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第十五章 伝説中の暴風国と世界最初の覚醒者

 二頭の異星生物のボスは祈祷師や星殿の兵士たちに向かって激しくえた。周囲には、他の勢力の人々もたくさん集まって来ていた。その中には氷織と、氷織の懐に隠れて小さな頭だけが覗いている小さな狐の紅丸べにまるもいた。


 氷織は遠くから剣一を見つけると、眉を少し上げ、冷笑した。


「やっぱり私に見つかってしまったわね!」


 氷原はひどい混乱状態に陥り、氷河の下で突然炎の魔方陣が輝き始めた。剣一や金剛たちは次々に動きを止め、かすかな青い光が透ける氷河の下にはっきり見える炎を見下ろした。


 金剛は大喜びして言った。


「見つけたぞ、古墳の位置はちょうどこの下だ」


 彼は部下に大声で冷酷な命令を下した。


「ここにいる部外者は、皆殺しにしろ!」


 剣一だけなく、その場にいた全員がそれを聞いて、ぎょっとした。しかし彼らが防御の構えを取る前に、異星生物のボス二頭と多数の異星生物は突然自然発火し、異星生物の悲鳴が響く中、そこにいた誰もが非常に困惑し、事態が把握できず、声を揃えて驚嘆した。


「一体何が起こったんだ?」


 氷河が轟然ごうぜんとひび割れ、金剛、剣一、カリ祈祷師、氷織たちはみんな落下していった。


 全員は一斉に叫んだ。


「うわっ!――」






《绝境中我不断升级》






 「あっ!――」


 甲高い叫び声が響く中、剣一けんいち氷織ひおり金剛こんごう、カリ祈祷師たちは他の勢力の人々と共に、次々と巨大な古墳の宮殿の床に叩き付けられた。宮殿には精緻な装飾が施され、至る所にいにしえの息吹が漂っており、高大で華麗な玉座には炎を身にまとった人物が座っていた。その人物の顔ははっきり見えず、手で顎を支え、微動だにせず、何かを考えているようだった。


 みんな次々と起き上がり、辺りを見渡すと、いぶかしげに疑問を口にした。



「ここはどういう場所なんだ?星空の割れ目にどうして宮殿が?」


 金剛は、玉座に座る炎の人物を呆然としばらく見つめた後、躍り上がって喜びながらつぶやいた。


「ついに見つけたぞ、暴風国最後の君主にして世界最初の覚醒者!」


 剣一はそっと後ずさりし、素早く金剛から離れ、緊張しながら上を眺め、内心思った。


「まずい、宮殿の丸屋根に落ちたが、自動的に閉まってしまった。おそらく出られないぞ。」


 剣一は真剣に周囲の様子を観察して逃走経路を探そうと努めた。他の者たちも周囲を見回している。


 祈祷師たちは周囲を見回した後、非常に驚愕きょうがくし、あちらこちらで話し始めた。


 「暴風国?伝説中の暴風国は本当に存在したのか!」

 「南極に位置する暴風国は、地球で初めて異星生物に侵入された所だ!」


当時の暴風国の君主は大勢の国民が巨獣に踏みつけられ命を落とした時、自信を喪失して絶望し、毎日酒食に溺れ、自分を麻痺まひさせ、国民を顧みなかったという。しかしAランクの異能者として覚醒後は悔い改め、生き残った国民を率いて抵抗したが、如何いかんせんすでに大勢を挽回するすべはなかった。


 氷織も玉座に座る炎の人に目を遣り、いぶかしげに疑問を口にした。


「玉座の炎の人が暴風国の最後の君主なの?最後の君主は謎の黒いローブの人物に滅ぼされたんじゃなかったかしら?」


 氷織の前に立っていた老祈祷師は彼女の疑問を耳にすると、振り返りもせず呆然としてつぶやいた。


「いいや、覚醒した炎の体は滅ぼされていない、滅ぼされたのは彼の心だ。今、彼は意識のない生きた死人しびとにすぎない」


 一方、カリ祈祷師はひそかに思った。


「金剛は炎の人を手に入れて、自分の傀儡かいらいにするつもりだな!」


 金剛は突如頭をもたげ大笑いすると、手を伸ばしつかむような動作をし、


いにしえよりこのかた、数多くの強者つわものが暴風国の宝物と最後の君主を見つけようとしたが果たせなかった。しかし今日、俺は成し遂げた!ハハハハ、暴風国の全てはもう俺のものだ!」


と言うと、勢いよく振り返り、剣一たちを見つめ、命令した。


「ここにいる部外者は、皆殺しにしろ!」


 祈祷師の一団と星殿の戦士たちは次々に攻撃の体勢を取り、口を揃え大声で答えた。


 「はい!」


 剣一たちは彼らの様子を見ると、素早く後へ下がって申し合わせたように集まり、臨戦態勢を整えた。


 ザザー!


 突然どこからともなく、酒の香りと共に透明な液体が吹き出した。液体はこんこんと流れ、あっという間に絨毯じゅうたんを水浸しにし、一同の靴を濡らした。


 剣一は下を向いて見ると、疑わしげに言った。


「酒か?」


 少し離れた所にいる氷織もその得体の知れない液体を眺め、眉をひそめた。


「どうしてお酒が噴き出すの?」


 紅丸べにまるは氷織の懐から顔を出してクンクンと小さな鼻を動かし、しきりに臭いを嗅ぐと、ムニャムニャと氷織の耳元でささやいた。氷織は目の前にいる剣一を横目でちらっと見ると、急いで紅丸を懐に押し戻すと同時にひそかに考えた。


「なんて芳醇な香りなの、紅丸の話だと、ここには何か強力なエネルギーが含まれているようね」


 ホール中の覚醒者は全員下を向き、足元でどんどん水位を上げている酒を見ていた。


 「なんとかぐわしい酒だ、これほどかぐわしい酒の香りは嗅いだことがない!」


 若い祈祷師は濃厚な酒の香りに我慢がきかず、よだれを流しながら


「もうたまらない、ちょっと飲ませてもらうぞ!」

と言うと、地べたに這いつくばってガブガブと飲み始めた。


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