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第二十一章 Sランク!第十二星殿殿主 寒河江金滋

 ホールは死体で埋め尽くされた。メラメラと燃えさかる炎の人は散乱する死体を横切り、剣一けんいち金剛こんごうの方へゆっくりと歩いてくる。二人は緊張した表情で彼を見つめ、申し合わせたかのように同時に防御の構えを取った。


 剣一が金剛に提案した。


 「地下通路は塞がれたが、ここで我々が手を組めば活路が見出せるかも知れない」


 金剛は冷ややかに笑い、


 「手を組む?いいだろう!」


と言うと、流星鎚りゅうせいついを振って出し、炎の人に向かって突進した。剣一は突撃する金剛を見て笑った。


 「いいぞ!外に出ることができたら、友人として付き合おう!」


 剣一は空中に跳び上がり、閃電斬せんでんざんを繰り出し、炎の人に斬り掛かった。


 炎の人の両目は異常な光を放ち、その後左右の手から、剣一と金剛のそれぞれに向かって炎の龍を放った。まるで生きているような二匹の炎の龍は、一瞬にしてあらゆるものを飲み込み、かわすのが全く不可能なほど超高速の激しい嵐を巻き起こした。


 突然、どこからともなく巨大な鐘が出現し、金剛に覆い被さった。炎の龍は鐘にぶつかって「ガタンッ」という音を響かせ、金剛は鐘の中で蔑むように剣一を見つめ、体をのけぞらせて大笑いした。


 「ハハハ、俺と友人になりたいなんて、お前にそんな資格はない!」


 そして振り返って炎の人を見て、得意そうに言った。


 「これはSランクの全力攻撃に三度耐えられる防御ツールで父上から譲り受けた物だ!お前はやはりまだ弱い!」


 閃電斬せんでんざんを放つより早く、炎の龍は剣一の目の前まで来ていた。剣一は心の中で「まずい」と叫んだが、炎の龍は剣一を攻撃せず、きつく彼に巻き付いた。剣一は体中が燃えるように熱くなり、大量の汗が噴き出て、しきりに両足をジタバタさせた。


 不思議なことにシステムからの警告は全く出ず、剣一は「まさか熱でシステムがやられたのか?」と考えずにはいられなかった。


 巨大な鐘の中で、金剛の笑い方はますます狂気じみていった。


 「ハハハ、小僧、お前がもう少しずる賢かったとしても、今回は死を免れないぞ!」



 金剛の得意気な顔を見ながら、剣一は我慢できずに罵った。


 「恥知らずめ!俺は強運なんだ、そちらこそ用心するんだな!」


 金剛を攻撃する炎の龍は再び鐘にぶつかり「ガタン」と音を響かせた。金剛はその中で作り笑いをしていたが、内心は少しびくついていた。彼は緊張した面持ちで丸屋根を眺めた。


 「ガタン!」


 巨大な鐘に亀裂が入った。


 金剛は「バタン」という音と共に地面に座り込み、絶望した様子で通信用ブレスレットに大声で叫んだ。


 「父上、来るのがこれ以上遅くなれば、俺は終わりだ!」


 時を同じくして、丸屋根の方から戦闘機の音が聞こえてきた。重武装の戦闘機が先ほど紫の光電クラゲが突き破った丸屋根の大きな穴から宮殿に進入して空中で停止し、炎の人と対峙した。炎の人の片方の手の炎の龍は剣一に巻き付き、もう片方の手の炎の龍は空中にとどまって降りてこないでいる。


 戦闘機のハッチが開き、一人の人物が空中に現れ、その後ろに付き従っていた二人の手下も空中に浮かんでいた。


 金剛は慌てて立ち上がり、豪快に笑った。


 「ハハハ、俺の父上はSランクだ。炎だろうが水だろうが関係ない、俺はお前を傀儡かいらいにして、一生俺の手先として使ってやる」


 現れたのはまさに第十二星殿殿主の寒河江さがえ金滋きんじだった。彼は金剛を見て叱責した。


 「黙れ!後でお前には反省してもらうからな!」


 金剛は納得できず、興奮して言った。


 「父上、見て下さい、言い伝えられていた暴風国、そして最後の君主を見つけたんですよ!」


 金滋は、他人に気付かれないほどかすかに陰険な笑みを顔に浮かべ、大義に徹してきっぱりと言った。


 「国連の規定により、Aランク以上の高級覚醒者の亡骸なきがらは、処理のため上級機関に引き渡さねばならない」

 金剛は顔を上げて金滋を見つめ、焦った表情で言った。


 「父上、しかし…」


 金滋は激しい口調で言った。


 「もういい!私が何をしようと、お前に指示される筋合いはない!」


 炎の人は我慢ができなくなったらしく、空中にとどまっている炎の龍は三倍の大きさになり、巨大な鐘目がけてぶつかっていった。


 金剛は驚いて頭を抱え地面にうずくまった。反対側にいた剣一は炎の龍に巻き付かれて身動きが取れず、高みの見物を決め込むしかなかった。


 金滋は怒鳴った。


 「Aランクの生きた死人しびとごときが私の面前で無礼を働くとは!」


 炎の人は金滋の方を見ると、彼に向けて猛烈な熱波を吹きだした。金滋はにわかに姿を消し、彼の二人の手下は瞬時に黒煙に姿を変え消え去った。戦闘機は突然上昇し、熱波を回避したが、次の一瞬、金滋は電子ムチを振り回して金剛に巻き付け、そのまま素早く戦闘機のドアの前に移動し、操縦士の首根っこを押さえた。


 パイロットは苦しそうに尋ねた。


 「殿主様、これは一体…?」

 金滋は陰険な笑みを浮かべた。


 「主を捨てて逃げるつもりか?」


 パイロットはありのままに答えた。


 「炎の人の攻撃を避けようとしただけです。もう二人が犠牲になっています」


 金滋の目つきが冷たくなり、彼は手の力を強めながら言った。


 「彼らのことは忘れない、もちろんお前のことも…」


 次の瞬間、パイロットの死体が戦闘機から落下した。


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