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ディスマン短編集『語らずとも談る』  作者: ディスマン


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透明な黒、明瞭の白

「     」


聞こえず、

見えず、

読めもできない。

読まなければ、きっと彼は報われないだろう。

読めたならば、きっと彼は光へ溶けていけるだろう。

 万年筆にインクをつけ、原稿用紙に走らせる。窓からの昼光が机の上を照らし、原稿を描く前の新品に時を逆行させているようだ。駄作を書いている時もそうやってかき消して欲しかったと不満を垂れそうになるが、大人になってそんな理不尽は言えない。

 だが思うことだけは許して欲しい。私は自らの時間とインクを消費して、丸めては次々と机に置かれた綺麗な草稿に齧り付いているのです。これは、我が魂を削っていることと同義ではないでしょうか。


 売れない小説家である私は、こうして懲りずに筆を取っているわけですが、発行部数は一万届かず。ベストセラーに選ばれたことは未だ一度もない物書きなのです。それでも古びた筆を手に取り、こうしてざらついた机の上で、カリカリとインクが道を辿っている様を眺めている。そして、またインクが乾いてもいないうちに原稿を握り潰してゴミ箱に放り投げるのである。

 生活できないほど売れていないわけではないが、何かどうしようもなく拭えない、ぼんやりとした不安だけが私の心に巣食っているのです。私は、この悪霊を追い出すことはできそうにありません。なぜなら、その正体が看破できないのです。

 本棚に囲まれ、紙と木の匂いが充満した書斎に魂が幽閉されているような気分でした。私の肉体は、幽閉された魂に動かされる奴隷と大差ない状態だったのです。

 カーテンを閉め切り、白く発色する天球の下でひたすら浮かんでは消える文章を追いかけるのが、今この文を書いている私です。まるで、小説ではなく遺書を書いているような文体が、無意識に私を憂鬱にさせていく。しかし、無意識であるのならばこれ以上ない魂の書き綴りなのは明白だ。これだ、この文体で行こう。私は物語の内容もも題名も決まっていないのに、自分のスタイルだけは確立できたのでした。


 文体が決まっただけで終わった次の日、私は部屋を出て蕎麦を食べながら小さいテレビを観ていました。何か私の脳を貫く電流が流れないものかと、いよいよ画面の中の電波に縋るようになったのです。

 興味のないニュースが終わった次の瞬間、チャンネルに「世界の大自然」をテーマにした番組が放送された。自然は小説を書く上では重要な要素の一つだ。情景はもちろん、そこに繊細な変化を加えるための表現や言葉・・・。私の心に突き刺さる無痛の刃がこの中にあるかもしれないと、私は少し残った蕎麦には手をつけず画面を真剣に見ていました。

 山や川、夜空に散らばるザラメの星が今のところ流れましたが、私の手を動かすほどではありませんでした。やはり無理があったかと半ば諦めが私の心に寄り添おうとした時に、それは私の心を握りしめて揺さぶったのです。

 浅すぎる水深、波の立たない水面、完璧なまでに映し出される反転した蒼空。

 名をウユニ塩湖という、ボリビア南西のアンデス山脈にある世界最大の塩原。なぜあんなにも美しいのか私は直前まで知らなかったがナレーターが絶好のタイミングで私の欲した情報を喋ってくれた。塩湖全体の高低差がわずか50cm以内という「世界で最も平らな場所」であるウユニ塩湖では、雨が流れることなく大地に薄く膜を張るらしい。そのおかげで、空を湖面に映し出す「天空の鏡」と呼ばれる神秘的な絶景が現れるのだ。

 私の目は釘付けになった。特に、夜空が「天空の鏡」に反射した映像を見た時は、口を開けて呆然としてしまった。宇宙に放り出されたような神秘がそこには存在していたのです。こうしちゃいられないと、急いで残りの蕎麦をめんつゆも付けずに吸い切って、テレビを消して書斎に再び閉じ籠りました。

