表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/38

第十六章 伝承が途絶えた酒「天子笑」

這いつくばって酒を飲む周囲の横で、金剛は冷笑するだけで何も言わず、ただそばで眺めている。星殿の兵士たちは金剛の背後に整列して立ち、微動だにしない。カリ祈祷師は彼らを見ながら静かに溜息をついた。


「さすがは過酷な訓練を受けた星殿の戦士だ」


 ちょうど剣一が足元を眺めていた時、目の前に突如システムのパネルが出現した。


 システムの通知:これは伝承が途絶えた酒「天子笑てんししょう」です。七十二種類の稀少な材料から作られ、強力なエネルギーを含んでいます。飲むと精力がつくだけでなく、体のあらゆる資質を全面的に向上させることができます。この酒で酔うと、熱で浮かされたような状態になります。飲む場合は、三口までにしなければなりません。


 酒を飲み終えたばかりの若い祈祷師は、すっかり酩酊してしまい、満足げに大声で叫んだ。


「なんて爽快なんだ!いい酒だぜ!」


 宮殿ではみんなの(いぶか)しむ声が立て続けに響いた。


 「彼はまさかレベルアップしたのか!?」

 「なんて不思議なんだ!」

 「俺も飲みたいぞ!」


 あっという間に、ホールにいた氷織以外の全ての者がしゃがんで酒を飲み始め、中には地面に身を投げ出し、地面に向かって痛飲する者もいた。


 金剛のいる辺りでは、年長の祈祷師が若い祈祷師の頭を叩き、けしかけるように言った。


「何ぼんやりしてるんだ、早く飲まないか!」

 「ハハハ、俺も飲んでレベルアップだ!」

 「今回は本当に超ラッキーだ」


 剣一も酒を飲んでいた。彼は手のひらで酒を汲むと、心の中で「三口まで」と唱えた後、連続して二口飲んだ。酒を飲み干した剣一の顔はみるみるうちに紅潮し、瞳孔も少し開き、泥酔して卒倒しそうな様子だった。


 システムの通知:Dランク低級の覚醒者に昇格しました。


 剣一は間もなく眠気に襲われ、モゴモゴと「あと一口…」と言った後、酔いつぶれて倒れ込んだ。


 氷織は下を向いて地面の酒を見ながら、手で口角を拭き、考えた。


「我慢よ!ただより高いものは無いと言うものね。まずは事態の推移を静観してからよ」


 酒を飲んだ覚醒者たちは全員おぼつかない足取りで、フラフラの酩酊状態だった。中には大声で歌を歌い出す酒乱までいた。


 他の勢力の覚醒者が突然大声で笑い出した。


「ハハハ、ついに十年間の停滞期を打破し、Dランクに昇格したぞ!俺を見下したやつらめ、皆殺しだ!皆殺し!」


 グチャッ!


 突然、背後から大きな両の手が近付き、彼の頭をつかんで一方に傾けた。


首は一瞬にして折れ、瞳孔は開き、口からは血が流れ、その覚醒者は地面に倒れた。背後にいた金剛は邪悪な笑みを浮かべながら、冷ややかに言った。


「一人も残さず、殺せ!」


 それを聞いた星殿の兵士たちも声を揃えて叫んだ。


「一人も残さず、殺せ!」


 以前、金剛に平手打ちを喰らった祈祷師の弟子は酩酊状態で、金剛を指差し、口汚く罵った。


「くそったれ、この前のビンタの借りを返してやる!」


 金剛は軽蔑の表情を浮かべ、背後にいた戦士は激怒し、


「死にたいのか!」


と言うと、飛び出してその祈祷師の弟子に拳を振りかざした。しかしながらそのパンチは空振りに終わった。というのも、カリ祈祷師が黒い魂影と化して、弟子をぐいっと引っ張りその場から離れさせたからだ。カリ祈祷師は弟子を自分の背後で守り、金剛を見つめた。


 金剛はほほうと冷たく笑った。


「老いぼれめ、どうした、刃向かう気か?」


 カリ祈祷師は「ククク」と邪悪な笑い声をあげた。


「我々は互いを利用し合うためだけに一緒にやってきた。わしがこれまでお前に従っていたのは、星空の割れ目に入り、ここに来るためだ。目標が達成された今、我々のうち、ここから外に出られるのはどちらか一方だけ。もはやお前に従う必要はない。クククク…」


 カリ祈祷師は振り返って祈祷師たちを見つめ、命令を下した。


「暴風国の宝物は、他の誰でもなく我々祈祷師のものだ。陣を構えよ!」


 祈祷師たちは意気揚々と、即座に声を揃え「はい!」と答えた。


 金剛はひどく憤慨し、高々と跳び上がると、カリ祈祷師に向け拳を振りかざした。


「お前をバラバラに吹き飛ばしてやろう!死ね!」


 星殿の衛兵は後ろで声を大にして叫び加勢する。


「殺せ!殺せ!殺せ!」


 カリ祈祷師は祈祷師たちを率いて構えを取り、素早く巨大なエネルギーシールドを形成して金剛の一撃を阻止した。


 ドンッ!


 金剛は反動で丸屋根に突っ込んだが、降りてきた時には雷光を放つ巨大なハンマーを手にしていた。彼は巨大なエネルギーシールドに向けてそのハンマーを振り下ろした!


 ガラガラ!


 エネルギーシールドは鏡のように無数の破片に砕け散り、最後は空気中に消えてしまった。金剛は星殿の衛兵を率い、祈祷師の魔方陣に突入し、両者入り乱れて戦いを繰り広げた。光と影が交錯する中、ときの声だけが響き渡っていた。


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