第七章 天童
人に見つからないように、剣一は祈祷師の亡骸に包み火を点けたのだが、火を点ける前に、祈祷師の亡骸を物色した際、剣一は通信用ブレスレットと薬袋を見つけていた。薬袋の中には様々な栄養剤や毒薬の入った小さな瓶や缶がたくさん入れられていた。
システムの通知:緑色の瓶に入った丸薬の服用を推奨します。服用すればあらゆる毒に対する耐性を得られます。
「こんなにいい物まであるとはな。では遠慮なくいただいておこう」
再びシステムの通知:余分な品物を保管できるFランクの貯蔵庫を提供します。ホストのレベルが上がれば、貯蔵庫の容量も増加します。
ひとしきり選んだ後、剣一は保管しておきたいものを全て放り込み、大笑いした。
「このシステムは本当に最高だ!」
気楽で軽快な大笑いの後、剣一はブレスレットを手にはめて、真剣な面持ちになった。
「まず通信用ブレスレットを起動し、第九星殿に関するニュースがないか確認してみよう。願わくは援軍がすぐに駆け付け、異星生物を阻止してくれていますように」
剣一が一通りブレスレットを操作した。
「ピンッ!ピンッ!」と音が鳴り、それに続いて彼は独り言を言った。
「だがまずは位置情報をオフにしないと。あの祈祷師はただ者じゃなかった、背後にきっと何らかの組織が存在するはずだ。仲間が近くにいるかもしれないから、用心した方がいいだろう。」
間もなく、ブレスレットにニュースが表示された。
人皇:第九星殿は先日、突如異星生物による侵攻を受け、完全に占領されました。剣心親子が力を尽くして抵抗しましたが、敵いませんでした。星殿の戦士3932名は一人も生還することなく、全員戦死しました。彼らの魂は永遠に不滅です…。
人皇:第九星殿の異変を察知後、私は即座に援軍を派遣しましたが、それでも一歩間に合いませんでした。十二星殿を統率する者として私は責任を果たすべきであり、皆様に深くお詫び申し上げます!
「一人も生還することなく?第九星殿が完全に占領された?いや、そんな――」
顔一面に涙が溢れ、激しい悲しみが胸に突き刺さった。剣一は涙をぬぐうと、憤りの余り歯軋りして言った。
「戦いが始まった時、父さんは国連や十二星殿本部、そして最も近い第八星殿に救援信号を送ったはずだ。どんなに遅くても援軍は30分以内に到着するはずなのに、まさか信号が何かに妨害されたのか?」
剣一は気力を奮い起こすと、ブレスレットに表示された仮想パネルに一連の数字を急いで入力した。
「幸い、第八星殿の殿主である天童さんの通信IDを覚えている。彼ならきっと色々知っているはずだ。」
すぐに音声通信がつながり、剣一は急いで仮想スクリーンに叫んだ。
「天童さん、こちらは剣一、こちらは剣一です!」
音声パネルからは男性の声が聞こえてきた。
「剣一?どこの剣一だ?」
剣一は答えた。
「第九星殿の小剣聖の剣一ですよ!」
音声パネルからは「ありえない、君は一体何者だね?」という声が響いた。
剣一は眉をひそめて考えた。
「それもそうだ。俺はもう死んでるのに、どうやったら信じてもらえるだろう?……あっ、あの時のことを話せば!」
剣一は大急ぎで話し始めた。
「天童さん、俺の初陣は十歳でした、その時もあなたが連れて行ってくれましたね!」
向こうからは何も反応がない。
剣一は急いで言葉を継いだ。
「あの時、あっという間に異星の魔獣に取り囲まれ、驚いて呆然としていた俺を、あなたが即座に救出してくれましたよね」
剣一は鬱々《うつうつ》と考えた。
「声も前とは違うし、いったいどう説明すれば天童さんは信じてくれるんだろう…そうだ!」
剣一は興奮気味に言った。
「あなたがそのことを父に黙っていてくれたので、俺の次の作戦への参加も父はすぐに許してくれたんです」
音声パネルから驚嘆の声が上がった。
「え?剣一!本当にお前なのか!生きていたのか?」
剣一は胸を撫で下ろした。
「天童さん、私があなたを騙すわけないでしょう!」
音声パネルからはためらいの声が聞こえた。
「でもお前の亡骸を見たんだ、確かにお前だった。」
剣一は言った。
「話すと長くなりますが…天童さん、俺は第九星殿に調査をしに行きたいんです」
音声パネルから「第九星殿は人皇の命令により封鎖されている、誰も中に入れない」と言う声が聞こえた。
剣一は差し迫った様子で叫んだ。
「あの時、何が星空の割れ目の封印を阻んだんですか?それと、あなたたちは我々からの救援信号を受信したのですか?」
音声パネルは声を響かせた。
「我々は直ちに救援に向かったが、途中で異星の君主が率いる獣の大群に襲撃され…」
剣一は思わず黙り込んだ。脳裏には父の死の光景が浮かび、目には涙が溢れた。
音声パネルが突然尋ねた。
「そうだ、怪我はないのか?」
「怪我はしてませんが、レベルが大幅にダウンしました」
と剣一は溜息をついた。
「よかった、しかし事態が余りにも奇妙で、お前が本当に剣一なのかどうか、私にはまだ確信が持てない。ひとまずその場にとどまりゆっくり静養しろ。すぐに迎えに人を遣るから」
剣一は安堵で長い息をついた。
「天童さん、ありがとうございます」
通信が切れると、剣一は感慨深げに言った。
「天童さんの助けがあれば、事態はすぐに明らかになるはずだ」
この時、額に三つの炎の模様を持つ小さな狐が大きな岩の後ろからおずおずと頭を出し、剣一の後ろ姿をこっそりと覗いていた。
剣一は背後からの視線を感じて、素早く振り返り、大声で叫んだ。
「誰だ!?」
小さな狐は素早く身を翻すと、シュッと姿を消した。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




