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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第二章 悲しみと新しい日常

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side 琴葉

「病院でタクシー呼んだらよかったよね」

「大丈夫。歩いて帰れるから」

「駄目だよ。そこ公園だから。そこでタクシー呼ぼう」

「わかった。ありがとう」



真弓は、チラチラと時計を気にしてる。



「もしかして、今日も徹君と式場巡りがあった?」



さっきスルーされたけど。

聞いてもいいよね?



「琴葉……私達、結婚やめたんだ」

「えっ?何で?どうして?」

「やっぱり、私は、琴葉に幸せになってもらわなきゃ困るって思ったから」

「大丈夫だよ。私は、幸せだから」

「嘘つかなくていいから。私はね、音君と絶対幸せになって欲しいとか思ってないよ。ただ、琴葉が幸せだって思える相手と一緒に居て欲しい」

「そんな事で結婚やめなくてもよかったんじゃない」

「そんな事じゃないよ。私には、すごく、すごく大事な事。それに結婚やめたからって、徹と別れたわけじゃないから。琴葉が気にする事は、何もないよ。結婚式の予約も1年半以上先しか開いてなかったからね」



真弓の言葉に何も言えずに黙り込む。

私は、何て答えればいいのだろう。



「琴葉が気にしないでいいんだからね。琴葉は、悩むだろうからって思ったから、この事は言わないつもりだったのに……。私は、いつも余計な事ばっかり言っちゃうよね。ごめんね。さっきのは忘れてくれていいから」

「忘れられないよ。私のせいで、真弓の結婚がなくなったって考えたら……」

「気にしない。気にしない。春樹君でも、音君でも、琴葉が、幸せになれるなら。私は、どっちを選んでも応援するから」

「ありがとう……真弓」

「タクシーきたきた!行こう」

「うん」



真弓は、また時計を見ている。

やっぱり、徹君と待ち合わせしてるのかも。

本当は、忙しいのに私が音と別れたから一人で帰るのは寂しいと思って迎えに来てくれたんだ。

タクシーに乗って、真弓に話しを聞こうと思ったのに、すぐに遮られる。


「ここのアイス美味しいんだって、今度行こうよ。あっ、元気になったらでいいから。無理しないで」

「うん」

「琴葉は、まだ春樹君と住むの?おばさんやおじさん心配してるんじゃない?」

「そうだよね。付き合ってないのに住んでるのもおかしいよね」



息つく暇もないほど、真弓は話す。

ずっとタイミングを計ってはみたけれど……。

結局、私は何も質問出来なかった。

タクシーは、春樹の家に到着した。



「コーヒーいれるね」

「いいよ、いいよ。何か買ってくればいいし」

「じゃあ、荷物置いてから一緒に買いに行こっか」

「やっぱり、コーヒーいれてもらおうかな」

「わかった。いいよ」


真弓は、ちらりと時計をまた見つめた。

やっぱり、徹君と待ち合わせしてるんだ。



「じゃあ、そこに座ってて。すぐにコーヒーいれるから」

「あーー」

「どうしたの?真弓」

「もう、無理。黙ってるつもりだったけど、やっぱり私には無理」

「やっぱり、徹君と待ち合わせしてたんでしょ!」



私の言葉に真弓は、キョトンとした顔をする。



「違った?」

「違う。琴葉に関係する事だよ」

「私に?」

「そう」

「何それ?春樹が帰ってこなくなるとかそんなの?それとも、お父さんが怒って家に連れ戻されるとか?」


冗談をいうみたいにおどけた私の手を真弓は握りしめる。



「後、15分で音君がこの街を出るの」

「へーー、引っ越すんだ。確かに、ここにいる理由はないもんね」

「今なら、きっと間に合うよ。琴葉」

「今から?別にいいよ。もう、音の世界に私はいないんだから」

「本当にそうなのかな?」

「何で?」

「徹が言うには、琴葉のお父さんが音君に別れてくれてありがとうって伝えたって。そしたら、音君も酷い言葉を投げつけた。一葉ちゃんは、それに怒ったみたいだけど。琴葉ならわかるよね?音君が酷い言葉投げつけた意味。わかるよね?」

「ごめん、真弓。私、ちょっと行ってくるから、コーヒー適当に飲んでて」

「行っておいで!琴葉」



真弓に背中を押された私は、春樹の家を飛び出した。

お父さんの正しい羅列が、きっと音を傷つけたんだ。

音が私を必要としなくても、まだ音の事でこんなに走れるなら大丈夫。


神様、お願い。

私を音に会わせてください。

病み上がりの体で走るのはきつい。

音の目に触れる世界は、優しくいて欲しい。


少なくとも音に『別れてくれてありがとう』何て羅列を読ませたお父さんは最低だ。

文字をなぞる音の世界をお父さんのように聞こえる人は、意図もたやすく破壊する。

音の耳が聞こえてないから、傷ついてないと思ってる?

音は、何を言われても大丈夫だって思ってる?


ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン



「音。音。いるの?開けて」


音は、怪物じゃない。

私達と同じ。

赤い血を流す人間。



ガチャガチャ

ガチャガチャ


「音、音。開けて」




少しだけ開いていた窓から中が見える。

いない。

だったら、駅。

私は、急いでもと来た道を走り出す。



音は、傷ついたんだよ。

お父さんや一葉に酷い言葉を言わないといけないぐらい傷ついたんだよ。




神様は、意地悪だ。

かけ違えたボタンは、交差する事もなく。

ゆっくりとゆっくりと私達を引き離していく。



「はぁ、はぁ、はぁ。あっ、音」


駅のホームに音の姿が見える。


「おとーー」


聞こえないのわかっていながら叫んでしまった。

そんな事より切符が先。

ポケットの小銭を券売機に滑るようにいれる。

お願い、神様。

どうか、間に合ってください。

切符を買って改札を抜けて走り出す。



「音、音、音」



お願いだから、神様。

私と音の運命を戻して……。

階段を滑りながらホームに降りた瞬間。


『ドアが閉まります』


嘘でしょ?

待って。

音……。

行かないで。



「危ないですよ。ホーム落ちたら」

「あっ、すみません」

「琴葉ちゃん。すみません。知り合いです」

「お兄さん、彼女見てなくちゃ駄目だよ」

「すみません」

「徹君……見送り?」

「いやーー、間に合わなかった。俺も」

「それって」

「一人で行ったみたい。珍しく時間早めたんだと思う」

「やっぱり、音は私に会いたくなかったのかもね。もう、これでおしまい」

「向こうに会いに行ったら?」

「無理無理。音のお母さんに怒られちゃうから。あっ、真弓待ってるから一緒に行く?」

「じゃあ、そうしようかな。退院おめでとう、琴葉ちゃん」

「ありがとう」



すれ違った運命を引き寄せるのは難しい。

今日、音と私は本当に他人になった。

音、どうか。

音の世界が、この先幸せな羅列で埋め尽くされますように……。



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