土曜の刑
Xで架空小説書き出しとして投稿した奴をフルノベライズしました
飴色のガラス越しに薄暗い部屋を見ている。
脱ぎ捨てられた服、まだ読んでいない本、飲みかけの茶。ノートPCの明かりだけが唯一の光源である、私だけの独房。
この小さな世界で、私は自堕落の禁固刑に処されて、はや7時間経っていた。裁判官に裁かれたわけでもなく、自らこの安堵が漂う牢に縛られているのである。
刑務所の外は、いつもより静かに聞こえた。空気は冷たく澄み、まだ日も高くないというのに、どこか重い気配が漂っている。薄曇りの空が、今日の意味をよく知っているかのように沈んでいた。
収容者の私は、誰でもない係員に導かれて小さな部屋へと入ったような気分だ。部屋は白いタイルで覆われ、中央に置かれた鉄製の低い椅子と、正面の壁一面を占める黒いガラス以外、何もない。ガラスは鏡ではない。表面は鈍く、内側の気配を静かに拒んでいる。
あくまでこれらの言葉は、想像というか、私が見て感じたものが変異しただけなのだが、エアコンの温風よりも早く現実を侵食していて他人事には思えなかったのだ。
私が低めの椅子に座ると、天井から淡い光が射し、窓の向こうが僅かに揺らいだ。次の瞬間、私の視線の奥で、一週間眠っていた記憶が、無理やり呼び覚まされるように騒めいた。
私が思うに、土曜の刑は忘却を許さない刑である。
月曜、火曜、水曜——どの日でも、人は罪を思い出したくなければ思い出さずにいられる。
しかし、土曜日だけは違う。心の奥に沈んだ罪の像が浮かび上がり、輪郭を持ち、色を持ち、音を持ち、逃げ道を塞ぐように迫ってくるのである。
私は、私の部屋より暗く静かな場所を求めて目を閉じる。だが、暗闇の中でこそ、罪はより鮮やかになったのだった。かつての足音、割れた木の匂い、湿った土の手触り——それらは一週間の薄皮を破り、今日だけは私の中で生まれ直る。
私は浅かった呼吸を整えようとするが、胸の奥の重みは増していくばかりだった。罪は、時間とともに鈍っていくものだ。けれど、土曜の刑はそれを許さない。まるで、固まりかけた傷口をわざと剥がすように、痛みを新鮮なまま保とうとする。不老不死に与えられた痛覚の凌辱刑と言い換えられるような、そう錯覚して
やがて、ガラスの向こうが静まり返る。
私の心の中で、責め立てる記憶は最高潮に達し、ピークを過ぎた後、徐々に勢いを失くしていく。罪そのものは消えないが、向き合い続けることで痛みは次第に形を変えていく。
鋭い刃から、鈍い重石へ。
重石から、沈黙の影へ。
夕方になる頃、天井の光が弱まり、部屋の空気がゆっくりと和らいだ。
部屋の扉を再び開く。刑が終わったのだ。いや、終わったというより、私が終えたと言った方が正しいか。
私は立ち上がり、少しふらつく足で廊下へ出る。
歩みは重い。しかし、その重さを捨てようとする者は、この狭すぎる刑務所にはいない。土曜の刑が課せられている者は皆、その重みが自分の一部であることを、嫌というほど知っている。
独房に戻る頃には、空は藍色に沈みつつあった。
夜気は冷たく、壁は固く、床は硬い。それでも、私の空いた胸の穴を埋めようとする痛みだけは、毎週ごとに形を変えながら、確かにそこにあったのだ。
あと六日。また六日。
罪は静かに眠り、また土曜に目を覚ます。
これを繰り返し、繰り返し、繰り返し————。
きっと私は、世界で最も自由で、苛烈で、痛くて、それでいて、滴る血液が砂になるまで逃げることの許されない、そんな苦しい罰を受けていくのだろう。
そろそろ商業出版がしたいお年頃