 あの光景を忘れないように、原稿の(かたわら)にスマートフォンを置いて全画面でウユニ塩湖の夜を映しループ再生させる。

 これで準備は完璧となりました。私は情動と衝動のままに、地上で最も美しい楽園、謂わばエデンの園を書き始めました。


―――――――――――


 楽園に等しい、地球ではないどこか宇宙を漂う円盤状の巨大な宙舟が上下も左右もない無重力の中を推進していく。この船内では喧嘩や争いはあれど犯罪は起きない。厳密には、罰則が極端なため犯罪を犯そうという気に誰もならないのだ。

 船長が掲げたルールはただ一つ。「罪を犯すもの、その大小関係なく死罪なり」たったこれだけである。それによって、船内放送では殺人や強盗といった報道はほぼ流れないのだ。罪を犯すのならば、文字通り命を懸けなければならない。そして最新テクノロジーの詰まったこの世界では、犯人など一日も経たずに割り出されてしまう。

 そんな厳しすぎる司法制度がありながらも平和に暮らしていた主人公は、悪い友達に誘惑され堕落していきます。徐々に悪い意味で賢くなっていく主人公は、遂には密室での完全犯罪を成し遂げたのです。処刑されないよう工作やらアリバイやらを駆使する主人公と、無慈悲に追い詰めていく大きくも小さな世界。理想では勝てない絶対的な現実を書いたリアリズムの集大成だ。


―――――――――――


 書き殴りの如く筆を動かして書いた小説は、悪くはないものだった。司法や治安組織と主人公たちの攻防、完璧な平和へのアンチテーゼ。性悪説を皮肉げに描いたこのミステリー小説は、推理を楽しむ物語に非らず。本質は、人間の決して目を逸らせない悪性は平和や完璧な世界だろうと無くなることはなく、善悪は永遠の鼬ごっこなのだという作者の主張なのだ。美しくも消えることのない人間界の絶対的な概念をよく表現できていると自分でも思う。

 これは良い作品になる。私は中盤直前に差し掛かる頃にはそう確信していた。SFミステリーなんて今まで書いたことなどなかったが、存外悪くないものである。


 2ヶ月の時が過ぎ、平凡な印税で食い繋ぎながらも作品は完成した。これを早速出版社に持っていこうと原稿に手を伸ばした。しかし、触れる直前にその手は止まってしまった。冷静な思考が、待ったをかけたのである。

―――この小説は、唯一無二となる作品だろうか?―――

 その疑問が、私の脳内で数々の文学史上の傑作を思い出させた。太宰治の「人間失格」、村上春樹の「ノルウェイの森」、村田沙耶香の「コンビニ人間」。売れる小説ではなく、歴史に跡を刻めるような小説だと胸を張ってこれを出せるのか?

 私は悩んだ末に、原稿を持っていくことは保留し、外へと散歩に行くことにした。

 家の中や本棚の中に、私が求める答えがないような気がした。根拠はない。第六感と言えばいいのだろうか。温い気温と、暖簾もはためかない追い風が吹く通りの歩道を歩く。歩いていると、運動によって血流が加速し酸素が脳に送られて思考までも加速する。思い返せば、あれは気の迷い、ただの自惚でしかなかった。あの小説が傑作となるのならば、私は売れない小説家になど最初からなっていないではないか。

 己の中で勝手に一人で恥をかいた私は、居た堪れなくなって買いもしないのにCDショップに飛び込んだ。店内をいま流行っているだろう邦楽が流れている。ずっと執筆していた弊害で、こういった流行の音楽には疎かった私は、成すがままに音の迷路へと迷い込むことにした。

 何気なくどのCDの題名を見てもピンと来ない。CDを買ったこともない私には、こんな現代的な棚の陳列物も映画「ホッタラケの島」の街並みにしか見えませんでした。

 元々用事などなかった場所なのだから出ていこう。そう思って出入口へと振り返ろうとした瞬間、一枚のCDが私の目に留まりました。

「メッセージボトル?」

 私は手を取って注視してみると、どうやらバンドのベストアルバムのようでした。正直、何が私を惹きつけたのかは未だ分かりません。ですが、あのまま振り返って店を出ていこうという気は瞬時に消え失せていたのです。

