への期待が、私の思考を埋め尽くしていく。


(アンデッドに、ゴーレム……! ついに来たわね、中級者向けダンジョン! 腕が鳴るわ!)


 脳内では、これから始まる冒険のテーマソングが、大音量で鳴り響いている。

 さあ、行こうか、フェン。

 私たちの、新しい冒険の始まりだ。



 冒険は、準備が九割。

 前世の、とある登山家の言葉だったか、あるいはゲームの攻略サイトの受け売りだったか。出典は忘れてしまったけれど、その言葉が真理であることは、これまでの冒険で嫌というほど身に染みている。

 特に、今回の相手はアンデッドとゴーレム。長期戦になることは必至だ。これまでのような、その場のひらめきと勢いだけでは、痛い目を見ることになるかもしれない。


「というわけで、フェン。出発の前に、まずは入念な準備からよ」


「わふん!」


 私たちはギルドを出ると、その足で街の市場へと向かった。

 活気のある市場は、様々な品物と、人々の熱気で満ちている。威勢のいい八百屋の掛け声、香ばしいパンの焼ける匂い、色とりどりの果物が並ぶ露店。その全てが、私たちの新たな冒険の始まりを、祝福してくれているようだった。

 まずは、何よりも大切な食料の調達からだ。


「おじさん、このお肉を塊でいただくわ。それから、そっちの岩塩もね」


「へい、毎度あり! 嬢ちゃん、いい肉を選ぶねえ!」


 馴染みの肉屋で、新鮮な猪の肉をたっぷりと買い込む。

 家に帰ると、私は早速、キッチンで保存食作りに取り掛かった。

 肉を薄くスライスし、岩塩と、庭で育て始めたばかりの数種類のハーブを丁寧にすり込んでいく。そして、それを風魔法で作った乾燥した風に一晩さらせば、特製の干し肉の完成だ。これまでのものより、さらに風味豊かで、日持ちもする改良版。

 もちろん、フェンの分は、彼の好みに合わせて少しだけ味付けを調整してある。


「くんくん……わふぅ……」


 キッチンの入り口で、フェンがそわそわと落ち着かない様子で鼻を鳴らしている。その食いしん坊な姿に、私は思わずくすりと笑ってしまった。


「まだダメよ、フェン。これは、冒険の途中のお楽しみなんだから」


 干し肉だけではない。野菜を細かく刻んで乾燥させ、岩塩と香辛料を混ぜ合わせた、お湯を注ぐだけで温かいスープになる『乾燥スープの素』も、多めに作り置きしておく。これがあれば、どんな場所でも手軽に栄養補給ができる。

 次に、装備の点検だ。

 私はクローゼットから、愛用の革鎧を取り出した。いくつかのダンジョンを共にしてきたこの鎧は、あちこちに細かい傷がつき、すっかり私の体に馴染んでいる。


「よし、と」


 私は柔らかい布に専用のオイルを染み込ませ、革の表面を丁寧に磨き上げていく。こうして手入れをしてやることで、革は強度を増し、より長く使うことができるのだ。貴族令嬢だった頃には、考えもしなかった作業。でも、自分の命を守る道具を、自分の手で手入れするこの時間は、不思議と気持ちが落ち着いた。

 腰に下げたナイフも、砥石で念入りに刃を研いでおく。切れ味一つで、薬草の採取効率も、いざという時の護身も、大きく変わってくる。

 旅人用の小さな鍋、木の食器、水袋。これらは、もうすっかり私の冒険に欠かせない、相棒のような存在だ。汚れを落とし、傷がないかを確認する。

 新しく買い足すものもある。

 薬屋で、基本的な傷薬と、解毒薬をいくつか。それから、念のためにと、持久力を回復させるポーションも一本だけ購入した。


「アンデッド対策に、聖水はいかがですかい? 教会のお墨付きで、効果は抜群ですよ」


 薬屋の店主にそう勧められたけれど、私は丁重に断った。

 ガラスの小瓶に入った、きらきらと輝く液体。確かに効果はありそうだけれど、値段が金貨一枚と、かなり高価だ。


(金貨一枚? 冗談でしょう。そんなコストパフォーマンスの悪い消耗品に頼るくらいなら、私の『浄化』魔法を応用した方が、ずっと効率的で安上がりだわ)


