第九章 裏切りの抹殺と身代わりの幻影
空中では航空機の武器発射口が赤い光が輝き始めた。その光はどんどんまぶしさを増し、今にも発射されそうだ。同時に、武器にエネルギーが集束する「ブーンブーン」という音が山の斜面に響き渡った。
剣一は両目を大きく見開いた。彼は驚きながらも振り向き、立ったまま動けないでいる少女の方を見ると「よけろ!」と叫びながら猛ダッシュし、彼女に飛び掛かった。少女が反応しないうちに、剣一に押し倒され、二人は抱き合って山の斜面を転がり落ちていった。
「シュー」
航空機の武器発射口から赤いレーザー光線が発射された。
「ドンッ」という音が響き、赤いレーザー光線が山の斜面の半分を破壊した。にわかに土石が舞い上がって土ぼこりが立ち籠め、光が目を刺激し、爆風がさらに剣一と少女を吹き飛ばした。剣一はよろめきながら立ち上がると、地面にうつぶせで倒れたままの少女を背負い走り去った。
時を同じくして、航空機のコックピットでは、パイロットが操縦桿を握り、ディスプレイに映る剣一のうろたえる様子を見つめながら、凶悪な笑みを浮かべた。
「レーザー砲で初めて人を狙ったが、やっぱり爽快だ、以前は異星生物にしか使えなかったからな。俺を恨まないでくれよ、ターゲットの周囲の生命体は全滅させろとの上からのお達しなんだ!」
そう言い終わると、パイロットは狂ったように操縦桿をスライドさせ、操作盤の上で指を飛ぶように動かした。
空中で旋回していた航空機は匍匐飛行を始め、剣一の背後に迫った。狂ったようにレーザー弾が発射され、地上で爆発を繰り返した。
「バン!バン!バン!……」
剣一は振り返ることができず、少女を背負ったまま突っ走り、小さな狐はぴったりとその後を追ったが、まばゆい光を放つレーザー弾がますます迫ってきていた。
少女は剣一の背中で焦りながら叫んだ。
「いったいどういうことなの?迎えに来るって言ってたよね?早く放して、自分で走れるわ!」
剣一も同じように叫んで答えた。
「俺にもわからないが、今は強がってる場合じゃない。さっきだってまともに立ててなかっただろ、今ここでお前を下ろすなんて殺人行為も同然だ!」
実際、この状況に剣一も困惑していた。
「天童さんは俺の成長を見守ってくれ、秘技までも伝授してくれた。あの人がこんなことするはず…」
少女の焦りに満ちた鋭い叫び声が剣一の思考を遮った。
「このスピードじゃ…私を背負ったままじゃ私たち共倒れよ!早く!早く下ろして!」
剣一は答えず、むしろ背負った少女をさっきよりも強く抱いた。彼の眼差しは決意に満ち、少女を下ろすつもりなど全くなかった。
「下ろしなさいってば!」
少女は腹を立てて、両拳を握り締め剣一の肩を叩き続けたが、重傷を負い手に全く力が入らず、剣一も文句を言わずに叩かれるままになっていた。少女も彼が自分を救おうとしているのを当然理解しており、彼女の目には次第に感動の気持ちが表れ、叩くスピードもかなりゆるやかになった。
「バンッ!!」
レーザー弾が剣一のすれすれの所に落ち、爆発の灰が剣一の体に降り注ぎ、ますます危険が迫っていた。だがまさにこの時…。
システムの緊急通知:割り振り可能な属性ポイントを全て敏捷性に割り当てることを推奨します!割り振り可能な属性ポイントを全て敏捷性に割り当てることを推奨します!(はい/いいえ)
剣一は心の中で「俺もそう考えていたよ」とつぶやくと、すぐに「はい」を選んだ。
次の瞬間、剣一の目の前にシステムのスクリーンが現れ、敏捷性の項目には属性ポイントが50ポイント加算されていた。
【名前】剣一
【精神力】32000
【パワー】6
【防御力】6
【敏捷性】7+50
【割り振り可能な属性ポイント】0
【割り振り可能な属性ポイント(封神システム特別ボーナス)】0
【血統】植物系・イバラ
【スキル】中級束縛術
【総合評価】Fランク初級覚醒者
