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《第二章完結》世界が静かになっても君の羅列と耳障りな雑音《ノイズ》は消えなくて  作者: 三愛 紫月
第二章 悲しみと新しい日常

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side 琴葉

「彼じゃなくてガッカリした?」

「春樹……どうして?」

「どうしてって、買い物だよ」



春樹は、くまの柄のついた可愛らしいエコバッグを見せてくる。


「晩御飯の……買い物だね」

「そうだよ。あっ、でも、それだけじゃなくて……。もしかしたら、駅前なら琴葉に会えるかな?って思ったんだ」

「私に……?」

「うん。何となく。琴葉は、もう帰ってこないんじゃないかって気がして」

「そんなわけないよ。行く所ないのに……」

「じゃあ、何で雨に打たれてるの?」



春樹は、びしょ濡れの椅子に腰かける。


「濡れちゃうよ」

「それも悪くないね。傘閉じようか?」

「何で?」

「泣いてるの他の人に知られたくないでしょ?」

「違う……何で。そんなに優しいの?私は、誰も救えないんだよ」

「俺は、琴葉に救われたよ」



春樹は、傘を傾けて通りすぎる人から見えないようにする。

さっきまで、弾かれていた雨がいっきに降り注いでくる。



「帰ろうか?風邪ひくよ」

「春樹の優しさに甘えたらいけないから……私出て行く」



傾けていた傘が床に落ちる。

びしょ濡れの私を、抱きしめた。


「春樹……?」

「今度は、俺が琴葉を救うから」

「何言ってるの?」

「幸せにするから……このまま、一緒にいよう」

「春樹……」

「傷つけられる相手の傍になんか行かなくていい。琴葉には、幸せでいて欲しい」


さっき私が音に伝えた言葉と同じで、涙が溢れてくる。

傷ついた心は、傷の直し方がわからなくて。

今、目の前にいるこの手にすがる付く事しか出来なかった。



「春樹……私……」

「大丈夫、彼を忘れなくていいから……」


その優しい声に安心して、春樹の背中に腕を回す。



ザァー

ザァー



雨が雑音ノイズを消していく。

冷えた体は、どんどん春樹の体温で暖められていく。



ごめんね……音。

でも、私……。

もう、強くなれない。

差し伸べられた手を拒否出来ない。

だって、心がこんなに傷だらけで。

もう、自分じゃ直せないの。


バイバイ……音。

これから先も、音の幸せだけを願ってる。




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