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第二十四章 炎の守護神

 炎の人は壁の隅にもたれ、疲れたように言った。


 「若者よ、君にはまだあいつの相手は厳しい。あいつを見つけても危険が増すだけだ。君がやるべきは、あちらに見つかる前にできるだけ早く強くなることだ!君があいつを探さなくても、きっとあいつは君を探すだろう」


 剣一は手を伸ばし炎の人を支えて言った。


 「君主様、まずは一緒に外へ出ましょう」


 炎の人は手を振って拒絶した。


 「その必要はない。炎の心臓を君の父上に授けてから、私は執念だけを頼りとする生きた死人しびとになったのだ、もし……」


 剣一は急いで尋ねた。


 「もし……何ですか?」


 炎の人は少し考え、また首を振った。


 「ありえない、考え過ぎかも知れない」


 彼は剣一の手をつかむと、満足げに笑って言った。


 「目覚めさせてくれて、異星獣の陰謀の目的が未だ果たされていないこと、我々人類はまだ滅亡しておらず、希望が残っていることを見せてくれてありがとう!私の執念も果たされたと言えるだろう。そろそろ行かなくては。君の父上にも会えるかもしれないな」


 剣一は切羽詰まった表情で言った。


 「君主様、私は傷を治す薬を持っています」


 炎の人は剣一の手をぎゅっと握りしめ、首を振った。


 「無駄だよ、私はもうすぐ消えてしまうから」


 彼はきらきらと目を輝かせて剣一を見つめ、真剣な表情で言った。


 「暴風国滅亡のシーンを君も見たろう!異星獣どもは凶悪で腹黒い。全ての怪物を地球から追い出すと約束してくれ、絶対彼らに屈してはならない!」


 剣一は断固として答えた。


 「約束します!」


 炎の人は頭上を仰ぎ見て、弱々しく言った。


 「よし、よし!人類にはまだ希望がある、地球にもまだ……希望がある!」


 話し終わると、頭が一方に傾き、体を包んでいた炎は突如完全に消えてしまった。


 剣一は炎の人の前でひざまずき、歯を食いしばってすすり泣いた。


 「君主様!」




 システムの通知:最後の君主を執念から解き放つことに成功しました、報酬として炎の守護神が与えられます。




 剣一はぶつぶつ独り言を言った。


 「炎の守護神?」


 炎の人は白くまばゆい光に包まれた。




 システムの通知:炎の守護神が修復と有効化を開始しました……




 白い光が消えると、炎の人は完全武装で剣一の目の前に立った。



 炎の守護神のシステムのパネル:

 【名前】炎の守護神

 【名前】剣一

 【精神力】31000

 【パワー】12000

 【防御力】12000

 【敏捷性】12000

 【ステータス】暴風国最後の君主

 【スキル】暴風火炎、火龍の舞

 【総合評価】果てしなくSランクに近いAランク高級覚醒者



 炎の人は剣一に軽く一礼した。


 「ご主人様、命を救ってくださり、ありがとうございます!」


 剣一は涙を拭うと、驚いて炎の人を見つめ、興奮して尋ねた。


 「こ、これは?」


 炎の人は説明した。


 「何か不思議な力により生き返り、また、あなたと私の間で主従の盟約が結ばれたようです」


 剣一は両手をばたつかせ、慌てて言った。


 「だめです、絶対だめです。あなたは君主であり、私の父の生死を共にした友人です。こんなこと許されません!どうしたらこの盟約を無効にできるか考えます」


 炎の人は笑った。


 「この盟約の締結は私が心から望んだのです。もしこの盟約がなければ、私はとうに死んでいるでしょう」


 剣一がさらに何かを言おうとしていると、炎の人は怒ったふりをして言った。


 「盟約が解除されれば私は窮地に追い込まれます。ご主人様、そんなに私、火龍かりゅうがお嫌いですか?」


 剣一は頭を掻き、少しはにかんで言った。


 「君主様は火龍というお名前だったんですね。私はただあなたに窮屈な思いをさせないか心配なのです。限りなくSランクに近い実力をお持ちのあなたに『ご主人様』と呼ばれると少し決まり悪く感じますので、私のことはやはり『ご主人様』ではなく、ただ剣一と呼んでください」


 炎の人は大笑いした。「ハハハ、では『殿下』と呼ばせていただきます。これからあなたと共に異星の怪獣を退治できるなんて、考えるだけワクワクします!」


 剣一は火龍を見つめ、必死にうなずき、まじめに言った。



 「ええ!必ず父の、そして暴風国の霊たちの仇を討ち、地球を守ります!」



 地下宮殿の深い所から強烈な震動が伝わってきた。その揺れはますます近付いて強くなってきた。


 剣一も足元がさだまらず、びっくりして言った。


 「まずい!ここは崩壊する!」


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