 裏面に表記されたセットリストを一つずつ見ていく。タイトルからでも読み取れる、メッセージ性の高い音楽性がより私を重力場へと引き摺り込もうとしてきました。四番目の曲を見た時、私のスピリチュアルにも等しい虫の知らせは確かだと気付かされたのです。

 「無題」。

 たったその二文字だけが付けられた四番目の曲が、私をこれから霧の濃い桃源郷へと誘うような狂気じみた興味を沸かせました。生憎と私の家にCDプレーヤーはなかったので、一先ずはアーティスト名と曲名だけを覚えることにした。そして家に駆け足で帰ると、音楽配信アプリでその曲をダウンロードしました。

 聴いていくと、私小説かのような素晴らしい歌詞、心に響く哀愁漂う声と音楽が私の耳を伝って心臓を打った。

 特に歌詞は素晴らしいの一言に尽きた。ストーリー仕立ての歌詞構成となっており、主人公はある売れない絵描きで彼の半生と愛した彼女とのストーリーが展開されている。歌詞はまるで私小説のように、「彼」という視点から「私」という視点への変化を見せている。第三者視点で物語を聴いていれば、次第に彼にのめり込み感情移入していくこととなるだろう。

 彼と、彼をとりまく環境の変化、周囲の求めているものと本当の自分との乖離、苦悩、恋愛、失恋といった伏線の回収も美しく、彼の半生をまさに絵画のように色鮮やかに描きだしており、私の心に深く突き刺さった。自分との戦いや世界への抵抗が、美しい文で表現されている。私よりもよっぽど純文学に向いていた。

 そして、私は一種の真理に至りました。梶井基次郎の檸檬のように、私なりの美しさを見つけたのである。「無題」がそれを教えてくれた。最も美しいものは純粋なのである。燃えるような赤でも、晴天を塗り潰す青でもない。好き通り如何なる不純物にも染まらない、透明こそが美の新境地なのです。だから私は小説から、一切の不純物を取り除くことにした。

 2ヶ月かけて書き上げた原稿を破り捨てる。また新しい真っ(さら)な原稿が現れ、それに筆を立てた。激しい感情も何もいらない。ただ静かに、私の中で淡く光り鼓動する何か得体の知れないものを原動力に指先を動かし続けた。

 最も美しい小説を書くために―――――。

 最も透明な小説を書くために―――――。

 毎日幾度となく書いては修正、加筆しながら自らの命を削っていく。消えてしまうくらいに透明に、私の何かを燃やしながら蒸留を繰り返す。書けば書くほど洗練される物語に、私の筆が乗ってきたように感じた。

 この物語はミステリでも、青春でも、恋愛でも、SFでも、ファンタジーでもない。この小説ではそのようなジャンルすら不純物なのだ。

 だから私は、主人公以外に誰も登場せず何か非日常的な出来事が起こるわけでもない、語り手が透き通った世界をただ生きるという異端な小説を書いたのです。個性のない主人公が、白い朝焼けのような薄く白い世界を渡り歩き、彼女の主観で透明な世界の美しさを語る。シンプルだがこれが最も伝わりやすいと感じた私は、私の主観すらも押し殺して徹頭徹尾「彼女ならこの景色をこう見てこう感じている」を貫いた。私の意識もこの小説の中のように溶かして宙に混ぜて欲しい。そう思いながら書いていたこの時の私は、何か不可視のモノに取り憑かれていたに違いない。


 執着するように原稿の前に座ってインクを二次元に付け足していれば、もう半年が経とうとしていた。誰かと会うこともほぼないため髭や髪は最低限の手入れしかしていない。小説を透明にするために、自らが全ての雑色を請け負ったかのような乱雑さだった。相変わらず生活は良い意味でカツカツだったが、執念のおかげで小説は完成した。原稿を持っても私の霊感は私自身を縛り付けない。私は無意識下でも完成に至ったのだと、まだ提出してもいない原稿を前に感無量の思いで胸は満水だった。

