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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第三章 すれ違って進む新しい未来

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side 音

15時までいようと決めていたけれど、何もする事が思い付かなかった。

それに、琴葉といないこの家は寂しくて悲しい場所だった。



「早めに出ようかな」


もしかしたら、徹が来るかも知れない。

だけど、いいや。


徹に会って、琴葉に挨拶してから行けと言われるのも嫌だな。


今、琴葉に会ったら……。


俺、向こうに行きたくなくなる。



14時すぎまでは、部屋にいたけれど。


もうこれ以上いる意味は感じられなかった。


スーツケースをひいて、家を出る。


鍵を閉めてから、封筒にしまう。


管理会社の人が、鍵は郵送で送ってくれて大丈夫ですと言ってくれたのだ。


向こうについたら、ポストに投函するかな。



家を出て、どっちの道を通るか考える。



琴葉が彼といたら嫌だから、反対にしよう。


反対側から行こうとすると、琴葉にいつも怒られたのを思い出す。




「駅からだと、こっちを渡った方が早いだろ?だから、こっち」

「駄目!そっちの道は、自転車が多いの!専用道路を作る話しもあるけど、今の状態なら駄目」

「何で?大丈夫だよ」

「駄目だよ!自転車が急に飛び出してきたらどうするの?もうスピードでやってきたらどうするの?耳が聞こえない音は、危ないんだよ!私がいたら大丈夫だけど。だから、駄目だよ」

「琴葉は、心配性だな」

「だって、音がいない人生なんて意味ないよ」





今も、そう思ってくれてるのかな?


最近、自転車専用道路が出来たから琴葉が心配する事はなくなったよ。


まあ、琴葉もわかっているだろうけど……。



反対側に渡らなければ、俺はこの日琴葉に再会できたはずだった。


だけど、すれ違った運命は俺達を引き離していく。


駅に向かって歩く。


予定より早くついたから、徹も来ていなかった。


電車に乗る為に、ホームに行く。


「音ーー」


頭に中に、何かが響いた気がして振り返ったけれど気のせいだった。


さよなら、この街。


さよなら、琴葉。



電車の扉が閉まり、発車する。


琴葉……。


ギャラリーからスクリーンショットした写真を見つめる。


琴葉が俺にくれた羅列を指でなぞる。


ポトッ……。


指に涙が落ちてきた。


俺は、ずっと……。


琴葉の羅列に支えられて、今日まで生きてきた。


スライドしながら写真を見ているとズキン……胸に鋭い痛みが走る。



【娘と別れてくれてありがとう】


ポタポタと落ちてきた涙が画面の文字を滲ませる。


あの日、自分への戒めに置いておいたメッセージだ。


俺が引き留めちゃいけない。


琴葉は、耳が聞こえる人と生きていくべきなんだ。


それを、お父さんは望んでる。



スマホの電源を切って、ポケットにしまう。


もう、俺は戻らない。


この街にも……。


琴葉の元にも……。




三章では、音と琴葉が別々の道を進んでいきます。


二人は、もう一度再会する事ができるのか?


二人の事を反対している人達の考えを変える事ができるのか?


読んでいただけたら、嬉しいです。

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