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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第二章 悲しみと新しい日常

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39/48

side 琴葉

「おはようございます」

「おはようございます」

「体調は、どうですか?」

「だいぶいいです」

「明日には、退院して大丈夫ですよ」

「はい」



目覚めた時には、春樹はもういなかった。

朝早くに、お医者さんと看護士さんがやってきて私の健康状態を確認していった。



「おはよう、琴葉。体調は、大丈夫?」

「お母さん、早いね。今日は、一葉は一緒じゃないの?」

「一葉もお父さんも忙しくて、病院には来れないみたい。その代わり、退院したらみんなで晩御飯食べましょう。春樹君も呼んで」

「わかった。明日退院できるみたいだから」

「じゃあ、明日の晩に家に来なさい」

「わかった。後で、春樹に連絡しとく」

「琴葉……。働きすぎよ。琴葉の事だから、音君と別れた寂しさ紛らわす為にいっぱい仕事いれてたんでしょ?」

「そんなんじゃないって」

「そう。ならいいんだけど。春樹君がいなかったら、顔に大きな傷残ってたかも知れないんだからね」

「春樹には、感謝してる」

「暫くの間、うちに帰ってきてもいいのよ」

「考えとく」



お母さんは、洗濯物を袋に詰めている。



「じゃあ、お母さん帰るね。明日、午前中に来るから」

「大丈夫だよ。退院ぐらい1人で出来るから」

「そう?じゃあ、帰るわね。明日の晩に洗濯物渡すから」

「うん。ありがとう」



お母さんが帰って行くのを見届ける。

お母さんの言う通りだった。

音と別れて忘れる為に毎日必死で働いていた。

少しでも止まれば、音を思い出してしまうから……。



「おはよう」

「春樹……」



春樹の手は、包帯でグルグル巻きにされている。


「ごめんね。覚えてなくて……」

「これ?心配しなくていいよ。それより、琴葉に怪我がなくてよかったよ」

「春樹のお陰。倒れた時、春樹が居てくれてよかった。でも、全然思い出せなくて……。目が覚めたら春樹に聞こうと思ってたんだけど。ぐっすり寝ちゃったから」

「包丁持ったまま倒れただけだよ。俺が、焦って琴葉を助けようとしたからこれ。だから、全然。気にしないで」

「本当にごめんね、春樹」

「そんな深刻そうな顔しなくても大丈夫だって」



春樹に優しくされると少しだけ胸が痛む。

もしかしたら、音も同じだったのだろうか?



「退院は?」

「あっ、明日」

「明日かーー。16時ぐらいまでには帰れると思うんだけど。もっと早くなるか会社に聞いてみるよ」

「いい。子供じゃないから。退院ぐらい1人で出来るから」

「本当に?」

「本当に、本当に。あっ、お母さんが明日晩御飯食べようって退院祝いに……。たぶん、春樹にちゃんとお礼が言いたいんだと思う」

「いいよ!じゃあ、16時までには必ず帰るから」

「わかった」



春樹の優しさは、胸にある痛みを隠してくれる。

だけど……やっぱり。



「お孫さんが結婚するの?いやーー、羨ましいわ」

「だいたい何でいつもそうなの」

「何もしないだけって駄目でしょ?」



周りに溢れる騒音は消える事はない。

音となら……。

音とだったら……。



「個室の方がよかったんじゃないか?ゆっくり休めた?」

「えっ!うん。休めたよ。それに、個室は埋まってるから」

「そっか。じゃあ、仕事行くわ」

「うん。頑張ってね、春樹」

「また、夜来ようか?」

「明日退院だからいいって」

「わかった。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」



春樹が病室を出て行く。

私は最低だ。

春樹と一緒にいるのに、音の事ばかり考えて……。

スマホを見つめる。

メッセージアプリの中から、音と書かれた場所に指を持っていく。


ゆっくりスクロールして、音に愛されていた日々を見つめる。

もう一度、音と話がしたい。

ちゃんと話して、納得する答えを出したい。


この時の私は何も知らなかった。

この日、音が引っ越しの準備をしている事も、一葉とお父さんが勝手に音に会いに行った事も……。


何も知らない私は、音ともう一度話し合う事が出来ると思っていた。

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