 私には、あの『湿地の迷宮』で毒沼を真水に変えた実績がある。あの原理を応用すれば、アンデッドを動かす邪悪な呪いだって、きっと洗い流せるはずだ。そんな確信があった。

 こうして、食料、装備、道具、その全てを万全の状態に整えていく。

 一つ一つの作業は地味だけれど、この積み重ねが、未知のダンジョンでの生存率を、確実に引き上げてくれるのだ。

 それは、ゲームの世界で、来る日も来る日も、キャラクターのレベル上げや装備集めに没頭していた、あの頃の感覚と、どこか似ていた。

 準備が申し分なく整った時の、あの、無敵の万能感。

 全ての準備を終えた私は、冒険用の大きな革袋に、手際よく荷物を詰めていく。どこに何を入れたか、目を瞑っていても分かるように。


「よし、申し分ないわね」


 ぱん、と革袋を叩き、私は満足げに頷いた。

 これまでの冒険で培った経験が、私をただの元令嬢から、手練れの冒険者へと、少しずつ変えてくれている。その事実が、なんだか少しだけ、誇らしかった。



 フロンティアの街を出て、北へ。

 街道を歩くこと、三日。

 周囲の景色は、のどかな平原から、次第にごつごつとした岩肌が目立つ、荒涼とした山岳地帯へとその姿を変えていった。緑は少なくなり、代わりに、天を突くようにそびえ立つ、灰色の山々が、まるで巨大な壁のように、私たちの行く手を阻んでいた。


「わふん」


 私の隣を歩くフェンが、くんくんと鼻を鳴らした。空気の匂いが、変わったのだ。

 これまでの、草や土の匂いとは違う。

 鉄錆のような、金属的な匂い。

 そして、どこか、空気が澱んで、重苦しいような、独特の気配。

 目的の場所が、近い証拠だ。


 やがて、道とも呼べないような、岩だらけの坂道を登りきった、その先に。

 その鉱山は、あった。

 巨大な山の、中腹。

 まるで、巨人が大きな口を開けたかのような、ぽっかりとした黒い穴。

 それが、『忘れられた鉱山』の入り口だった。

 入り口の周りは、腐りかけた木の板で、粗雑に補強されている。地面には、錆びついた鉄のレールが、どこまでも続くように敷かれていた。おそらく、昔は鉱石を運び出すための、トロッコが走っていたのだろう。

 入り口の脇には、風雨にさらされて、もはや何が書かれているのかも判読できない、古い木の看板が、傾いたまま寂しげに立っている。

 自然の洞窟とは、明らかに違う。

 かつて、ここで多くの人々が働き、生活していたであろう、その痕跡。

 それが、今は、完全に打ち捨てられ、忘れ去られている。

 その事実が、この場所に、言いようのない物悲しさと、不気味さをもたらしていた。

 ごう、と。

 洞窟の奥から、冷たく、そして重い風が、うめき声のように吹き出してくる。

 その風には、湿った土の匂いと、カビの匂い、そして、何かが腐敗したような、微かな悪臭がまじっていた。


「うわぁ……。雰囲気、出てるじゃないの」


 これまでのどのダンジョンよりも、明らかに、空気が違う。

 『湿地の迷宮』が、生物的な『生』の不快さだったとすれば、ここは、無機質で、冷たい、『死』の気配に満ちている。

 普通の女の子なら、一歩も足を踏み入れたくないような場所。

 けれど、私のゲーマー魂は、むしろ、最高潮に燃え上がっていた。


(これだよ、これ! この、いかにも『何か出る』って感じの、ぞくぞくする雰囲気! たまらない!)


「がるるる……」


 私の隣で、フェンが低い唸り声を上げる。彼の全身の毛が、わずかに逆立っているのが分かった。彼の優れた嗅覚が、この場所に満ちる、不自然で、不浄な気配を、はっきりと感じ取っているのだ。


「大丈夫だよ、フェン。私がついてる。それに、私の新しい相棒もね」


 私が懐から取り出した黒檀の杖を、きらり、と太陽の光に翳してみせる。

 フェンは、私の言葉と、その杖が放つ力強い気配に、少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。こくりと頷き、私の半歩前へと進み出る。その小さな背中が、私を守ろうとしてくれているのが伝わってきて、胸が温かくなる。


「よし。じゃあ、行こうか。Cランク冒険者としての、初仕事。サクッとクリアと行こうじゃない!」


「わん!」


 フェンの頼もしい返事を合図に、私たちは薄暗い鉱山の中へと、その第一歩を踏み出した。

 ひんやりとした空気。周囲にある巨大な闇が、私たちをあっという間に飲み込んでいった。


 背後で、外の世界の光が、ゆっくりと遠ざかっていった。


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【化学調味料/飯テロ/日本食】
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