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ディスマン短編集『語らずとも談る』  作者: ディスマン


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デカダンス

誰もが最初はダンスと勘違いするよね

 錆びた鉄の匂いが、レトロを通り越して古代の遺物と化している風車の吐息に乗って宙を走った。嗅ぎ慣れた、されど決して消えない不快感と鬱が、嗅覚を介して私の脳をガンガンと叩く。その音は表現するなら、鈍らの泣き声だった。

 砂と、廃墟と、野性化した家畜の子孫が歪なコントラストを演出している街を見下ろして、私は風車よりも明瞭な溜息を吐いた。私は死にかけの人間界を眺めて感覚的な諸行無常に浸る日々を貪っていた。

 そもそも、私が生まれるよりも遥か前から瓦礫の世界は後退か停滞しかしていない。それに美しさを感じることもない。かつて人も物も溢れていた街を知らない今となっては、全ては"だった"の一言で終わってしまうようなものなのだ。

 眼前に映る全てが過去の残骸。人工物は時を経て退廃へと向かい、自然はレコンキスタを成し遂げたように人間界と反比例して勢力を拡大している。


 自然主義の極地に至った私たちの文明は、体のいい言葉を羅列して、人類文明は滅んでおらず、むしろ在るべき形に帰ったと戯言を宣っていた。よほど現実を認めたくないのだろう。しかし、そう悲観するほどのことではない。人間は数万年前にも現在と似たような文明で問題なく歴史を紡いで生活できていた。単に、今の生活と世界に慣れているかどうかの違いでしかない。

 人はこうも弱い生き物だっただろうかと、自らのことも棚に上げて失望しかけてしまう。少し憂鬱というか、破滅的というか――――世界の有り様そのものが私の写し鏡に見えて仕方ないのである。そして、その鏡は日を追うごとにひび割れ、歳を経るごとに垢が積もっていく。いつか砕けてしまうと知りながら、その日を待ち望んでいる。

 破滅主義に聞こえるだろうが、実のところ人は何かが終わることを望んでいると、私は考える。人のであれ自分のであれ、何かが壊れて仕舞えばいいという願いがあるのだ。映画という昔の娯楽で船や建物が吹き飛んだり、敵とみなした者が敗北したり、そういった確定的マイナスに人は酔いしれている。破壊や消滅といった現象に、私たちは快感を得ているのだ。

 私もまさに、崩れかけのレンガ壁を蹴飛ばして倒壊していくのを見ていた。砂埃が舞い、風と共に去っていく。そうすれば不思議なことに、私が壊したのか元から壊れていたのか区別ができなくなった。

 この無責任な崩壊に、人の善悪の身勝手さを私は見出した。善悪ーーー。それ即ち、都合である。都合のいい正義や悪は、誰かにとって都合の悪い正義や悪なのである。今はそれが顕著に現れていると言えよう。国家などあってないようなもので、国よりも小さなコミュニティがそれぞれの秩序のもと行動しているのが普通だ。脆くも確かに存在する規範が、人を人たらしめてくれていた。

 いずれは、この感情も退廃していくのでしょう。砂のように溶け落ちていくのでしょう。そうなる前に、私は何が何でも痕跡を残そうと古い鉛筆で紙のデバイスに文字を綴ったのでした。

デカメロンも下ネタにしか聞こえねえや

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