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第十一章 2ランク上の肉山との一戦!

 いつもは賑やかな酒場が、この時は静寂に包まれていた。人々は皆身を隠し、息をひそめていた。肉山の巨大な体が酒場の入口を塞いだ。彼が入って来たのを見るなり、背の高い戦士はまめまめしく肉山のそばに駆け寄り、剣一けんいちを指差して言った。


「兄貴、あいつは俺の兄弟たちを殺しただけでなく、兄貴まで侮辱したんです」


 肉山は軽蔑した目つきで剣一を見た。


 「小僧、俺に骨という骨を一本ずつへし折られたいのか、それとも粉々になるまで叩きのめされたいのか?」


 剣一は素早く瞬間移動し、突然剣を振りかざして戦士に斬り付けた。


 「話はこのクズを始末してからにしてくれ!」


 「あっ!」


 背の高い戦士は悲鳴を上げた次の瞬間、地面に倒れ伏した。


 肉山は驚き、


 「俺の目のまで俺の手下を殺すとは、なんと大胆なやつだ!」


 と怒鳴ると、餡まんくらいの大きさのげんこつを力一杯振り上げた。拳は風を切り、まっすぐ剣一へ向かった。


 「地獄に墜ちろ!」


 冷静に対応策を考えていた剣一は、出し抜けに肉山目がけて黒い薬瓶を放り投げた。肉山は慌てて拳を引っ込め、体を後ろに反らすと、驚きの表情を浮かべて言った。


 「まさかそれは枯木かれき老鬼の毒薬瓶か?祈祷師に心当たりがあるだろう?」


 「ボンッ!」


 黒い薬瓶が突然爆発し、真っ黒な煙がもうもうと立ち上った。


 肉山はよろめきながら数歩後ろに下がった。煙が収まった時、彼の目の前はもぬけの殻で、剣一の姿は消えていた。肉山は(いぶか)しげにつぶやいた。


 「あの小僧、老鬼の死に関わっているに違いない。若様に褒美をいただけるようこいつを捕らえねば!」


 一方、剣一は歯を食いしばり町の出口に向かって猛ダッシュし、走りながらぼやいた。


 「Fランクの初心者は本当に厄介だ。どんな相手に出くわしても逃げなくちゃならない」


 この時、肉山の声が剣一の頭上から聞こえてきた。


 「小僧、悪あがきはよせ!おとなしく捕まれば何日かは生き延びさせてやるぞ!」


 剣一は大声で「まずい!」と叫ぶと、急いで身を翻し、両手で剣を持ち攻撃を防ごうとした。肉山が上空から降り立ち、その拳は「バンッ」という音を立てて花蘇芳はなずおうの剣に命中すると、剣一は吹き飛ばされてしまったが、足を後ろに滑らせながら、ゆっくりと体勢を立て直した。


 肉山の攻撃はやまず、剣一が回復するより早く、赤い光を放つ両拳を振り上げ、高々と跳び上がり、叫んだ。


裂地捶れっちすい!」


 剣一は頭上の巨大な人影を仰ぎ見ると、身をかわしながらけたたましく叫んだ。


 「向こうは俺を殺すつもりで来るんだ!こっちも刺し違えるつもりでやるしかない!」


 「一剣入魂!喰らえ!」


 剣一は言い終えると、精神力で形成されたバーチャルの剣を肉山の頭頂部に突き刺した。しかし肉山は全くものともせず、不気味な赤い光を放つ両拳を地上に叩き付け、地面をかち割った。


 命中したわけではないが、剣一は衝撃で吹っ飛ばされた。彼は倒れ、地面を転がり、苦しげな表情を浮かべ考えた。


 「俺の一剣入魂はまだEランクだ。Dランクの覚醒者を相手にするにはダメージがやはり足りていない!」


 肉山は再び大股で前進し、左の拳を高々と上げると、地面に横たわる剣一に向かって突進し、ぞっとする笑いを浮かべた。


 「小僧、お前の精神攻撃はまだ未熟だ、もう一発俺の拳をお見舞いしてやる!」


 しかし肉山が剣一の眼前に迫ろうとしていた時、突然雪が彼の全身を覆った。肉山は呆気にとられ、憤った。


 「誰だ、隠れてコソコソしているのは…」


 話し終わる前に、肉山は冷たい氷に閉じ込められ、体はピクリとも動かせず、怒りの目つきでにらみつけるだけだった。


 剣一は立ち上がり、不思議に思った。


「誰が助けてくれたんだ?誰であれ、絶好のチャンスを作ってくれたことに感謝する!」


 剣一は跳び上がると、振り上げた花蘇芳はなずおうの剣を勢いよく振り下ろし、肉山に斬り付けた。


 「地獄に墜ちろ!」


 「うわっ!」


 肉山は悲鳴を上げるとドシンと地上に倒れ、氷も粉々に割れて徐々に消えていった。


 剣一はスマートに地上に降りた。




 システムの通知:おめでとうございます。2ランク上の相手を倒すことに成功しました。ポイントボーナス+100、割り振り可能な属性ポイント+30




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