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ディスマン短編集『語らずとも談る』  作者: ディスマン


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復讐について

我が復讐の哲学。

今回はショートショートでお送りします。

「あの人達が憎い」

 男か、女か、それすらも分らない怨霊のような存在が、彼女の心に巣食っている。

 聞くところによると、君では音楽で有名になるのは無理だと否定されたらしい。同情する気はさらさら無いが、そう思ってもいられないほどに彼女の瞳は復讐心によって鋭くギラついていた。

「つってもホームアローンじゃないし、物理的な復讐とかしねえだろ?」

「もちろん。僕が有名になって武道館にも立てるようになれば、みんな奴らを忘れていくでしょ」

 思っていたより真っ当な復讐で安心した。誰かを堕とすのではなく、自分が這い上がる綺麗な復讐だ。

 それと同時に意外だった。復讐相手達は曲がりなりにも爆売れ中のアーティストやアイドルと呼ばれている者たちだ。やっぱり、本人の人間性と作品の出来は関係ないということなのだろう。

「でもさ、今もうアニソンとかバラエティとかで人気やん。世間の支持的にもそいつらとっくに追い越してるし。あとは・・・武道館で観客数とかステータスを上回ったら格付け完了だな」

「僕はそれでいいけど、君ならどーするの?」

「あ? 復讐?」

「うん」

「しないね」

 私は迷うことなく言い切った。私自身、復讐を否定はしない。したければどうぞ自由にすればいい。復讐は無意味とは思わないし、連鎖を生むとか悪いことだとか、そんな反吐が出る綺麗事を言う気もない。ただ、復讐はするよりもされたもの勝ちだと、そう思っている。

「復讐しようと労力と時間費やしてる時点で負けだろ。それに、人生は生きているだけで不幸や苦しみは腐るほど襲ってくる。つまり放っておくだけでそいつは苦しみながら生きていく。途中で売れなくなったり、病気になったり、事故や事件に遭ったり、自殺するかもしれない。ほら、俺が手を下す必要ナッシング!」

「ポジティブなのかネガティブなのか・・・」

 偉い人は言っていた。復讐とは、自分の運命に決着をつけるためだと。しかし、私は少し違う。

「そして何より、自分に不純物が混ざるのが許せん」

「不純物?」

 彼女が可愛らしく首を傾ける。

「心という内面に、憎い相手という人生においても世界においても不要な不純物が居座る。これは自分というものの純度を著しく下げる。インフル罹った時みたいに自分の中から排除しなければ」

「嫌いな奴をウイルス扱いはウケる」

「つまり、俺にとって復讐は”自分の中を浄化するため”の行為でしかないの」

 そんな哲学的な会話が、何でもない街の一角で行われていた。それでも世間が平和なのなら、一見物騒なことでも平和を維持する歯車の一つなのかもしれない。


「・・・・・・あっ。アールグレイ冷めたわ熱に復讐しようぜ」

「僕も共犯なの?」

昨日買ったあのちゃんの哲学書読んでたら閃いた。

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