表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第二章 悲しみと新しい日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/48

side 琴葉

「真弓」

「どうしたの?」

「徹君は、音から何か聞いてないかな?」

「何を?」

「私の傷の事……」

「傷の事?琴葉を守れなかったって後悔してたって言わなかったっけ?」

「違う、違う」

「違うって他に何?」

「この傷のせいで縛り付けられてるとか、私と別れられないとか、苦しめられてるとか……」

「琴葉、何言ってるの?」



真弓は、驚いた顔で私を見つめる。


【お名前で失礼します。南川琴葉さん。お会計窓口までお越しください】


アナウンスが聞こえて立ち上がる。



「ごめん。お会計してくる」

「わかった。待ってる」


苦笑いを浮かべてお会計に向かう。

真弓は、本当に何も聞いていない顔をしていた。


だけど……。

音の本心は、迷惑だったんじゃないかな?

私が男だったらこの傷の事を気にしなくてよかったのかも知れない。

だけど、女だから、気にしなくちゃならなくて。

それが、とんでもなく迷惑だったんだと思う。


お会計窓口で、保険証の確認などをされた後でお会計をする。

明日からは、いつものような日常が始まる。

明後日からは、また仕事に没頭して。


ただ、一つだけ違うのは……。

春樹の腕の傷。

私には、春樹に傷を作ってしまった責任がある。



「お待たせ」

「終わった?」

「うん、終わった」

「それじゃあ、帰ろう」

「うん」




真弓と一緒に病院を出る。



「琴葉は、あの日を後悔してる?」

「あの日って?」



真弓は、私の手の傷を指差す。

この日か……。

傷を手で擦りながら、真弓を見る。



「後悔してる………………」


真弓は、納得したように頷こうとする。

私は、それを阻止するように……。




「音を傷つけた事」と答えた。



真弓は、頷くのをやめて「琴葉のお父さん?」と尋ねてくる。


「そう。あの日、お父さんは、音に酷い羅列を読ませたの。暫くしてからお母さんに、お父さんは心配してるとか琴葉の為を思ってとか言われたんだけど……。そんなの関係ないよ。本当に私の事を思ってくれてるなら、音の事を受け入れてくれるでしょ?」

「難しいんだとは思うよ。親っていうのは、子供の幸せを考えたい生き物だから。例え、自分勝手でも。自分の子供には幸せになって欲しいんだよ」

「真弓は、親について詳しいね。もしかして……?」

「そんなわけないじゃん。昔、お母さんのお祖父ちゃんが亡くなったでしょ?」

「うん」

「その時に、親戚が言ってたのよ。お母さん幸せになってよかったねって。あの時、お祖父ちゃんは二人の結婚を猛反対してたからって。当時、お父さんはバーテンダーだったからね」

「えぇ!そうだったの!おじさんは、ずっと工場の人だと思ってた」

「琴葉が知ってるお父さんは、工場長だったもんね。自分のお店を出すのが夢なバーテンダーだったのよ。だから、結婚は猛反対されてたみたい。当時のお祖父ちゃんは、お母さんの幸せを願っての言葉だったらしい。だけど、お母さんは聞かなかったから私が産まれたのよ」

「おばさんが結婚してくれたから、私は真弓に出会えてよかった」

「確かにね」




二人で見つめ合って笑い合う。

一人ぼっちの帰り道じゃなくてよかった。



「琴葉、荷物重くない?」

「大丈夫。ちょっとしかないから」

「そっか」

「うん。あっ、真弓、結婚式どうなったの?会場は、決まりそう?」



私の言葉に、真弓は目をそらして前を向く。

何かあったのかな?

そう言えば、さっきから気になっていた。

真弓の左手の薬指に証がない事を……。

忘れたのかも知れないと思ったけど、真弓に限ってそれはない気がした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