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第三十一章 コウモリ型の異星獣の大群

 剣一は突如剣を振り上げ、空中のタコに斬り掛かり、大声で叫んだ。


「やはりお前は畜生だ!父の命を返せ!」

 

てきせんでんざん!」


 炎の人は急いで手を伸ばした。


「近付くな!そいつの実力はほぼSSランクだ!」


 異星の第十二君主は自分を斬り殺そうと高速で迫ってくる剣一を横目で見ると、軽蔑するように大笑いした。


「第九星殿の残党め、今日はその魂を徹底的に打ち砕いてやる!」


 彼は突如黒い稲妻を(まと)った触手を突き出し、それはまっすぐ剣一の胸に迫った。


 氷織は慌てて炎の人に向かって大声で「あの人を助けて!」と叫んだ。


 炎の人は氷織と紅丸を大殿から放り出すと、身を翻して剣一に巻き付いた。触手が火龍の体を貫くと、火龍は四方八方に分裂して無数の火の玉に変化し、あちらこちらに散らばった。その中には火龍の尾もあり、大殿の外に落下した氷織と紅丸を包み込んでいる。炎は飛び散り、あっという間に消えてしまった。


 異星の第十二君主は人の姿に変身し、地上に下りて立ち止まった。彼は消えた炎を眺め、眉をひそめて叫んだ。


とん?暴風国最後の君主がこんな小僧に手なずけられたのか?」


 金滋は立ち上がったが、その氷体には亀裂が現れていた。彼は異星の第十二君主に向かって憎々しげに怒鳴った。


「私はまだ負けてはいない、もう一度勝負だ!」


 異星の第十二君主は金滋には目もくれず、紫と赤のクラゲに冷ややかに命令を下した。


「行け、あいつらを捕まえるのだ!」


その一方で、無数の火の玉が集まって火龍となり、しばらく空中を飛び回ると、戦闘機の停泊場で旋回しながら下降した。


 火龍が消えた後、剣一、炎の人、氷織、そして紅丸は無事地上に降り立った。


 炎の人の胸に開いた大きな穴を見て、剣一は非常に怖くなり、すぐに罪悪感を覚え尋ねた。


「大丈夫ですか?全て自分が軽率だったせいです」


 炎の人は重傷を負い、ずっと咳き込んでいる。


「ゴホゴホ、まだ死ぬわけにはいかない、すぐに十二星殿から離れなくては」


 そう言い終えると、炎の人は再び火龍に姿を変え、剣一たち三人を包み込んで、一番近くに泊まっていた戦闘機の中に飛び込んだ。


 ビューッ!


 戦闘機は氷原の上を高速で飛行した。


戦闘機のコックピットでは、剣一が操縦席に、紅丸を抱いた氷織が副操縦席に座り、炎の人は後列の席に座った。


 氷織は驚いて言った。


「剣一…あなたがあの剣一さんだったなんて!」


 剣一は悩ましげに頭を掻き、力なく言った。


「後でゆっくり話すから、今は秘密にしておいてくれ!」


 氷織と小さな狐は力一杯頷いた。


戦闘機のラジオからニュースが流れた。


「緊急のニュースをお伝えします。第十二星殿殿主の寒河江金滋が異星生物と結託し、異星の第十二君主モローを解き放ちました。また、第十一星殿はまれに見る異星獣の大群に襲撃されました。異星の巨獣が星空の亀裂を突破し、非常に深刻な事態に陥っています。第十一星殿殿主は世界中の覚醒者に対し、救援を要請しました。」


 ニュースを聞いて氷織は案じた。


「お父様が大変だわ!」


 氷織は急いでブレスレットのビデオ通信機能をオンにして父親にコンタクトを取り、画面に現れた第十一正殿殿主に向かって、気が気でない様子で叫んだ。


「お父様、そちらは大丈夫ですか?」


 第十一正殿殿主は疲労困憊の面持ちで、体は傷だらけだった。彼は画面の中で苛立ちながら叫んだ。


「氷織、今どこにいるんだ?どれだけ心配させれば気が済む?とにかくしばらくは帰って来てはならない、国連議長のジョージの所に行きなさい!彼ならお前の面倒をきちんと見てくれるからな!」


 ビデオ通信は早々に切れ、氷織は焦って叫んだ。


「お父様!お父様!」


 炎の人と剣一は氷織のもとに近づき、興味津々な様子で彼女を見つめた。剣一は尋ねた。


「君は第十一星殿殿主の娘の欧陽おうよう氷織 だったのか?」


 炎の人は苦笑しながら首を振り、少し解せないといった口調で言った。


「今の子供はみんなどうしてこんなに正体を隠すのがうまいんだ!」


 氷織は焦った様子で剣一に向かって叫んだ。


「私も後々ゆっくりとあなたたちに説明するから、早く方向転換して第十一星殿へ救援に向かいましょう!」


 剣一はきちんと座り直し、操縦桿を握り絞め、厳かに「承知致しました!」と言った。


航空機は猛スピードで海上を飛行し、第十一正殿に向かった。


 三日後。


 ビューッ!


 戦闘機は色彩豊かな珊瑚の海の上空を飛行していた。


 コックピット内には、AI音声による自動報告が流れていた。


「第十一正殿まであと千ノットです。三十分後に到着します」


 ロナとリリアは獰猛な顔つきの獣龍に跨がり、横から戦闘機を挟み撃ちにした。彼女たちの背後には大量のコウモリ型の異星生物が付き従っている。


 リリアは憎々しげに言った。


「やっと追い着いたわ!」


 コックピット内は警告を発する赤い光で包まれた。


 システム:警告します。戦闘機の左後方に異星生物の大群が接近しています。


 氷織は驚きの余り青くなり、おおいに焦った。


「いけない、第十二星殿にいた異星人たちに追い着かれてしまったわ!」


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