 私は編集者と久しぶりに話し、原稿のチェックをしてもらった。261枚の原稿を、真剣な目をして読んでいく編集者に、なんだか私は新人作家の頃に戻ったような新鮮な気分を味わっていた。

 途中までだが、無言で読み続けること一時間。仏頂面だった編集者の顔がようやく上がった。面白かったかではなく、美しかったかだけが気になってしまう。編集者はたっぷり5秒ほど溜めると、破顔して私にこう言った。

「美しい小説ですね。誤字脱字も今のところありませんし、これなら通ると思いますよ」

 よかった。

 月並みな言葉だが、私の言葉の棚から出てきた言葉はこれが最適だった。深く息を吐き、伸ばしていた背筋の力を抜いて背もたれに身を預けた。精魂尽き果てそうなくらいに、私の心身を達成感と疲労感が侵食していた。

 最後まで問題がなければ、晴れてこの小説は出版されるだろう。だがその前に、この小説は未完成であることを編集者に伝えなければならない。

「すみませんが、この小説はまだ未完成なのです」

「え?」

「この小説は製本されて初めて完成するようになっているのですが、そこで一つお願いがあります」

 ダメ元で頼み込んだたった一つの願いこそ、私の小説を完成させる最後の一手だった。必死に頼んだ私を見て、編集者は会議で打診してくれると約束してくれた。まだ決まったわけではないが、取り敢えずこれで肩の荷は降ろすことができた。

 あの小説は透き通った物語と文章だ。だから、聞くことも見ることも読むことも本来はできない。それでも読みたいと願うのならば、光の中で読むしかないのである。

 悪戯を仕込んだ童子のような笑みを浮かべながら、私は東都(とうと)の無骨なコンクリートを彩るレッドカーペットの上を歩いていったのでした。






 半年後、読書好きの少女は今日も書店に顔を出していた。店頭の新刊コーナーには、最近出版された小説や新書などが並んでいる。しかし、今日は少しいつもと違った。

「なにこれ・・・?」

 真っ白で悪く言うと飾り気のない本が、細長い箱とセットで売られていた。大きさからして単行本だろう本がビニールに包装されていて、立ち読みもできず中身がまるで想像できない。それが余計に少女の興味を掻き立てた。

「"透明な黒、明瞭の白"」

 よく見ると少し青みがある表紙に、少し注目しなければ読めないほど薄く白い文字でタイトルが書かれていた。あまりにもシンプルすぎてギミックを疑ってしまう。

 買った本を持って少女は家にそそくさと帰り、自室で包装を破いた。先に付属品の箱を開けてみると、中には何の変哲もない小さなライトスタンドが入っていた。何故こんなライトが付いているのか皆目見当もつかない少女は、それを一旦テーブルに置いてメインの本を開いてみた。

 だが、少女は大きく落胆することとなった。その小説は、到底読めたものではなかったのである。

「なにこの本・・・・・・何も書かれてない」

 ページを何度めくっても、文字の一つも出てこない。正真正銘、白紙の小説だったのだ。少女は少しイラッとしたが、出版社が出している以上こんなただの詐欺本な訳がない。少し冷静になってみると、この状況を打開する唯一のアイテムがすぐそばにあった。

「あ、ライト」

 付属していたライトをテーブルに設置してスイッチを入れ、部屋を暗くする。すると、さっきまで何も書かれていなかったはずのページに、まるで魔法のように文字が浮き出てきたのだ。

「わぁ!」

 少女は深く感動した。なるほど、特殊なライトで照らすことで初めて文字が読めるようになるのか。どうやらこの本は、特殊なインクで印刷されているようだ。暗い部屋で、濃い目の勿忘草色をしたライトが本を照らし明朝体の文字を浮かび上がらせる。白いページに明るい夜の色が加わって、小説そのものが都会の光で照らされた夜空を投影しているみたいだった。

