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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第二章 悲しみと新しい日常

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32/48

side 琴葉

「琴葉、震えてるよ。帰ろう。帰って、シャワー浴びよ」



春樹は、傘を取って私を立たせる。

もう、傘なんか必要ない程にびしょ濡れなのに……。

春樹は、傘を差してくれる。


春樹が話をしてくれるけど、私の耳には雨の音しか入ってこない。

気づいたら、春樹の家についていて。

春樹が、私をお風呂場まで連れてきてくれてシャワーを捻った。


「シャワー浴びて、あっ、お風呂いれようか?」

「シャワーで、大丈夫」

「琴葉の服や下着いるよな?」

「大丈夫。タオル巻いて取りに行くから」

「いやいや、俺が大丈夫じゃないわ。とりあえず、俺は部屋にいるから」



春樹は、フェイスタオルを一枚持っていなくなった。

春樹がいなくなって、服を脱ぐ。

雨に濡れて張り付いた服は、脱ぎずらくて……。

このまま、シャワーに入ってしまおうかと思う程だ。

何とか脱げた服を洗濯機に放り込んだ。

春樹がシャワーを捻ってくれていたから、入る頃にはお湯が出ていた。


シャワーのお湯が、冷えた身体を暖めていく。

体も心も冷え切っているのがわかる。

体が暖まっていくと、さっき春樹に縋ってしまった自分に腹が立ってきた。

でも、今、春樹の手を話してしまったら……私はどうなってしまうの?


今は、何も考えたくない。

今は、このまま時の流れに任せていたい。


シャワーから上がって、私は部屋に入る。

持って来た服にも1つずつ、音との思い出が宿っている。


音との思い出がなるべくないのがいい。


「懐かしい。まだ、入るかな?」



「琴葉、お父さんがお土産だって」


生きる事が辛かった。

私の日々に父は、気づいていたのかも知れない。


「何、これ?」

「何かコラボとか何とかでな……」

「私、こんなの着ないよ」

「せっかくお父さんが、買ってきてくれたんだから着てあげなさいよ。一葉は、すぐに着てくれたのよ」

「ほんとに言ってるの?こんなダサいの私は着ないから」



「入れた記憶なかったのに……」


お父さんのお土産のTシャツに袖を通す。

よくわからないけど、救われる。

何の思い出もないからかな?


コンコン……。


「はい」

「ご飯作るね」

「私も手伝う」


部屋から出ると春樹は私のTシャツの柄を見つめていた。


「お父さんのお土産。ダサいよね?」

「そんな事ないよ。何か、琴葉を思って選んだ感じがしたから見ちゃった」

「どこが?何か変でしょ?」

「確かに、見た目は子供の書いた落書きっぽいかも」

「そうだよね」

「でも、その淡いピンクとか散りばめられてるハートとか。俺は、愛を感じるけどね」

「ホントに?そうかな?」

「そうだよ。琴葉のお父さんは、昔から琴葉が大好きだったじゃん」


そうだ。

春樹は、私の両親を知っている。

高校の時、何度も家に遊びに来たから……。

交際を反対されると思ったけど、不誠実な行いはしないと言う約束だけをさせられた。

お互いにとって、全てが初めてで……。

新鮮な相手。


「何作るんだっけ?」

「ミートスパゲッティは、やめようか?」

「ううん。食べたい」


音の記憶は、上書きしよう。

別れを音が望むなら……。

私も、新しい日々に進まなきゃいけないよね。





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