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第十四章 異星獣の群れ

 同じ頃、巨大な異星生物が通常の異星生物を十二頭率い、えながら暴走していた。そしてその前に立ちはだかっていたのは他でもなく剣一だった。剣一は花蘇芳はなずおうの剣を握り、前方へ突進した。巨体のボスは目に剣一の後ろ姿を映し、憤って異星生物の群れを引き連れ、剣一を追い掛け激しく迫った。


 剣一は出入りできる場所が一箇所しかない氷河の環状山脈に駆け込んだ。異星生物の群れも後に続き、ほどなく全て中に入った。巨大な氷河が大きな音を立てながら落下し、氷河の環状山脈の入口を塞いだ。異星生物の群れは振り返って見ていたが、その目は茫然としていた。


 剣一は身を翻し、異星生物たちに微笑ほほえんだ。


「君たちを逃すまいと、わざわざ天然の檻を用意させてもらったよ」


 剣一は手に持った剣を見ながら、つぶやいた。


「この五日間の収穫は相当なもんだ。百頭以上の異星生物を倒して一気にEランクまで昇格したし、精神値も増加した。神殺十三式剣道術の第二式『奪命十字斬だつめいじゅうじざん』も修得できた」



 システムのパネル:

 【名前】剣一

 【精神力】35200

 【パワー】253

 【防御力】120

 【敏捷性】147

 【割り振り可能な属性ポイント】0

 【割り振り可能な属性ポイント(封神システム特別ボーナス)】0

 【血統】植物系・イバラ

 【スキル】高級束縛術

 【総合評価】Eランク高級覚醒者



 異星生物たちが慌てふためきだすと、剣一は異星生物たちに向かって叫んだ。


「お前たちをランクアップのかてにしてやる!」


 剣一は素早く二頭の異星生物たちを斬り付けた。異星生物たちは一斉に悲鳴を上げた途端、倒れて死んでしまった。剣一は様々な技を駆使し何度も繰り返し斬り付け、立て続けに四頭の異星生物を切り捨てた。剣一の体は異星生物の体から噴き出した血で赤く染まった。


 「ウオォッ!――」


 三頭の異星生物が同時に雄叫びを上げ、剣一に向かって飛び掛かってきた。


 剣一は剣を振り上げて奮闘した。彼は、


「253ポイントのパワーをたっぷり味わえよ!」


と言うと、猛々しく剣を振るい、三頭の異星生物を全て腰の辺りで真っ二つに切り捨てた。


 「ウガァ…」


最後方にいた三頭の異星生物は悲しげに鳴きながら向きを変え、逃走しようとした。


 氷のように冷たい目をした剣一が、冷ややかに唱えた。


「一剣入魂、喰らえ!」


 精神力で形成された三本のバーチャルな剣がそれぞれ同時に三頭の異星生物の頭に突き刺さり、瞬時に異星生物たちの頭は粉々に吹っ飛んだ。


 「バンッ!バンッ!バンッ!」


 一面に広がる異星生物の死体を目にし、そのボスは天をも揺るがすような雄叫びをあげ、体中電流を交差させながら剣一に向かって突進した。


 「ふぅ~」


剣一は息をつきながら異星生物のボスを眺めた。彼は薬瓶を取り出し、ニヤリと笑った。


「黒祈祷師が残してくれた最後のエネルギーポーション、このDランクのボス退治にちょうどいい。生き延びる手段を、今後はもっと多目に用意しておかなくてはな」


 剣一は顔を上げそのポーションを一気に飲み干した。


 この時、異星生物のボスはすでに剣一の目の前に迫っており、巨大な影が剣一を覆った。剣一は瓶を捨てると、剣を掲げて跳び上がり、


奪命十字斬だつめいじゅうじざん!」


と大声で叫んだ。花蘇芳はなずおうの剣は十字の光を放ちながら、あっという間に異星生物のボスの体を切り捨てた。


 剣一は危なげなく着氷し、異星生物のボスは彼の背後に倒れていた。次の瞬間、剣一は眉をひそめ、何かに気付いたように独り言を言った。


「どうしてシステムの討伐報告が表示されないんだ?」


 異星生物のボスは突如巨大な手のひらを上げ、後ろから剣一の頭を殴った。その手のひらでは電流が交差しており、電流の「ジジジジ」という音とともに、巨大な手のひらが激しく押し付けられた。


 一瞬の電光石火の間に、剣一は素早く身をかわし、かろうじて異星生物のボスの張り手から逃れた。ボスの張り手が「ボンッ」と音を立てて地面に当たり、その瞬間氷に亀裂が走った。ボスは血を吐き、瞬時に狂暴状態に陥り、再びほえながら剣一に向かって突進した。


