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side 琴葉
音の言葉に、頭は真っ白で。
飛び乗った電車に揺られて、暫くすると見慣れた街並みが現れて……。
私は、電車から降りる。
改札を抜けて、駅前にあるベンチに腰かけた。
春樹の待っている家に帰りたくない。
私は、いつだって誰かを傷つけてきたんだ。
ザァー
ザァー
天気がいっきに崩れて雨が降り出す。
まるで、私の心の中を表しているようだ。
この雨が止むまで打たれよう。
雨が上がった頃には、私はきっと前を向けるはずだから……。
雨の音が大きくて、周囲の雑音を書き消してくれる。
だから、雨の日が大好きだった。
でも、音は一緒にこの音を聞けないんだと思うと少しだけ悲しい。
私は、音がくれる世界に救われたのに……。
私は、音を救えないんだ。
自分の正義が正しいとは限らない。そんな簡単な事を忘れてしまっていた。
パチ……
パチ……
雨の音が変わる。
音?
顔を上げた私の前にいたのは……。




