side 琴葉
「ごめんなさいね。春樹君」
「気にしないで下さい」
「そうは言っても……手首まで切れたって」
「これは、俺が勝手にした事なので琴葉さんには言わないでください」
「そんな訳にはいかないよ。娘が君を傷つけたんだ」
「そうよ。春樹君。私達が琴葉の代わりに慰謝料をお支払いします」
「ほんとに気にしないでください。慰謝料なんて大丈夫です。琴葉さんに怪我がなかっただけで。俺は、十分ですから」
「本当に申し訳ない」
「本当に気にしないでください。琴葉さんと一緒に住んでいながら挨拶もせずにすみませんでした。俺は、外にいますので……」
私は、春樹に何をしたの……。
ゆっくりと目を開けるとお母さんとお父さんがいた。
「琴葉、わかる?お父さん、琴葉が……」
「今、お医者さんを呼んでくる」
「お母さん……私は、春樹に……」
「琴葉、大丈夫か?よかった」
「春樹……私、春樹に……」
「気にしないでいいから。無茶するからだよ。よかった。本当によかった」
「ありがとう、春樹君」
「南川琴葉さんわかりますか?」
「はい」
お医者さんがやってきて、色々声をかけられて……。
それに疲れて、私はまた眠ってしまった。
いったい春樹に何をしたのか思い出せなくて……。
目が覚めたら、必ず聞こうと思いながら、ゆっくり眠った。