 剣一は歯を食いしばって持ちこたえ、花蘇芳はなずおうの剣を振り回し、十字の光を描き出すと、真っ正面から敵に向かい、再び異星生物のボスの体に斬り付けた。剣一は大声で怒鳴った。


「もう一度だ!」


 「ウガァッ――」


巨体のボスは断末魔の叫びをあげると、氷の上にズシンと倒れた。


 剣一は体力が続かず、息を切らし、地面に片膝をついた。



 システムの通知:Dランク中級のボスを倒すことに成功しました。今回は割り振り可能な属性ポイントを200ポイント、特別ボーナスを100ポイント獲得しました。



 剣一は目の前にあるシステムのパネルを見ながら、溜息をついた。


「昇格できなかったか、もっと気合いを入れないとだめだな」


 環状山脈の外から「ゴゴゴゴ」という獣の群れが駆け回る音が響いてきた。剣一は氷河に跳び乗って音の方を眺めた後、嬉しそうにつぶやいた。


「ばかに大きい音だと思ったら、獣の大群だ!」


 遠方に広がる氷河の平原。


 祈祷師たちに取り囲まれた老祈祷師のカリは、金剛にへりくだって報告した。


「若様、全力を尽くしましたが、このエリアにおおよその位置を絞り込むことしかできませんでした。地下のエネルギーフローはまるで生命のように絶えず動き回り、到底推測できるものではありません」


 金剛は冷笑しながらカリ祈祷師を見つめ、脅迫した。


「クズめ、お前は俺になんと言っていた?あと二日で正確な位置を突き止められなければ、永遠にここにいるがいい」


 「そ…それは…」


カリは困惑した表情でうなだれ、口をきくことができなかった。彼の弟子とその他の祈祷師たちは恐れおののいた表情で金剛を見つめた。


 ちょうどこの時、三頭の異星生物のボスが獣の一群を率い、凄まじい勢いで猛進してきた。


 金剛と星殿の戦士が顔を上げて見渡していると、ある戦士が驚いて思わず悲鳴を上げた。


「獣の大群です! その中にDランクのボスもいて、こちらに突進してきます!」


 金剛は軽蔑するように罵った。


「何を慌てている?」


 剣一はちょうど獣の群れの最後尾について追い掛けていたが、彼が通った後には異星生物の死体の列が残されていた。剣一は走りながら疑問に思った。


「獣たちはどうして俺を無視して一斉にあっちに向かって走っているんだろう?何かあいつらを惹き付ける物があそこにあるのか?」


 一方、巨大な異星生物のボス三頭が高々と跳び上がると同時に、金剛たちへ襲い掛かっていた。


 カリ祈祷師は振り返り、後ろにいた祈祷師たちに向かって大声で叫んだ。


「早くよけろ!」


 金剛は跳ね起き、真ん中の異星生物のボスと向かい合った。彼は拳を固く握り、腕全体を金色の防御シールドで覆った。彼のパンチは異星生物のボスの眉間にヒットした。


 「ウガァッ!」


異星生物のボスが悲鳴をあげた。


 ボスの背後にはたった今追い着いたばかりの剣一がいたが、異星生物の巨大な体に彼の視線は遮られていた。剣一は花蘇芳はなずおうの剣を振り上げると、ボスの首に狙いを定め、素早く斬り付けると、ボスは轟然ごうぜんと地面に倒れた。


 その様子を見ていた金剛は非常に腹を立てた。


「誰だ?俺の獲物を奪ったのは!」


 金剛と剣一はそれぞれ異星生物の左右の空中から、同時に着地した。


 剣一のそばに表示されたシステムのパネルの通知:Dランクの高級ボスを倒すことに成功しました。割り振り可能な属性ポイント+80、特別ボーナス50ポイント。


 剣一は心の中で溜息をついた。


「上位ランクの妖獣を倒したのはこれで二度目だが、前回に比べて報酬がぐっと減ってるじゃないか!」


 二頭の異星生物のボスはそれぞれ周りにいた祈祷師と星殿の戦士に取り囲まれ、激しい戦いが繰り広げられていた。


 金剛は剣一が持つ花蘇芳はなずおうの剣を見て非常に驚いた。


「お前か!肉山にくやまを殺したやつは!どうしてここに入って来れたんだ?」


 剣一は恐れ入ったような様子で、感嘆した。


「あなたが彼の後ろ盾のようですね」


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