 小説の話はいたってシンプルだ。白くて透明な世界を主人公が渡り歩く、ただそれだけである。だがそのシンプルさが無駄のない作者の描く美しい世界を創り出していることは理解できた。白く透き通った幻想的で儚い世界。夜は来ず、日は沈むことがない。まるで白夜のようであると少女は思った。

 読めば読むほど、作者の伝えたい世界観が現実を包んでくるようだ。

 ギリシアの石灰で染められた石造りの家々。

 雲の上と錯覚するような砂浜、僅かに青い波。

 色のない風が街と主人公の髪の隙間を吹き抜けていた。

 木々や岩も無色ではなく、色素が極限まで失われたような薄い色彩で構成されている。不思議な世界に佇む主人公はそう言った。

 絵画の中に飛び込んだかのような異世界が、少女と主人公の目前に広がっていた。色彩の侘び寂びが極端に描かれていて、風景にあまり興味のない少女でも感じられるくらい、その美しさは鳥肌が立つほどに伝わっていた。

 ページは後書きを除いて残り二十数ページに差しかかった。主人公は現在、街を抜け、海を抜け、山の頂を目指しており、山頂まであと100メートルというところまで到達していた。汗を滲ませながら山頂の浅い草原に仰向けで倒れると、主人公は言葉を失った。

 読んでいたページはここで途切れ、次のページに続いていた。はやる気持ちを抑えて捲ってみれば、少女の想像だにしなかった「世界」が描かれていた。

「・・・・・・・・・きれい」

 青と黒が織りなす夜空に、大小明暗が多様に散りばめられた星々。

 丸々2ページを使って描かれた星廻る夜空の挿絵が少女の情動をダイレクトに刺激した。今まで無色か極端に薄い色彩しかなかった世界に、突然の満天の星空が現れたのだ。少女はうわ言のように「きれい」と言葉を無意識に零すしかなかった。輝く暗黒の天幕が、次第に光を増して主人公を飲み込んでいく。ライトで浮かんだ文字もページを追うごとに薄くなっていき、最終的には本当に何も書かれていない純白なページが4ページほど続いて、最後のページにはたった一行の言葉が書かれていた。


「そして私の意識は透き通り、雑で、混沌としていて、しかして見慣れた光と色がぶち撒けられた世界へと降り立ったのだった」


 少女の口から満足げに息が吐かれた。純粋な文字だけでなく、ここまで多彩な遊びを施した小説は現代では滅多にお目にかかれない。

 すっかりこの本と作者のファンになった少女は、これまた薄い白で書かれた作者の名前を調べ、ファンメールを送ることにした。明日は学校なのに、美しい小説を書いてくれた作者の失礼とならないような文章を夜中まで考えて送ったのである。

 限界だとベッドに体と意識を放り投げて眠りについた少女は一時(いっとき)の黒の世界へと落ちていった。

 そんな強烈で力強い透明を知った少女の翌朝は、外の世界が白のヴェールで覆われたキャンパスの上のように見えたのだった。



 使い古された机と相変わらず睨み合っていた私の元に、編集者から一つの連絡が来た。私のあの透き通った小説を読んでくれた読者からの最初のファンメールが送られてきたと言うのです。

 滅多に頂かないその熱意込もる文章を転送してもらい読んでみた。すると、今度は私が意表を突かれてしまった。そこには「面白かったです」とも「頑張ってください」とも書かれていなかった。たった一言、私の小説を読んだことがある人だけが理解できる一言でこう書かれていました。

「輝く天蓋(てんがい)の小さな一つから、私は貴方の透き通った世界を見ていました」

 その言葉に、私の心は燃え上がり、鈍かった私の筆は歯車が噛み合ったかのように動き始めたのでした。

純文学を意識してあまり書いたことねえな〜と思って書いてみました。

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