敏捷性にポイントが加算され、剣一の身のこなしは一瞬にして俊敏さを増し、足元には風が巻き起こった。剣一はあっという間に匍匐飛行する航空機を大きく引き離し、爆発の光からもどんどん遠ざかっていった。
パイロットは叫んだ。
「あぁ?あのガキ、どうして一瞬でこんなにスピードが増したんだ?しかし…」
パイロットは操縦桿を前へ押し、蔑むように言った。
「フン、航空機とスピード競争なんて、笑わせる!見てろ、フルスロットルだ!」
航空機の速度がにわかに増し、地面すれすれを飛ぶ矢のように進んだ。
剣一の背中の少女は振り返り、やきもきしながら後ろの小さな狐に向かって叫んだ。
「早く!間合いができたわ!早くスキルを発動して!」
小さな狐は突然立ち止まり、振り返って徐々に接近する航空機を見つめると、不気味な笑みを浮かべた。剣一は立ち止まるしかなく、焦った様子で狐に怒鳴った。
「何してる?死ぬ気か!?」
狐は落ち着いてゆっくりと尻尾を立たせると、歯を食いしばり、踏ん張って大技の構えをした。みるみるうちに、狐の眉間にある三筋の線から炎が燃え上がり、尻尾では電流が「ジジジジ」と音と立てて交差していた。
「ブッ!」
小さな狐は屁を放った。
剣一が驚いて見つめる中、小さな狐の姿は突如幻影化し、少女を背負った剣一と小さな狐の幻影が彼らのそばに現れた。剣一が反応するより早く、彼らの幻影は別方向へ疾走していき、空中の航空機はレーザー砲を発射し続けながら、やはり方向転換して幻影を追い掛けていった。
コックピットでは、パイロットが当惑のあまり怒りだし、怒鳴った。
「どういうことだ?あいつら、こちらと同じスピードで逃げている。化け物かよ!」
航空機はさきほどより密度の高いレーザーを放ち、幻影の剣一の周りで連続して爆発が起きた。
「ドンッ!ドンッ!ドンッ!」
航空機は幻影の後を追い、徐々に離れていった。
あっという間に正午になった。
航空機が戻って来ないのを見て、ようやく彼らは息をついた。剣一と小さな狐は疲れ切ってうなだれ、大きな岩のそばで大きく深呼吸をした。剣一にずっと背負われていた少女がそばに立ち、剣一に尋ねた。
「あなたの命を狙っていたのは第何星殿の人間?彼らはなぜあなたを殺そうとするの?」
俯いて喘いでいた剣一の口から答が出ることはなかった。彼の目には困惑の色が見え、脳裏にはたくさんの過去の光景が浮かんでいた。幼い剣一が天童の肩に跨がり、両手を大空に伸ばし大笑いする光景、天童が幼い剣一に武術を指南する様子、戦場で剣一の命を救った天童の姿…。
剣一はひそかに思った。
「やはりありえない!俺の命を狙っているのは絶対天童さんじゃない!」
少女は不安でたまらない剣一の様子を見て、ポンと胸を叩いて言った。
「大丈夫、これからは私に付いて来なさい。私が守ってあげるから」
小さな狐は激しく頷いた。
「うん!うん!うん!」
剣一はしゃんと立つと、少女に軽く笑いかけた。
「それは結構だ。まず自分の身を案じた方がいい。俺のそばにいたらますます危険にさらされる。薬はもう渡したし、ここでお別れだ」
剣一はただ一刻も早く星空の割れ目の中へ行きたいと思っていた。生き延びて、真相を明らかにし、亡くなった父親と第九星殿の戦士全員の仇を討つためには、絶えずランクアップして強くなるしかないのだ。
少女は当然、剣一の胸の内を知らず、小さな狐を見つめ、自分の鼻を指しながら、ひどく腹を立てて言った。
「私を拒絶した!?そんな人間がいるなんて…。わ…私はでも…フンッ…」
小さな狐は前足を振って、少女に合図した。
「あの人もう行っちゃったよ!」
少女は誰もいなくなった大きな岩の傍らを見ながら、納得できない様子で眉をひそめた。
「いつの間に…あれがFランクなの?あっ!名前を聞くひまもなかったわ!」
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