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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第三章 すれ違って進む新しい未来

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side 琴葉

「あのね」

「どうかした?」

「音には、私が見送りに来てたって言わないで欲しいの」

「どうして?」

「だって、見送りに来たって知ったら嫌な思いするでしょ?だから伝えないで欲しい」

「本当に、それでいいの?」

「いいの、いいの」



徹君は、困った顔をしながらも「わかった」と頷いてくれた。

これからは、私の傷や想いに音が縛り付けられて欲しくなかった。

私が見送りに来たって聞いたら、音はまた何かを考えてしまう。



「今だから言うけど。俺、嬉しかったんだ。たぶん、音のお姉ちゃんも同じだったと思う」

「嬉しかった?」

「そう。音が、母親の顔色伺わないで自分らしくいれたのがね」

「自分らしく?」

「あのお母さんだよ。ずっと、自分を殺して生きてきたんだよ、音は……。琴葉ちゃんに出会うまでずっと」

「そんな事ないですよ。音は、私が出会った時からずっと自由で自分らしかったですよ」

「琴葉ちゃんのお陰だよ。少なくとも、俺も、音のお姉さんもそう思ってる。だから、ちょっと心配なんだよ。お母さんの元に戻ったら音は、また、隠すのかなって」



徹君は、苦笑いを浮かべながら耳を指差した。




「音のお母さんは、手話や筆談や機械に頼る事は許してくれないから」

「そう、そう。だからって、今の音の発音、少しおかしいところがあるだろ?」

「はい。耳が聞こえなくなって、音をとれなくなったから、おかしくなってるところがありますね」

「音のお母さん、そう言うの許してくれるのかなーーって心配だわ」



徹君は、後頭部を掻いてから立ち止まって空を眺めた。

音とお母さんの間にある離れていた時間。

その間に、音は聴力を完全に失い、発音も少しずつおかしくなった。

お母さんは、それを理解し、音を受け入れてくれるのだろうか?




「本当なら、手話とか使えたらいいんだろうな」

「音は、使いたいって話してました?」

「一度、図書館から本を借りて私た時は喜んだんだけど。結局、お母さんに反対されて終わった。だから、手話を使いたくても、また反対されるんじゃないかな」

「そうなると音のコミュニケーションの幅はどんどん狭まりますよね」

「まあ、元々狭かったんだけどな」

「確かに、そうですけど。でも、今の音は、前と違って聴力が完全になくて……」

「口読むよりスマホが画面見てるのが多くなったよな。でも、音のお母さんは許すかな?俺は無理だと思ってるんだけどね」



徹君は、大きくため息をついた後で「こんな事言ったら音に怒られるだろうけど、音は琴葉ちゃんといるべきだったと思ってるよ」と笑った。



「そんな事ないですよ」

「謙遜しないの。あっ、そうだ。気になってたんだけど、今の家にはずっといるの?」

「男女が付き合ってないのに一つ屋根の下にいるのは、やっぱりおかしいと思うんです」

「それって……」

「実家に帰ろうかなってかんがえてるんです」



春樹の家の前に着くと徹君は私の顔を見つめていた。

本当にそれでいいの?って言われてるのがわかる。



「真弓が待ってますから急ぎましょう」

「琴葉ちゃん……」

「はい」

「琴葉ちゃんが選ぶ事だから、俺が決められないんだけど。ーー実家に帰ると生きるの諦めたくならない?」



徹君の言葉に胸の奥が締め付けられる。

私は、あの日。

音と徹君と真弓の前で話したんだ。


ずっと抱えていたあの気持ちの正体を……。




「ごめん、偉そうな事言って」

「う、ううん」

「じゃあ、行こうか」

「あっ、うん」



春樹の家に向かう足取りは重くなる。

徹君は、聞いたらいけない事を聞いてしまった事を後悔したのか。

もう、何も話さなかった。

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